【書評】「ジェフリー・エプスタイン億万長者の顔をした怪物」 ジュリー・K・ブラウン
2026/06/30公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
エプスタインの経歴の謎
この本は、マイアミ・ヘラルド紙の報道記者である著者が、ジェフリー・エプスタイン事件の取材記録をまとめた一冊です。著者のエプスタイン事件を追った記事は米国ペンクラブ賞など数多く授賞し、エプスタイン事件の再捜査のきっかけとなりました。
エプスタインが一代で億万長者にのし上がった経緯は、謎に包まれています。1976年にベアー・スターンズに転職した際には、履歴書にスタンフォード大学の学位を持つという虚偽の記載があったといいます。
それでも多くの富裕な顧客を開拓し、1981年に退社を余儀なくされるまでに、自身を「年商10億ドル以上の顧客しか担当しない金融戦略家」と称するようになっていました。
ただ、富豪のロバート・マクスウェルが国外の個人口座に会社の金を隠した際、その手助けをしていたのがエプスタインだという噂。エプスタインはドイツ銀行に40の異なる口座を開いていたという事実を紹介しています。
2003年に出版された書籍「ロバート・マクスウェルの殺害」では、マクスウェルがイスラエルのスパイであったと指摘していること。エプスタイン自身が、自分はCIAやモサドで働いたことがあり、企業スパイだった時期もあると話していたことを紹介しています。
高校の数学教師から、なぜ多くの富豪の個人アドバイザーへと転身できたのか?この本にはその答えは明確に記載されていませんが、富豪の脱税を手伝ったり、政府の諜報機関と関係があった可能性を示唆しているのです。
2002年にニューヨーク・マガジンに・・・特集記事はタイトルが「ジェフリー・エプスタイン謎に包まれた国際的マネーマン」で、1か月前にエプスタインがビル・クリントン前大統領やアカデミー俳優・・と、特注の自家用機ボーイング727で世界を旅して回った様子を追ったものだった(p56)
エプスタインの人脈
著者の取材によれば、エプスタインの周囲には政治・経済・科学界の著名人たちが集まっていました。2003年のヴァニティ・フェア誌の記事では、元上院議員やノーベル賞受賞者、英王室のアンドルー王子なども「崇拝者」として名前が挙げられています。
ビル・クリントン元大統領が、2002年から2003年にかけてエプスタインの自家用機に二十数回搭乗し、ヨーロッパ、アフリカ、アジアを訪れていたという記録も紹介されています。
著者は、こうした強力な人脈と財力が、長年にわたって捜査の手を逃れる一因になったのではないかと指摘しています。
エプスタインがFBIの情報提供者として何らかの協力をしていた可能性を示す記録があったことにも触れており、彼が情報機関の「スパイ」だったのではないかという疑問を投げかけています。これらはあくまで著者の推測であり、真相は今も明らかになっていません。
FBIの記録・・・エプスタインがFBIの情報提供者としてなんらかの協力をしていたことをほのめかす記述があった・・・連邦検察も連続して起こされていた民事訴訟のなかで似たようなことを言及している・・・エプスタインは情報機関の資産(アセット)だったのだろうか?(p86)
性犯罪者エプスタイン
エプスタインは、マッサージを口実に中学生や高校生の少女たちをフロリダの自宅に誘い込み、性的虐待を行っていました。さらに被害者には2~300ドルを渡し、新たな被害者を連れてくるよう持ちかけていました。
著者が指摘する大きな謎のひとつは、FBIが児童搾取の取り締まりを強化していた時代に、なぜこれほど悪質な性犯罪者が長年起訴されなかったのかという点です。
2008年になってやっと、アレックス・アコスタ検事がエプスタインとの間で甘い条件での司法取引をまとめています。その後、アレックス・アコスタはトランプ政権下で労働長官となるのです。これは偶然なのでしょうか。
少女たちのなかにはエプスタインのもとに何度も戻る者やエプスタインに恋する者がいるという理由で、州検察官や連邦検察官は彼女たちを、自分で望んでそうしているパートナー、あるいは売春婦と決めつけるところがあった(p89)
エプスタインの支配と死
この本では、エプスタインが周囲をどう支配していたのかについても説明しています。
エプスタインは周囲に対し、「警察には定期的に金を渡している」「支配している」と語っていたといいます。米国民主党もエプスタインから100万ドルの献金を受けていました。ハーバード大学も、1998年から2008年の間に、合計910万ドルの寄付を受けていたという。
エプスタインは、ある人には金や仕事を与え、ある人には過去をばらしてやると脅していたようです。エプスタインのボディガードが、弁護士に「手を引くように」何度も警告していたという。
また、自宅の隠しカメラで訪問者の動画と写真を確保していたとの噂もあるのです。
2019年にエプスタインは、獄中で死亡し、自死とされました。しかし、著者は監視カメラの映像の不在や、自殺監視が解かれていたこと、首の骨が3本折れた経緯など、多くの疑問点を提起しています。
謎が多すぎます。ちなみに私が謎と思ったのは、仮にエプスタインが富豪の脱税や諜報機関に関わっているとした場合、なぜ性犯罪を行ったり、マスコミの記事として露出するなど、目立つことをしていたのか?ということです。
私の仮説は、エプスタインはジャニー喜多川が若い男を集めるために芸能事務所をはじめたように、若い女性と関係するために金儲けに励んだというものです。しかし、すべては闇の中なのです。
ブラウンさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・(エプスタインが)アメリカに戻る場合、まずセント・トーマス島の空港に入ることが多く、ニューヨークの空港ならおこなわれるはずの厳しい入国・税関検査を免れていた(p234)
・エプスタインは「ゲイツ財団」の資金で種を蒔き、裕福な友人たちから投資の一環として寄付を募り、それを世界の健康のために役立てようと考えていた・・集めた資金の0.3%が自分に来るように提案した(p441)
・リベラル派は往々にして、このスキャンダルをエプスタインとドナルド・トランプとの関係に結びつけようとし、保守派はビル・クリントンと結びつけようとする(p10)
・私はフロリダを「持つ者」と「持たざる者」の地と呼んでいる。「持つ者」とは、ウォーターフロントの宮殿に住み、高級車を乗り回し・・・「持たざる者」は、トヨタやマツダ、フォードのピックアップトラックのハンドルを握り、交通渋滞に巻き込まれて立往生(p75)
▼引用は、この本からです

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ジュリー・K・ブラウン (著)、ハーパーコリンズ・ジャパン
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
1 ジョー・リカレー
2 ジェーン・ドウはどこに
3 警察の捜査
4 エピイ
5 マイアミ・ヘラルド
6 行き止まり
7 最初の取引
8 ミュージック・シティ
9 ブラッド・マネー
10 マイク・ライター
11 金はどこから
12 正義の味方
13 うるう年作戦
14 大甘の司法取引
15 怪物を追って
16 コートニー
17 バージニア
18 ミスター・エプスタインに会いに
19 マー・ア・ラゴ
20 貴婦人ギレーヌ
他
著者経歴
ジュリー・K・ブラウン(Julle K. Brown)・・・マイアミ・ヘラルド氏の調査報道記者。エプスタイン事件を追った2018年のシリーズ記事「倒錯した正義」は米国ペンクラブ賞、ヒルマン賞、ジョージ・ボルク賞ほかを授賞。トランプ政権の労働長官辞任や、連邦政府による再捜査のきっかけとなった
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