オーダースーツオンリーを上場させた「中小企業を救うエマージェント経営戦略」亀井芳郎
2020/11/26公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
やってみて結果を見ながらカイゼン
著者はオーダースーツの「オンリー」を社長として上場させた後、退任。その後、コンサルタントとして独立しています。この本では、コンサルタントとして400社を指導してきた手法を紹介してくれます。
タイトルのエマージェント経営とは、現場でやってみて結果を見ながら柔軟にカイゼン図っていく手法です。著者は7人くらいの小集団で自社の状況を7つの項目で把握、共有し問題点の改善を図っていく、というアプローチを紹介しています。つまり、小集団活動という仕組みのない中小企業に、7つの経営視点の小集団活動を導入するということです。
セブンエレメンツモデル・・・自社、競合、商品、価格、販路、販促、顧客(p172)
カイゼン活動は人材育成活動
そもそも中小企業には小集団活動が導入されていないことが多く、導入するだけで効果があるようです。また、小集団だからこそ、動きが早く効果が出てくる。対策を打ちながら結果を測定し、打ち手を変えていく。だいたいこれで成果が出るそうです。
これは複雑な計画を立てず、できるだけリスクの少ない方法で敏速に検証を繰り返し、その検証を通じて戦略の内容を変化させるリーン・スタートアップと同じことで、確実に成長を図れるという。
また、この小集団活動により、問題解決の楽しさを知った人材を育成できるというメリットがあります。さらに自分で問題、原因、対策を考え、自ら実行していくことで、達成感があるのです。小集団活動はカイゼン活動であり、かつ人材育成活動なのです。
日本の経営で特徴的なものは「小集団活動」であり、これがカイゼンのための組織学習のみならず、トヨタに見られるような「人材育成」の軸となっている(p186)
カイゼン活動は人材育成活動
具体的な小集団活動は、7人程度の小集団で、自分たちの直面する問題を題材として、自分たちで考えます。スピードを重視しつつ、小集団活動を導入するのは現実的なコンサルだと思いました。また、コンサルティングにあたっては現場の人に受け入れられる対人スキルの重要性も指摘しており、著者も苦労してきたということが覗えます。
「オンリー」の優秀なスーパーバイザーは、複数の店を担当しているにもかかわらず、1日1件しか回らないという。朝掃除から入り、レジを閉めるまで店のメンバーと一緒に行動し、一緒に問題点を考えるのです。そして、メンバーから意見を引き出し、問題点の対策を一緒に決め、実行に向け背中を押すのだという。
問題点を修正することも大事ですが、良いところを伸ばすことがも大事。実践的な一冊だと思いました。亀井さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・まず"中小企業の受け入れ態勢を整える目的"で、プロジェクトを設置する・・・現場のスタッフと、組織のトップ人材、外部の支援者などが、少人数で集まり、実行する小集団活動である(p185)
・「問題解決」は人材の基礎的な能力で、人材育成の要である(p64)
・熟達した起業家は、「自分が誰であるのか」、「何を知っているのか」、「誰を知っているのか」からスタートして、すぐに行動を起こし、他の人々と相互作用をしようとする(p139)
・科学は経営の一部であるが、すべてではない・・・経営にはヒューマンスキル、人間力が必要であり、この要素を無視すると失敗する(p227)
・対人関係のスキル・・・参加者の良いところを見つけ、ほめることができる・・・企業の問題点を指摘することが仕事と思われているが、良いことを見つけて伸ばすことのほうが重要であると考える(p234)
・「コツコツ商品開発すること」「考えられる販促をコツコツ試してみること」・・・突然、ヒット商品やすごい販促が生まれることはない(p248)
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
第1章 エマージェント経営のモデル「日本的経営」の組織論
第2章 過去の戦略から学び、生かすエマージェント戦略論
第3章 エマージェント経営の戦略フレームワーク「セブンエレメンツモデル」
第4章 エマージェントプロジェクトを始める前の「場づくり」
第5章 エマージェントプロジェクトの手順
著者経歴
亀井芳郎(かめい よしろう)・・・1976年同志社大学卒業後、三喜商事で海外ブランド開発に取り組み、営業部部長、経営企画室長などを歴任。1999年オンリー入社、The@SuperSuitsStoreを立ち上げ、2002年同社社長を引き継ぐ。2005年大阪証券取引所ヘラクレス上場。2006年社長を退任し、コンサルタントとして独立
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