【書評】「文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの」ジャレド ダイアモンド
2020/10/14公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(75点)
要約と感想レビュー
現代社会の盛衰
「文明崩壊」の下巻は、現代社会の盛衰を観察するものとなっています。例えば、ドミニカ共和国とハイチはどうしてこうも違うのか。同じ島にあるドミニカ共和国は国土に森林と農地が豊かですが、ハイチは樹木のないはげ山となっています。
これはドミニカ共和国のほうが降水量が多いということもありますが、木炭から水力発電、ガスなどにエネルギー源を転換したところが大きいようです。
ドミニカ共和国では・・・水力発電用のダムの建設計画を立て、バラゲール政権とその後の大統領たちがそれを実行に移すことができた。バラゲールは、森林の燃料利用を控えさせるため、かわりにプロパンガスや液化天然ガスを輸入する大改革を打ち出した。しかし、ハイチの人々は、貧困のせいで森林由来の木炭燃料に頼るしかなく、最後に残った森林の破壊を促進することになってしまった(p104)
漁業は資源を維持できるのか
著者の視点は、現代文明の持続可能性にあります。農地の土壌侵食や灌漑による塩害は、農業の持続性を可能としているのか。現在のような自由な漁業は、漁業資源を維持できるのか。最近の漁業の不振を見ると、養殖などの持続可能性の高い技術が求められているように感じます。
2、30年のうちに、世界に残っている海洋漁場のほとんどを枯渇させ、もしくは破壊し、清浄な、あるいは安価な、あるいは掘削しやすい石油や天然ガスを掘り尽くし、光合成能力の限界値に達するだろう(p326)
古代文明の遺跡は荒野の中
中国では過去10年のあいだに土壌浸食による被害で、中国北部地域の農業および牧畜用地の約15%を消滅させたという。また、オーストラリアでも多くの土壌が、潮風とかつての海洋盆や湖の遺産として、土壌に大量の塩分を含んでおり、塩分を地表へと上昇させ、塩性化、土壌侵食、外来種、水不足が起きているという。
古代文明の遺跡を見ると、かつて栄えた文明は消滅し、荒野の中に遺跡が残されています。これは周辺の森林資源を、消耗し尽くしたことを示しているのでしょう。1000年後に、私たちの文明がどのように記録されているのか気がかりです。ダイアモンドさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ひとりのフツ族が、あるツチ族を殺しながら、別のツチ族を護ることもあった。・・・ああゆう状況下で、なぜあれほどたくさんのルワンダ人たちが、あまりにも簡単に過激派指導者たちに操られ、極端に残忍なやりかたで互いを殺し合うまでに至ってしまったのだろうか、と(p72)
・人口圧力は、ルワンダの大量虐殺に隠された重大な要因のひとつ・・・ひとりの生存者の言葉を引用しておこう・・・「命を狙われた人々はみな、土地を、ときには乳牛を持っていた。そして、所有者が死亡したあとには、誰かがその土地を、その乳牛を手に入れることになった。貧しく、人口過剰となりつつあった国では、これは無視できない誘因だった(p86)
・1597年、豊臣秀吉は、日本で最初のキリスト教殉教者26人を磔刑(たくけい)に処した・・一見悪意のない貿易業と宣教師が中国やインドやその他の国々に渡米したのち、ヨーロッパの軍事介入が続いた過程を考えてみると、家康が予見した脅威は現実味を帯びたものだった(p40)
・日本社会は、ウシやウマを役畜として利用していたが、森林伐採と森林由来の飼料の不足を受けて家畜の数は減ってしまい、人間の手で鋤や鍬などの道具を使わざるを得なくなった(p52)
・日本のゼロ成長・・・出生率の低下は、それぞれの夫婦が食糧などの資源の不足を認識して対応した結果といえるだろう。それは、江戸時代の出生率の上昇と降下が、米価の上昇と下降に連動していることからもうかがえる(p46)
【私の評価】★★★☆☆(75点)
目次
第2部 過去の社会(承前)
第9章 存続への二本の道筋
第3部 現代の社会
第10章 アフリカの人口危機(ルワンダの大量虐殺)
第11章 一つの島,ふたつの国民,ふたつの歴史
(ドミニカ共和国とハイチ)
第12章 揺れ動く巨人,中国
第13章 搾取されるオーストラリア
第4部 将来に向けて
第14章 社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?
第15章 大企業と環境(異なる条件,異なる結末)
第16章 世界は一つの干拓地
著者経歴
ジャレド・ダイアモンド (Jared Diamond)・・・1937年生まれ。アメリカの生物学者、ノンフィクション作家。ハーバード大学で生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修め、カルフォルニア大学ロサンゼルス校医学部生理学教授を経て、現在は同校地理学教授。
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