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「入社3年目からの問題解決」小川 仁志

2021/05/03公開 更新
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「入社3年目からの問題解決」小川 仁志


【私の評価】★★★☆☆(76点)


要約と感想レビュー

アイデアや解決法を発想する方法

問題解決、コンサルタント向けの本かと思って手にしましたが、アイデアや解決法を発想するための方法が説明されていました。関係するデータを集めたり、付箋紙にアイデアを書いたり、グループで模造紙に書き込んだり。そしてアイデアを整理して、構造化したり抽象化して、3つにまとめてみたりするのです。


アイデアは大きな紙に書いたほうが自由度が増すので、グループでアイデアを出し合う際は模造紙を使うとよいのです。一般的なアイデア出しの手法ですが、著者は哲学を研究しているせいか何でもかんでも哲学に関係させていくのです。


オーストリア出身の哲学者ウィトゲンシュタインは、頭を整理するために家を設計したといいます・・・なんでも建築物に見立てることで、構造のしっかりした思考ができる(p74)

現代の発想法と哲学の共通点

面白いのは無理やり感がありながらも、哲学者の思考と組み合わせて発想法を説明できているところでしょう。例えば、グループで模造紙にアイデアを書いていくブレインストーミングは、イギリスの哲学者ジョン・ロックがタブラ・ラサと呼んだ心の白紙似ている。


また、ビジュアル化、図解については哲学者フュームが人間は「知覚の束」と定義したこととぴったり一致するという。具体的でリアルにするほど、人の心は燃えてくるのです。現代の発想法と先人の哲学の共通点が示されると新鮮な感覚です。


フーコーは、権力の恐ろしさを暴いてきた・・・囚人たちは終始監視されていると思い込み、自分を律するようになる・・IoTのおかげで、私たちの生活がすべて管理されていく(p57)

哲学とは思考の切り口

アイデアとは既存のアイデアの組み合わせであると言われます。その組み合わせを発想するために哲学の考え方が応用できることが新鮮でした。この本の本質は書いてある内容に存在するのではなくて、この本をきっかけに物事を深く考えることだと感じました。


哲学というと堅苦しく感じますが、思考の切り口、フレームワークと考えれば、やりたいことのイメージを膨らませる面白い道具になるのです。小川さん良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・アインシュタインもADHD・・・フランスの思想家ミッショル・フーコーは、中世までは神がかりのある人は文字通り神のような存在だったのに、近代になると皆精神病院に閉じ込められてしまったと論難しています(p139)


・フランスの思想家パスカルにいわせると、人間の営みの多くは退屈しのぎのためのものなのです・・・そうせ暇をつぶすなら、面白いほうがいい(p195)


・人生の失敗をネタにします。これによって相手の心を開くのです・・・商売と同じで、あえて下手に出て相手を喜ばせているだけなのです(p122)


・セレンディピティの偶然性は、本当の意味での行き当たりばったりとは少し異なります・・・偶然の出会いを求めていない人には、偶然出会える確率は低くなる(p189)


▼引用は、この本からです
「入社3年目からの問題解決」小川 仁志
小川 仁志、実業之日本社


【私の評価】★★★☆☆(76点)


目次

第1週 「テクノロジー」を思考の道具にする
第2週 「身の回りのモノ」を思考の道具にする
第3週 「日常」を思考の道具にする
第4週 「抽象的なもの」を思考の道具にする



著者経歴

小川仁志(おがわ ひとし)・・・徳山工業高等専門学校准教授・哲学者。1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒業。名古屋市立大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(人間文化)。米プリンストン大学客員研究員(2011年度)。専門は公共哲学。「哲学カフェ」を主宰


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