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「転んでもただでは起きるな!- 定本・安藤百福」安藤百福発明記念館

2023/10/18公開 更新
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「転んでもただでは起きるな!- 定本・安藤百福」安藤百福発明記念館


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー


安藤百福は根っからの起業家

最近NHKで、インスタントチキンラーメンを作り出した安藤百福(ももふく)の生涯を描いた連続テレビ小説「まんぷく」が再放送されているので読んでみました。台湾人として日本統治下の台湾で育った安藤百福は、幼いころに資産家の両親を亡くし、呉服屋の祖父母のもとで育てられました。22歳のとき、当時珍しかった繊維のメリヤスの輸入販売で独立します。日本からメリヤス製品を仕入れて台湾で販売したのです。


当時から起業のアイデアが豊富な安藤は、台湾でヒマを栽培して、その葉で蚕を飼育し、ヒマの実からヒマシ油を取り、蚕の繭は生糸にし、日本内地の工場で織物にするという商売もしています。戦争中には、爆撃で家を失った人のために、プレハブ住宅のようなバラックを製造する仕事にも安藤は関係していたという。安藤は根っからの起業家だったのです。


戦災で家を失った人のために10平方メートルほどのバラック住宅を製造する仕事に関係した。・・プレハブ住宅のはしりではないだろうか(p20)

二度の試練

タイトルどおり、安藤百福は二度、ドン底に転げ落ちています。戦時中、30歳の頃には軍用機のエンジンの部品を製造する会社を知人と2人で共同経営していたのですが、部品を横流しした容疑で憲兵に逮捕されてしまうのです。実は資材の横流しをしていたのは共同経営者のMで、Mと憲兵隊の伍長が親戚同士で安藤を嵌めたのです。軍の知り合いの助力で釈放されるのですが、憲兵隊の拷問によって、疲労困憊し、60日間の長期療養を余儀なくされたという。


41歳の頃には、事業家として有名であった安藤は大阪の信用組合の理事長になってほしいと要請されます。起業家の安藤に銀行業は合わないように見えますが、安藤はその要請を受けてしまうのです。その結果、信用組合は破綻し、安藤は全財産を失うことになるのです。全財産を失った安藤は、それまで取り組んでいたおいしくて保存できて、調理に手間がかからず安価な食料の研究に没頭します。当時は終戦後で、飢えた人々が街中にあふれており、安藤はそうした状況をなんとかしたいと考えたのです。


終戦から1年余りたっても、街には腹をすかせた子供達や、やせ細り、うつろな目をした飢餓状態の人々があふれていた・・安藤は36歳になっていたが、この時、すべての仕事をなげうって「食」に転向する決意を固めた(p30)

カップヌードルも試行錯誤から生まれた

チキンラーメン、カップヌードルも、安藤の試行錯誤の中から生まれたということにびっくりしました。安藤の口癖の「転んでもただでは起きるな。そこらへんの土でもつかんでこい」という言葉のとおり、一人で研究を続けたのです。当時の日本では物まねするのは普通の商行為であり、「特許を盾に権利を主張するやり方はあくどい」という風潮の中で、チキンラーメンの商標や研究の成果であるインスタントラーメンの製法特許を取り、類似品との戦うことになるのです。


また、安藤は食品業界の反対の中で、1965年に日清食品の全製品に製造年月日の表示を入れることを決め、さらに農林水産省に法的義務とするよう働きかけ実現しています。安藤百福は、何度も人に騙され、避難され、足を引っ張られましたが、社会のために良いことをしようという一貫した姿勢があると感じました。良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・安藤はもともと、「資源を持たない日本は知恵を結集して新しい産業を興し、新たな雇用機会を創出し、世界に貢献していくのが理想だ」と考えていた(p109)


・1947(昭和22)年4月、安藤は名古屋に「中華交通技術専門学院」を設立した・・全寮制で食事がつき、奨学金がもらえるので、優秀な学生が集まった(p33)


・カップライス・・(価格が)高すぎます・・コムギ粉の5倍もする米を原料にしていたのでは、とうていめんとの価格競争には勝てない(p96)


・愚者が賢者を使え(p170)


▼引用は、この本からです
「転んでもただでは起きるな!- 定本・安藤百福」安藤百福発明記念館
安藤百福発明記念館、中央公論新社


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次


第1部 安藤百福伝(起業;不屈;発明 ほか)
第2部 安藤百福かく語りき(逆境;創業;発明 ほか)
第3部 安藤百福年頭所感



著者経歴


安藤百福発明記念館・・・チキンラーメンを開発した日清食品創業者・安藤百福の業績を記念した施設。大阪府池田市と、横浜みなとみらい地区にある。管理・運営は日清食品ホールディングス関連団体の公益財団法人安藤スポーツ・食文化振興財団。旧名称は「インスタントラーメン発明記念館」


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