「星野リゾートの事件簿2 なぜお客様は感動するのか?」中沢 康彦
2022/02/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
星野リゾートは経営不振に陥った旅館、ホテルを買収して運営を引継ぎ、高級旅館、ホテルとして再生し、利益を出しています。不思議なのは、それまでの経営者が黒字にできなかったボロボロの旅館、ホテルを従業員を引継ぎながら、新しいコンセプト、新しいサービス、そこそこの設備投資で生まれ変わらせていることです。
この本では2010年以降に、実際の星野リゾートの現場で何が起きていたのか、11の事例を示し教えてくれる一冊となっています。星野リゾート特徴は、フラットな組織で誰でも言いたいことが言える組織です。そして経営情報は誰もが見ることができ、自ら自分の仕事について提案し、改善することができるのです。
・「フラットな組織」の導入を宣言することから始めた。星野リゾートではさまざまな経営情報を公開。スタッフはお互いに言いたいことを、言いたいときに、言いたい人に言いながら業務の改善を進める(p14)
やはり面白いのは最初に紹介されている「星野リゾートOMO7(おもせぶん)旭川」の事例でしょう。それまで「旭川グランドホテル」として宿泊、婚礼、レストラン、宴会サービスを提供してきた典型的な地方のグランドホテルの運営を星野リゾートが引き受けた事例です。
社員を集めてのコンセプト委員会では宿泊客の目線で何が一番いいのかを考えることで、ホテルのディナーではなく、周辺のお店で食べていただくことが決まりました。そのために街のお店を紹介するOMOレンジャーというコンシェルジュを配置することにしたのです。このようにお客様ファーストで考えることで、ホテルの顔であるディナーをやめてしまうという決断をしているのです。従来の部門別にばらばらに考えていたら決してありえない決断でしょう。
・自分が旅をしたときにどういう行動をしたいかを考えよう。旅行先に行ったときに本当に食べたいものは何か(p20)
経営者で会社は変わる、経営者の器以上に会社は大きくならないと言われますが、まったくその通りだと思いました。経営者にできることは限られていますが、経営情報を公開し、社員が意見を言いやすい環境を作り、社員にコンセプトを考えさせ、自分の仕事を改善していく社風を作ることは可能なのです。
目の前で星野リゾートという形で再生された旅館、ホテルを見るということは、人間の無限の可能性を見ているということだと思いました。もう少し星野リゾートについては ご紹介していきたいと思います。
中沢さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・全員で話して合意して決めていくうちに、いっしょに仕事をしていく感覚になった(p24)
・ハプニングステイ・・・部屋のカードキーが両手で抱えるほど巨大だったり、部屋番号が計算しないとわからない形で表示されていたりする(p40)
・フランス料理のレストランで鮒ずしを出していいのか・・・皆驚くから施設を知ってもらうきかっけにもなるし、絶対やろう(p145)
・情報システムグループ・・・約30人のメンバーのうち、ホテル・旅館出身とエンジニア出身がほぼ半数・・・(p93)
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1章 考えて、議論して、動いたら、ここまできた
崩れたスクラム―OMO7旭川(北海道旭川市)
消えたビジネス客―BEB5土浦(茨城県土浦市)
第2章 ミスもピンチも前向きなエネルギーに変える
寒風の絶景温泉―界箱根(神奈川県箱根町)
停電の結婚式―軽井沢ホテルブレストンコート
大浴場、稼働に試練あり 情報システムグループ
ビュッフェ中止の残念感 リゾナーレ熱海
第3章 常識からの決別
冬期営業、再開の高い壁―奥入瀬渓流ホテル(青森県十和田市)
近くて遠い大観光地―ロテルド比叡
第4章 次のステップに踏み出す
踊り出した経理担当―星のやバリ(インドネシア・バリ島)
前例なき再生―界長門(山口県長門市)
「長すぎた階段」との別れ 界熱海
著者経歴
中沢康彦(なかざわ やすひこ)・・・日経ビジネス副編集長。1966年新潟市生まれ。慶応義塾大学卒業後、毎日新聞記者を経て日経BPに入社。日経ビジネス編集部、日経トップリーダー編集部、日本経済新聞社企業報道部などを経て2018年4月から現職。
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