【書評】「地図で学ぶ「深読み」世界史」伊藤 敏
2026/07/29公開 更新
Tweet
【私の評価】★★★★☆(80点)
Amazon.co.jpで詳細を見る
要約と感想レビュー
歴史は「地図」で見ると一気にわかる
フルカラーの地図が豊富で、「すごいな~」と手に取った一冊です。本のソムリエは、小学生の頃、百科事典を読んでいましたが、文章より図版ばかり眺めていたくらい、図解が大好きなのです。
さらに、大学受験では地理を選択したため、世界史の知識は中学レベルで止まっています。そのため、歴史には少し苦手意識があります。そんな私にとって、図解で世界史を学べるというのは、うれしい提案なのです。
この本では、歴史上の出来事を「どこで起きたのか」「どう動いたのか」という視点から解説してくれるので、年号や出来事だけでは見えなかった世界史が、立体的につながって見えてくるのです。
欧米の歴史は宗教と戦争の歴史
この本を読んで感じたのは、ヨーロッパの歴史は宗教と戦争の歴史でもあるということです。
プロテスタントは「職業とは神から与えられた使命」と考え、この考え方が勤勉さや資本主義の発展につながっていきました。そのプロテスタントが北米へ渡り、ニューイングランド(北部)を拠点とします。聖書を中心とし選挙で選ばれた長老が教会を管理する共同体を築くのです。
一方、現在のアメリカ政治にも大きな影響を与える福音派は、聖書を文字どおり受け入れる立場で、南部に広がりました。福音派が進化論への反対や中絶反対、さらにはハルマゲドンをもたらす要因と見なしてイスラエルを支持する傾向も紹介されています。
宗教が、そのまま現代の政治や外交に影響を与えているのです。
プロテスタントの教義では職業召命観という、「職業とは神より与えられたもの=天職Berufである(天命としての職業)」(p122)
ヨーロッパは植民地拡大ゲームを続けた
12世紀に始まった十字軍は、「異教徒との戦い」だけでなく、カトリックの布教や領土拡大という目的も持っていました。十字軍のひとつである東方植民では、ドイツ系住民をバルト海沿岸へ進出し、現代の民族問題や領土問題の遠因となっています。
その後もヨーロッパ諸国は軍事力を背景に世界へ勢力圏を広げます。中央アジアではイギリスとロシアが「グレート・ゲーム」と呼ばれる勢力争いを繰り広げ、インド最後の統一王朝ムガル帝国も、イギリスに支配されることになるのです。
ヨーロッパは、まるでゲームのように世界を支配していったことがわかります。
12世紀より「異教徒との戦い」と定義された十字軍は、同時に改宗によるカトリックの布教という使命を帯びるようになりました(p144)
コンゴの歴史に植民地支配の本質を見る
欧米による植民地支配の本質は、コンゴの歴史で見えてきます。1884年のベルリン・コンゴ会議によって「先占権」と「実効支配」が列強の共通ルールとなり、アフリカはわずか30年余りでほぼ全土が植民地となります。
コンゴでは奴隷貿易によって人口が流出し、さらにベルギーは住民を分断するために教育や思想を統制し、人々の移動まで制限しました。
そして1960年には十分な準備もないままベルギー支配からコンゴが独立したため、独立直後から内戦に苦しむことになります。現在のコンゴが抱える問題の多くは、この植民地時代にまでさかのぼることができるのです。
コンゴの開発が進まない原因の起源は奴隷貿易による人口の流出にあり、また植民地時代にベルギーが現地人の分断のため思想や言論の統制、さらに州の間での移動すら禁じていたこと(p279)
欧米の植民地支配とお人好し日本
欧米は植民地を効率よく支配するため、民族を分断し、教育を制限し、支配しやすい仕組みを築いてきました。支配するためには合理的な選択だと思います。
一方の日本は、日本は台湾や朝鮮に学校やインフラを整備し、同じ国民として扱おうとしました。その結果、戦後、韓国は経済発展しますが、韓国は日本の支配を批判し続けています。欧米列強の植民地支配から見れば、日本の植民地支配の手法はお人好しの選択に見えるのでしょう。
しかし、そのお人好しであることが日本人の稀有な特徴なのかもしれません。このお人好し国家・日本が他国から支配され滅亡しないことを祈るのみです。
伊藤さん、良い本をありがとうございました。
| 無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・市民皆兵制・・・ヨーロッパ世界の社会・軍事的伝統・・・政治参加の条件は軍事的な貢献が要求される(p104)
・スイスは傭兵の輸出国・・傭兵として受け取る報酬には正規の賃金の他に略奪品もあり、秘匿性の高い資産管理が必要とされた(p119)
・ルソーにとって理想的な政治とは、人民の一般意思の合致、つまり、一人一人の人民が直接政治に参加して政策を決定するべきである、というものです・・・代議制や多数決を否定(p125)
・ルワンダ内戦では、フツ人系政府軍および民兵組織と、少数派のツチ人が結成したルワンダ愛国戦線との戦闘、さらに1994年には政府軍によるツチ人および穏健派のフツ人に対する一方的な殺戮が展開(p276)
▼引用は、この本からです

Amazon.co.jpで詳細を見る
伊藤 敏 (著)、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第1部 シーレーン 世界の命運を握る「3つのチョークポイント」
第2部 北西航路 世界地図を塗り替える北極海
第3部 アルプス交通路 近代欧米を読み解くためのスイス
第4部 巡礼交易路 十字軍とヨーロッパ拡大の原点
第5部 シルクロード 「帝国の墓場」アフガニスタンの宿命
第6部 内陸交通路 もう1つの東南アジア史を読む
第7部 大河と資源 コンゴが変えた世界史
著者経歴
伊藤敏(いとう びん)・・・東京都出身。代々木ゼミナール世界史講師。筑波大学を卒業、同大学院にて修士号を取得し、博士後期課程単位取得退学。高校非常勤講師や塾講師を経て、2019年より代々木ゼミナール講師。「地図や地理の感覚がないと世界史は到底理解できない」という信条のもと、地図や図解を駆使した解説に定評があり、多くの受験生、なかでも早慶合格者から厚い支持を受ける。黒板にフリーハンドで描かれる正確無比な地図に魅了される受験生も多く、「地図の鬼神」という異名を持つ。
参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
![]()























コメントする