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「フォルティシモな豚飼い」杉田 徹

2022/11/29公開 更新
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「フォルティシモな豚飼い」杉田 徹


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

 宮城県の三陸で放し飼いの豚牧場を経営する杉田さんの自由すぎる放浪記です。杉田さんは20代から東京でフリーの報道カメラマンとして働いていました。報道カメラマンとしてやりがいもお金も稼げない中で、杉田さんは報道写真に見切りをつけ、旅をしながらその土地の人を撮影しはじめたのです。


 35歳のときには、撮影の旅の中で知った秋田に家族で引っ越してみました。しかし、カメラマンが簡単に畑仕事をできるはずがありません。草取りに苦労しながら、春にワラビ、秋にはキノコを採り、近所の人から魚や野菜をもらったりするようにまでなりました。秋田には日本の豊かな自然の中で、人情に恵まれた生活があり、その姿をカメラに収めたのです。


・漁が板子一枚、下は地獄であるなら、農は人と人の付き合いをそこなうことが、命とりとなる(p97)


 秋田で暮らして数年すると、杉田さんはポーランドの写真を見て、ポーランドに住みたくなりました。(どれだけ自由なんだ?!)軍資金がないことが問題でしたが、地主に借地権を3000万円を売ることでクリアしてしまいました。そしてポーランド移住の話は、まわりまわってスペインに落ち着きました。家族で住むには物価も安く、民主的で安全な国を選んだのです。


 スペインでは郷に入れば郷に従えで、スペインの羊飼いと友だちになって、放牧を学びました。スペイン人と同じように夜の街に繰り出して、アイスクリームを食べたのです。そこには「人生は楽しく過ごすべし」とするスペイン人が、乾燥した慈悲のない自然の中で太陽のない夜を楽しんでいたのです。


・日本の畑の大きな仕事は、草取りにつきる・・・(スペインでは)草刈りをする人は、いない。草があるなら、ロバやラバ、羊や山羊が片付ける(p217)


 この本の最高なところは、湿潤で豊かな日本の風土と、乾燥した力強いスペインの風土を浮かび上がらせてくれることでしょう。中学生の時よんだ和辻哲郎の「風土」の100倍面白いのです。


 スペインでは乾燥した土地で何もないがゆえに、人々は人間関係を大切にするのです。よそ者も笑顔で迎え入れてくれる。一方の日本人は、豊かな自然の中で生きてきたので、日本人は自然と一体となって親しんできたというのが著者の理解です。ピアノを弾く豚飼いである著者は、一流の多国籍文化研究家でもあるのです。。


 これは豚牧場エル・コルティッホ・ソーナイの豚肉を食べないといけない!ということで注文しました。杉田さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・餌の材料の食品工場の残渣には、お金がかからないから、ただである。残渣では足りない栄養を購入して補っても、配合飼料よりはるかに安い(p23)


・朝仕事が終わるとピアノに向かう(p69)


・我が家にもテレビはあるが、放送が映らない、映画を見るためにあるテレビだ(p78)


・(スペインの)グァディックスの人々が、赤ん坊の時から夜の街を乳母車に乗せられて「人間」に親しむなら、私たちは赤ん坊の時から桜の木の下で「自然」と親しんできたのだ(p242)


・「楽しむ」とは・・「私が私であること」が満たされる喜び・・・「私が人間である所以」とは、その「私が私であること」に尽きる(p247)


・自然には、下心がない。スペインの友だち付き合いにも、下心があってはいけないのだ(p249)


▼引用は、この本からです
「フォルティシモな豚飼い」杉田 徹
杉田 徹、西田書店


【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

1 豚飼いになった写真家
2 疑問を解く旅の序
3 答えを得る旅
4 近すぎた太陽
5 乾いた合理



著者紹介

 杉田徹(すぎた とおる)・・・1943年、新潟県生まれ。現在、宮城県志津川在住。豚牧場、エル・コルティッホ・ソーナイを経営


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