「AIにはない「思考力」の身につけ方―ことばの学びはなぜ大切なのか?」今井 むつみ
2025/02/05公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
言語学習は文法を自分で分析
著者は大学で、認知科学、言語心理学、発達心理学を教えています。人はどうやって言語をマスターしていくのか、言語と思考の関係を研究しているのです。
例えば、小さい子どもは「好きくない」と言うことがあります。これは、「おいしくない」など、「くない」を使ったルールに引っ張られてしまった事例です
言語学習とは、ルールや文法を自分で分析して覚えるゲームなのです。
「野球にはピッチャーとキャッチャーとバッチャーがいるんだよ」と言った子もいました(p31)
抽象的思考力を鍛える
言語の次の段階は、抽象的なことばを使って思考することです。人には9歳壁というものがあって、小学3~4年生になると、授業についていけなくなったり、嫌いになる子どもが増えるという。
著者の推定では、この頃から授業で抽象度の高い内容が出てくることから、そこに難しさがあるらしいのです。例えば、「食物連鎖」という言葉を定義するためには、「自然界」「鎖状」ということばも定義できなければ理解できない可能性があります。
抽象的なことばを使って思考することは、高い推論力と思考力が求められるのです。
抽象的なことばを使って深い思考ができるようになることが大事(p88)
生成AIは間違いがわからない
このように人は、ものすごい推論と思考をしながら言語を学習していることがわかります。一方の生成AIには、推論力と思考力はありません。検索結果をもっともらしい文章として出力しているだけなのです。
したがって、生成AIの使い方は内容をよく知っている人が、作業を減らすために、生成AI出力を修正して使うというものになっています。AIがさらに進歩すれば人のように、自己認識し、推論や思考することもできるようになるのでしょうか。
生成AIを使っている人は、自分がよく知っている分野に限ってこの機能を利用しています・・素人が使うと、どこが間違っているのかがまったくわかりません(p111)
思考力を身につけましょう
内容としては、AIにはない「思考力」を身につけましょうという提案でした。タイトルの「「思考力」の身につけ方」は、出版社が売るためにつけたものなのでしょう。
AIの時代であっても人間の思考力に代替えできるものはありません。自分の知識と思考力を鍛える必要性は、何も変わらないと理解しました。今井さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・大事なことは情報の海に溺れないことです。つまり、自分で直感的に情報を絞り込み、大切な情報といらない情報を区別することです(p114)
・効率的に知識を身につける方法・・・記憶術の修行をしたほうがいい(p114)
・似ていることばの意味の違いをきちんと理解することが、英単語への深い理解への近道です(p92)
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
第1章 あなたはことばを、どう覚えてきたのか
第2章 問題解決に必要な「推論の力」
第3章 学校で必要になる「ことばの力」
第4章 AI時代の「考える力」
著者紹介
今井 むつみ(いまい むつみ)・・・ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。現在は慶應義塾大学環境情報学部教授。専攻は認知科学、言語心理学、発達心理学。
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