「プライベートバンカー カネ守りと新富裕層」清武 英利
2017/10/26公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
プライベートバンカーの仕事
日本の証券会社からシンガポールのプライベートバンクに転職した主人公を通して、新富裕層の課税優遇地への移住を考えます。お金持ちは税金を減らすために税金の安い外国に移住しようと考える場合があります。5年を超えて日本の非居住者であれば日本国内の財産にしか課税されないのです。例えば、日本に国籍を置いたまま、タイに自宅を構え、オフショアのシンガポールで資産運用をして、余暇はカンボジアや近隣諸国で過ごすという日本で税金を払わない終身旅行者がいます。
そしてそれを助けるのが、プライベートバンクと呼ばれる富裕層向けの金融サービスなのです。プライベートバンクはもともと欧州の王侯貴族など超富裕層の資産を管理し、運用する個人営業の銀行(Private bank)がはじまりです。プライベートバンカーの仕事は次の三つです。一つ目は、ビリオネアの口座を銀行に開設すること。二つ目はその口座に彼らのカネを入金させること。そして三つ目がそのカネを運用して守ることです。
・プライベートバンカーは一億円以上の金融資産を持つ金持ちしか相手にしない。彼らの定義によると、富裕層とは「1億円~5億円未満」、超富裕層は「5億円以上」の資産を持つ者だそうだ(p10)
暇なのが一番怖い
金持ちになって南の島でのんびり何も考えずに暮らしたいと憧れる人は多いのですが、実際やってみると、これほど空虚なものはないという。移住してみるとゴルフをするか、酒を飲むか、女を買うしかやることがない。税金を減らすために、人生の幸せな時間を減らしてしまう人が多いらしいのです。
税金を逃れて移住してきても、しばらくすると妻や息子の嫁が「日本に帰りたい」などと言い出し、移住した一家がもめ始めるという。つまり、人生には仕事、目標、友人の一つでも欠ければ、異国で生きるのは辛いことなのでしょう。
・やることがないのや。暇なんが一番怖いのう(p9)
ここまでして税金を払いたくないのか、と思いました。税金を払いたくないがゆえにシンガポールに住む人は、牢獄にいるようなものです。やってみないとその人の気持ちはわからないのですね。清武さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・採用条件・・
1.自分の力で1年以内に1億ドルのカネを集め、
2.百万ドルの収益を挙げろ(p24)
・見込み客に御礼状を書く・・その日の面談で名刺を交わした人、会ってくれなかった人、面談したが名刺は出してくれなかった人、カネを持っていそうな人すべてを「見込み客」と呼び、彼らに筆ペンで御礼状や挨拶状を書けというのである(p79)
・BOSの場合、顧客によっては預かり資産の1%をカストディアン・フィー(信託報酬)として受け取るが、そのうち三割を紹介者に提供していた(p116)
・シンガポールに移住した世界的な投資家ジム・ロジャーズは、「Buy disaster.(天災は買いだ)」を信条としていた。そして、東日本大震災翌日には日本株を買い増している(p154)
講談社
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【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1章 ニューマネーの国
第2章 ジャパンデスク
第3章 攻防
第4章 海を渡った日本人富裕層
第5章 国税は見ている
第6章 シンガポール・コネクション
第7章 『太陽がいっぱい』
著者経歴
清武 英利(きよたけ ひでとし)・・・1950年宮崎県生まれ。立命館大学経済学部卒業後、75年に読売新聞社入社。青森支局を振り出しに、社会部記者として、警視庁、国税庁などを担当。中部本社(現中部支社)社会部長、東京本社編集委員、運動部長を経て、2004年8月より読売巨人軍球団代表兼編成本部長。11年11月、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を解任され、係争に。現在はノンフィクション作家として活動。
海外移住関連書籍
「定年後の楽園の見つけ方―海外移住成功のヒント」太田尚樹
「フォルティシモな豚飼い」杉田 徹
「脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住」本田 直之
「プライベートバンカー カネ守りと新富裕層」清武 英利
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