【書評】「起業家のように考える。―ゼロからはじめるビジネス成功の方程式」田原総一朗

【私の評価】★★★★☆（82点）

要約と感想レビュー

メルカリ起業の経緯

2016年と10年前の本ですが、雑誌プレジデントの企画「田原総一朗 次代への遺言」を書籍化したものです。メルカリの創業者山田進太郎さんのインタビューが掲載されており、山田進太郎さん自身の著作は出版されていないので、貴重ではないでしょうか。

山田進太郎さんは、楽天インターンとして「楽天オークション」の立ち上げに携わりますが。仕事をしながら、これなら自分でもできる、と思い、独立・起業するのです。最初に作ったのは、「映画生活」「フォト蔵」やモバイルゲームサービスなどで、モバイルゲーム以外は、2009年にぴあ社に事業売却。モバイルゲーム事業も、2010年に米ゲーム大手Zyngaに売却し、2013年「メルカリ」を創業するのです。

「楽天オークション」では「ヤフオク」に勝てなかったけれど、スマホが普及した2013年ならフリマアプリで勝てると判断したのです。

「メルカリ」では、商売っ気のない個人ユーザーをターゲットとし、素人が気楽に参加し、物がメルカリの中でぐるぐる回ることで、不用品を活用するサービスと位置づけていることがわかります。アメリカでもサービスを開始し、アメリカ版のシンプルなデザインに統一した経緯も説明されています。

「メルカリはサポートがいいよね」と思ってもらえたら、その後も使ってもらえる。社員は200人を超えましたが、半数以上がカスタマーサポート（ｐ16）

ビズリーチとスマートニュース

「メルカリ」以外にも、「ビズリーチ」「スマートニュース」「クラウドワークス」など現在、主流となっているサービスの立ち上げもおもしろいのです。

「ビズリーチ」は、求職者と求人企業の両方から料金を取るというビジネスモデルで起業しています。結婚相談所は、男性と女性の両方から料金を取るから、真剣に質のよい出会いがあるという仮説を立てたのです。

「スマートニュース」は数百万人のアクセスデータを分析し、一日1000万件の記事の中から1000本くらいに記事を絞って提供しています。また、電波のあるところで一回アプリを起動しておけば、あとで電波がないところでも読めるようにしているという。

「クラウドワークス」は、仕事と求職者のマッチングサービスですが、立ち上げでは、当時はプログラマーが足りない状況だったので、著名なプログラマー50人を並べて、企業に「間もなくオープンです。興味ありませんか」とPRしたという。
　

会員制の転職サイト「ビズリーチ」を始めることにしました（ｐ188）

ニコニコ動画開発の経緯

KADOKAWAの子会社である「ドワンゴ」は、ニコニコ動画で有名ですが、初代社長の川上量生さんは、スティーブ・ジョブズのように二回社内で失脚したという。川上さんが会社に来ないので、社長なのに誰も言うことを聞かなくなったという。

しかし、その度に会社の業績を立て直すために、着メロサービスやニコニコ動画を立ち上げ、会社を立て直したのです。

もちろん誰も言うことを聞かないので、着メロときはのドワンゴの社員を一人も使わず、社外の人間だけで開発したという。また、ニコニコ動画も、誰からも評価されていないダメ社員を集めてサービスを開発したという。わけがわからない新規事業だから、社員はみんな逃げるので、勝手に開発したらヒットして首がつながったというわけです。

本当にぶっ飛んだ能力のある人は、普通の人には評価できないんだなと妙に納得してしまいました。田原さん、良い本をありがとうございました。

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この本で私が共感した名言

・弁護士ドットコム・・・「食べログ」の弁護士版をつくりました・・ぼったくりバーです。しかし、お客のうちの一人が弁護士ドットコムを使ってその場で弁護士を見つけて連絡。すぐ駆けつけてくれて、妥当な料金で話をつけてくれたそうです（ｐ194）

・起業家には、目標から逆算して計画的にキャリアをつくるタイプと、目の前のやりたいことに挑戦した結果、キャリアが積み重なっている二つのタイプがいる（ｐ282）

・若手起業家たちは、堀江が叩かれる様子を見て、なるべく敵をつくらずに自分たちのやりたいことを実現していくしたたかさを身につけていた（ｐ2）

▼引用は、この本からです

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田原 総一朗 (著)、プレジデント社

【私の評価】★★★★☆（82点）

目次

第１章　どうやって、思いついたの？
　メルカリ　山田進太郎
　スマートニュース　鈴木健
　メタップス　佐藤航陽
　C Channel　森川亮
第２章　どうやって、優秀な人を集めたの？
　ドワンゴ　川上量生
　Ｓｐｉｂｅｒ　関山和秀
　FiNC　溝口勇児
第３章　どうやって、お金を集めたの？
　スターフェスティバル　岸田祐介
　ＨＡＫＵＴＯ　袴田武史
　クラウドワークス　吉田浩一郎
第４章　どうやって、お金を稼ぐの？
　ＺＭＰ　谷口恒
　ビズリーチ　南壮一郎
　弁護士ドットコム　元榮太一郎
　マネーフォワード　辻庸介
第５章　なんで、会社辞めちゃったの？
　ＵＰＱ　中澤優子
　スペースマーケット　重松大輔
　ラクスル　松本 恭攝
　ビザスク　端羽英子

著者経歴

田原 総一朗（たはら　そういちろう）・・・1934年滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所に入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、1977年フリーに。テレビ、ラジオ、雑誌、ネットなど幅広いメディアで活躍。2002年より早稲田大学特任教授として大学院で講義をするほか、次世代リーダーを養成する「大隈塾」の塾頭も務める。

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