「奇跡のリンゴ」石川 拓治

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

【私の評価】★★★★★(95点)


■青森県に20年前からリンゴの無農薬栽培に挑戦した
 木村秋則さんという人がいます。

 木村さんは、本屋さんで出会った一冊の本から、
 無農薬栽培の可能性を知り、
 自分のリンゴ畑で実験を始めました。


■しかし、農薬を使わなければ、
 病気が蔓延し、虫が大量発生し、
 リンゴの木は弱っていくだけです。

 木村さんは、何年も試行錯誤を繰りかえしました。

 しかし、どんなに虫を手で取っても、
 農薬の代替品を試してみても
 状況は変わりませんでした。

 虫が大量発生し、
 周りの農家からも白い目で見られ、
 村八分になったのです。


  ・無農薬でリンゴを栽培することは、
   木村にとっては夢でも、
   他の農家には狂気の沙汰の空想でしかないのだ。(p96)


■無農薬に取り組んだ6年間、どんなに努力しても、
 周りの農家から村八分にされ、家は貧しくなり、
 畑ではリンゴの木が弱っていくだけでした。

 悩みに悩んだ木村さんは、
 岩木山にロープを持って登り始めました。
 死ぬつもりだったのです。

 しかし、そこで木村さんは魔法の木と出会いました。
 肥料もなく農薬もない山の中で、一本のドングリの木が、
 元気にそびえていたのです。


■木村さんはそのドングリの木を見て、
 一瞬で理解しました。

 何が自分のリンゴの木と違うのか?

 それは、木が根を生やしている地面が違ったのです。
 ドングリはふかふかの虫や微生物がいっぱいの
 地面に長い根を広げて立っていたのです。

 自分のリンゴの地面は固く、
 木の根も数メートルくらいの弱弱しいものでした。


  ・雑草なんか生やしたら、養分を奪われてもっと弱くなってしまう
   と思ったのさ。だけど、親父の言う通りだった。
   雑草が土を耕してくれていたんだな。(p131)


■木村さんはそれから、
 土作りに取り組みました。
 雑草をはやしました。
 山の土地を再現するためです。

 そして10年目にやっとリンゴっぽい
 リンゴを収穫することができました。

 しかし、それは、無農薬リンゴを売るための
 苦労の始まりだったのです・・・


■私は、木村さんは、「風の谷のナウシカ」と
 同じだと思いました。

 映画「風の谷のナウシカ」では、人間から嫌われる腐海が、
 実は、汚染された土地を浄化していることを
 ナウシカが発見します。

 一方、木村さんが発見したのは、
 雑草は土地を耕し、
 肥料はリンゴの木を弱らせるということです。

 農薬、肥料に頼り、作物を弱らせる農業は、
 化学製品を作っているようなものです。

 いずれ石油が枯渇し、値段が高くなっていけば、
 衰退する運命にあります。
 その矛盾に気づいたのです。


  ・肥料を与えれば、確かにリンゴの実は簡単に大きくなる。
   けれど、リンゴの木からすれば、安易に栄養が得られるために、
   地中に深く根を張り巡らせなくてもいいということになる。(p187)


■木村さんの無農薬への取り組みの凄さとともに、
 本書をまとめた石川 拓治さんの力量に感嘆しました。

 「本でなければ伝えられないことがある」と
 確信する一冊です。
 文句なく★5つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


  ・実験を始めたわけ。米の栽培も一年に一回しか
   試せないから、お酒のワンカップあるでしょう、
   あの空き瓶を酒屋からたくさん貰って来て実験したのな(p89)


  ・人間に出切ることなんて、そんなたいしたことじゃないんだよ。
   ・・・私じゃない、リンゴの木が頑張ったんだよ。・・・主人公は
   人間じゃなくてリンゴの木なんだ・・・それがわかるまで、
   ほんとうに長い時間がかかったな(p167)


  ・エジプトもメソポタミアもインダスも、古代文明の
   繁栄した土地は、ことごとく砂漠化した。森林を伐採し、
   破壊し尽くしてしまったからだ。(p195)


▼引用は、この本からです。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
石川 拓治 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班
幻冬舎
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おすすめ度の平均: 5.0
5 リンゴに留まらない
4 本の表紙そのままのイメージ、魅力本です。
4 ライターの文章力も良し
5 この1冊には人生の明暗があります
5 出来たリンゴは奇跡ではなく自然に従った結果だが

【私の評価】★★★★★(95点)


■著者紹介・・・石川 拓治(いしかわ たくじ)

 1961年生まれ。ノンフィクションライター。
 著書多数。


─────────────────

■関連書評■
a. 「調理場という戦場」斉須政雄
【私の評価】★★★★★

b. 「ラストホープ」福島孝徳
【私の評価】★★★★★


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コメント(1)

 感動した本:奇跡のリンゴ(石川 拓治)

 何といっても木村さんの自然体な執念に感動しました。

 あれだけのことをやり遂げたのに、淡々としている姿。
 とても感動しました。

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