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「会社に使われる人 会社を使う人」楠木 新

2023/04/18公開 更新
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「会社に使われる人 会社を使う人」楠木 新


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

独立、転身

著者は生命保険会社で順調に出世していましたが、47歳でうつになって1年間、休職してしまいます。なんとか平社員として職場に復帰してみると、仕事に対してそれまでのような充実感を持って取り組むことができなかったという。そんな中で、会社を飛び出して、イキイキと活動している人がいることを知ります。著者はヒントをもらうために独立、転身した人にインタビューしていったのです。


150人の会社員から独立・起業した人に話を聞いてみると、大幅に収入を減らした人が多いものの、みな"いい顔"をしていたのが印象的であったという。著者はそうしたインタビューの結果を、ブログで情報発信し、本を出版していきました。著者はサラリーマン向けの「もの書き」という会社以外の居場所を見つけることができたのです。


・書籍やウェブサイトからではなく人から学ぶことがいちばんだというのが、私の確信である(p141)


日本型組織

会社の外から日本型組織を冷静に観察してみると、日本型組織とは共同体であり、会社の人事異動どおりに単身赴任もいとわない人のほうが優遇される仕組みだという。だから日大アメフト部の危険タックル事件も監督が大学の理事で、コーチが大学の職員で、選手が大学の学生という日本型組織の逆らえない構造から発生しているというのです。


ただ著者は、こうした日本型組織はしょせん各々のサラリーマンが頭のなかで勝手に描いた幻想であるとしています。つまり、自分の人生を会社に預け、会社も自分の人生の面倒を見てくれるという前提に基づく幻想なのです。実際には、いつかは会社の外に放り出されるわけで、人生百年時代、会社を辞めてからどうするのかわからない人が多いのです。


定年後、現役のときのような充実感がもてず、会社に代わる居場所を見つけるのが難しいのが実態なのでしょう。だからこそ、会社員のうちに「もう一人の自分」を作ることを著者は推奨しています。定年してから考えるようでは遅いのです。


・「辞めてどうするのか」・・多くのサラリーマンは会社に安住しているので、次のステップが見えない(p87)


役職定年はチャンス

著者は60歳から74歳までの15年間は、自分で仕事を進める能力があり、家族の扶養の負担も軽くなり、うるさい上司もいなくなる"黄金の15年"と表現しています。ただ、現実には定年後に、自分から仕事を取ったら、何が残っているのかと問われると、答えを持っていない人が多いのでしょう。


だから、著者は「左遷や役職定年はチャンスだ」と主張しています。いずれ会社組織から離れなくてはならないのですから、左遷にがっかりするのではなく、次の準備をする時期になったという警鐘であると知るべきなのです。会社を辞めても、元気で楽しく活動できると楽しいだろうなと読みながら考えました。楠木さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・定年後は、働く女性たちにとってはめざす標準モデルのない未知の世界なのだ(p108)


・男性の場合は(お金の)使い道がわからない人が多い・・女性・・お金の使い方がわからなくて悩んでいる人はあまり多くない(p116)


・商店街の人たちは、私の周りにいるサラリーマンよりも収入や財産は少なかったのに、圧倒的に"いい顔"をしていた(p156)


・私は昔から会社は「友だちを探す場所」だと思ってきた(p140)


▼引用は、この本からです
「会社に使われる人 会社を使う人」楠木 新
楠木 新、KADOKAWA


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

第1章 『LIFE SHIFT』の実践は難しい―"人生百年時代"の生き方・働き方
第2章 「パワハラ」と「同期入社」の根っこは同じ―日本型組織の本質を考える
第3章 会社に使われる人たちの末路―変化する女性、変化できない男性
第4章 会社を使って"もう一人の自分"をつくる―サラリーマンの新しい人生戦略
第5章 "楠木新"はこうしてつくられた―うつを経て平社員から作家へ
第6章 七つの転身パターンが教えること―キャリアチェンジの勘所を聞く
終章 なぜ会社にとってもメリットか―主体性をもった社員の力を活かせ



著者経歴

楠木新(くすのき あらた)・・・1954年神戸市生まれ。京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に、総合企画、支社長などを経験。勤務と並行して、「働く意味」「個人と組織」をテーマに取材、執筆、講演に取り組む。2015年、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。MBA(大阪府立大学大学院)。


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