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「たのしみを財産に変える生活」本多 静六

2023/09/23公開 更新
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「たのしみを財産に変える生活」本多 静六


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

仕事の道楽化

東大農学部教授として、日比谷公園、明治神宮などの設計に携わり、私生活では収入の四分の一を貯蓄し、資産家となった本多静六氏の幸せの定義を学びましょう。本多静六氏の提案は、仕事の道楽化です。つまり、金のために働くのではなく、面白いから働く、努力を楽しむということです。登山家が平凡な山よりも、命に危険のある険しい山に挑戦することに喜びを感じるように、困難な仕事があるほど楽しいのであり、喜んでそれを克服していくことが幸福であるというのです。


成功した過去の偉人を見れば、貧乏からはい上がった人が多いことから、「天はできないことを人間に与えるものでないという原則がある」としています。困難こそ、人を成長させ、幸福、成功を引き寄せてくれる源なのです。


すべてが満たされている状態よりも、「食うに困らないように出世したい、美しい賢い妻をもちたい」と理想に向かう途中が面白いというのが、本多静六氏の幸福の定義なのです。成功したときに幸せがあるのではなく、成功に向かっている途中に幸せがあるのです。だから子どもにも努力することの面白さを教えるために、子どもは貧乏に育てよ、としています。賢い父母は、かわいい子供には旅をさせる。これは親の愛なのです。


・努力の大なるほど、かえって面白く感じるという事実は、ちょうど山登りに自信のある人が、登ることによろこびを感じて、アエテ困難を選ぶのと同じである(p157)


家庭菜園を作りましょう

生活面では、簡素な節約生活を提案しています。明治時代には玄米と麦、ヒエ、粟などにミソ汁、手作りの野菜だけで暮らしていたのだから庭に家庭菜園を作りましょうと提案しています。植込みの代わりに柿、梅、桃、梨などの果樹を植え、庭を菜園化し、野菜のクズで、鶏を飼って卵を取るのです。庭を小畑にすれば、野菜類を作れて経済的だし、庭仕事は楽しいことでもあり、運動にもなり健康になるのです。


実際、本多静六氏は肉屋と魚屋は出入り禁止とし、肉や魚類は人から貰ったら食べるという節約生活をしていたという。また衣服も下着を重ね着して温度調節して、無駄な衣服には金を使わなかったようです。注意すべきは、この本が1951年という太平洋戦争直後に書かれていることです。日本再建のためには、簡素な生活が必要となるというわけです。


・私の下着はちぢみとメリヤスで、いずれも半ダースずつあるが、冬物は一枚もなく、寒い時はそれを二枚でも三枚でも、幾枚でも重ね着にするので、いわば昔の十二単と同じである(p75)


全財産を寄付

本多静六氏は収入の四分の一を貯蓄し、四分の一を投資し、四分の一を勉学など自分に投資し、四分の一で生活することで資産を築きました。また、農学者として埼玉県の秩父の山林を購入したところ、地価の上昇で莫大な財産を得たのです。ところが本多静六氏が資産家となり贅沢な暮らしをしてみると、実はそれほど楽しいものではなく、貧乏で簡素な生活の中に幸福があると気づいたという。なんと本多静六氏は、大学を退官時に資産のほとんどを公共機関に寄付してしまうのです。


埼玉県に奨学資金を寄付したときには、「基金の利子の四分の一以上を毎年基金に繰り入れ、その余りの金を奨学金とする」とし、現在でも「本多静六博士奨学金」として 埼玉県が運用しています。本多静六氏は財産を私有させるのは、その人の幸福のためのみでなく、社会全体の幸福を目標としてその人に財産を信託しているに過ぎないと松下幸之助のようなことを語っています。偉大な人です。本多さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・「人というものは、自分の思っている気持ちが自己暗示となって作用するのであるから、自分自身の心の持ち方一つで自分の運命を立て直していくことができる」と悟って、貧乏すればまだ身体が丈夫だから仕合せだと思い、病気をすれば命があるからありがたいと感謝することにして(p155)


・大学の教授ならひと通りの文章が書けねばと、25歳で助教授になった時から毎日14行32字詰の原稿用紙に、必ず一頁ずつ印刷するつもりで原稿を書くことにした(p172)


・朝の三、四時になると自然に目が覚めるのでただちに運動のために近所の道路やゴミ溜め掃除をすることにしていた・・読書または執筆し、そのうちに新聞がくるので、それを読み、六時または六時半にラジオを聞き、その後朝食をとり、食後二、三十分休憩の上、庭の手入れなどをして、再び机に向かう。新刊書の耽読(たんどく)、または執筆したりする、十一時半にはひとまず仕事を打ち切り、昼食後、三十分ほど昼寝をして、それから庭仕事や、各種の会合などに出席する(p182)


・夕食後は二時間ずつ運動することは昔も現在も変わりはない。二里以上歩く、現在の伊東奥の山荘から市内の方へ往復すればちょうど二時間かかる(p187)


▼引用は、この本からです
「たのしみを財産に変える生活」本多 静六
本多 静六、河出書房新社


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

幸福とは何か
子孫を幸福にするには
遺伝と幸福
衣食住の改善
社交、貯蓄その他
人間理想の生活
晴耕雨読の実際
田園生活に入る人のために
人生の最大幸福
私の生活改善
一番いい生き方
恋愛と結婚
恋愛成功法
運命か遺伝か



著者経歴

本多 静六(ほんだ せいろく)・・・1866(慶応2)年、埼玉県生まれ。苦学の末、1884(明治17)年に東京山林学校に入学。首席で卒業。その後、ドイツに私費留学してミュンヘン大学で国家経済学博士号を得る。1892(明治25)年、帝国大学農科大学(現在の東大農学部)の助教授となり、「月給4分の1天引き貯金」と1日1頁の原稿執筆を開始。研究生活のかたわら植林・造園・産業振興など多方面で活躍、日比谷公園の設計や明治神宮の造林など大きな業績を残すだけでなく、独自の蓄財投資法と生活哲学を実践して莫大な財産を築く。1927(昭和2)年の停年退官を機に、全財産を匿名で寄付。その後も「人生即努力、努力即幸福」のモットーのもと、戦中戦後を通じて働学併進の簡素生活を続け、370冊余りの著作を残した。1952(昭和27)年1月、85歳で逝去。


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