「「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策」今井 むつみ
2025/02/27公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
人間の認知には歪みがある
「何回説明しても伝わらない」理由は、人は聞き逃し、都合よく解釈し、誤解し、忘れるからです。人は聞いているのに聞いていないことがあるし、見ているのに見ていないことがあるのです。
また人の認知には、歪み(バイアス)があります。日本人は独創性がなく、ドイツ人には規律があるなどと人はラベルを貼りがちですが、個々の人を見てみれば、一言で言い切れないはずです。
この本ではオーケストラで楽団員のオーディションの際に、視覚情報を遮断したら、女性の採用率が50%も高まった例を紹介しています。
言った側は覚えている。言われた側は忘れている・・自分にとって重要でない物事が記憶に残らないのは当然です(p41)
相手の気持ちになって考える
では、そんなバイアスのある相手に正しく伝えるためには、どうすればよいのでしょうか?それは相手の気持ちになって考えてみることです。
相手が理解できる表現をすれば、相手は理解するでしょうし、相手が受け入れ可能な提案をすれば、相手は受け入れる余地があるのです。
また、相手とのいい関係を築くことも大切でしょう。いい関係性があれば、意見が対立したとしても、何らかの解決策を見出すことができるかもしれないのです。
相手の気持ちになって考えなさい・・相手の置かれている状況を分析し、それに応じた提案をする(p172)
私にできることはありますか?と聞く
面白いと思ったのは、合同でプロジェクトを進めていて、1つのグループの遅れによって全体の作業が滞ったときに2週類の人間がいるという説明です。
そのようなとき、「あのグループのせいで、遅れて困る」と文句を言う人と、あのグループのために、できることは何だろう」と考える人がいるというのです。
もちろん私たちは、プロジェクトを成功させることが共通の目標であるならば、「私に何かできることはありますか?」と聞くべきなのです。文句を言う人は、何か別の目標を持っているか、それさえも認識していないかわいそうな人なのでしょう。
プロジェクトを成功させたいのなら・・「私に何かできることはありますか?」「一緒にできることはありませんか?」そんなふうに声をかけるべきなのです(p207)
怖れの気持ちを持つ
そもそも言ったことが伝わると考えている時点で、間違っているということだと思いました。だからこそ、具体的に話したり、再確認したり、リマインドをしたり、メールを送った後に電話もするわけです。
また、別の意図を持って、文句を言う人がいることも理解しておく必要があるのでしょう。そうしたことを含めて、伝わっていないのではないか?という怖れの気持ちを持つことが大事なのだと感じました。
テストを書き終えたら、自分の考え方は合っているのか、答えは合っているのか、ケアレスミスはしていないかなど確認するのと同じ怖れの気持ちです。今井さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・相手といい関係性を築く・・自分から自己開示する・・そういう雰囲気をつくるのは上司の役割です(p272)
・「価値観を押しつけるな」という主張もまた、価値観の押しつけ(p141)
・本を買えば、ピアノを習えば、リビングで勉強すれば、親の年収が高ければ、本当に子どもの学力は上がるのか。そこに本物の因果関係があるのか・・考えてみてください(p157)
・具体と抽象・・具体にすれば、わかりやすくなる・・抽象にすれば、全体を捉えることができます(p212)
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第1章 「話せばわかる」はもしかしたら「幻想」かもしれない
第2章 「話してもわからない」「言っても伝わらない」とき、いったい何が起きているのか?
第3章 「言えば→伝わる」「言われれば→理解できる」を実現するには?
第4章 「伝わらない」「わかり合えない」を越えるコミュニケーションのとり方
終章 コミュニケーションを通してビジネスの熟達者になるために
著者経歴
今井むつみ(いまい むつみ)・・・慶應義塾大学環境情報学部教授。1989年慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。1994年ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。共著に『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(「新書大賞2024」大賞受賞)などがある。国際認知科学会、日本認知科学会フェロー
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