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「私はこうして世界を理解できるようになった」ハンス・ロスリング

(2020年10月15日)|本のソムリエ メルマガ登録
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【私の評価】★★★★☆(85点)


内容と感想

■世界的ベストセラー「FACTFULNESS
 10の思い込みを乗り越え、
 データを基に世界を正しく見る習慣

 の著者であるハンス・ロスリングの
 半生を描いた一冊です。


 ハンス・ロスリングは2017年に
 がんで亡くなっています。


 ハンス・ロスリングはアフリカの
 モザンビークで2年派遣医師となり、
 絶望的な貧困の中で生きる人々の
 医療をすることになります。


 たった一人でスウェーデンの100倍の
 患者を、限られた医薬品と設備で
 面倒を見なくてはならない。


 すべてに時間を割けないいことを
 心では納得できなくても、
 理性で割り切るしかったのです。


・「今日、私はスウェーデンで100人の医師がやるのと同じだけの仕事をしなくてはならないんだ。ならば患者を100倍速で診察すべきか、それとも100人中1人だけを診るべきなのか?」実際は日々、その二つのやり方の中間をとらざるをえなかった(p97)


■また、現地では足に麻痺がでる
 原因不明の病が発生していました。


 これはウイルス感染ではないのかという
 恐怖と、一方で研究者としての好奇心が
 著者を調査に入らせました。


 結局、旱魃により食糧不足になると
 現地の主食であるキャッサバの毒素を
 消す前処理が不十分となり、キャッサバ
 しか食べることのできない貧しい人たちの
 体に麻痺が出るとわかったのです。


・おばあさんのエボラ出血熱が重篤で、死に至ったある一家のことが特に記憶に残っている。彼女の最後の願いは、すでに亡くなった彼女の夫の隣に埋葬してくれるよう家族に約束してもらうことだった。一家はおばあさんとの約束を守った。おばあさんの体を洗い、きれいな衣装を着せ、古びたタクシーに乗せ、彼女の隣に乗り、遺体を町まではこんだ・・・そうしておばあさんは埋葬され、エボラ出血熱は広がっていった(p275)


■その後、著者はアフリカでの経験により
 大学や研究所で発展途上国の医療について
 教えるようになりました。


 大学の授業のなかで著者は
 学生が正しい知識を
 持っていないことに気づきます。


 学生は貧困で医療を受けられない
 悲惨な原住民を助けようと考えて
 発展途上国を医療で助けようとしている。


 しかし、実際には多くの国々は
 西欧諸国に追い付こうとしており、
 現地の医師だけでもやっていけるように
 なってきていたのです。


・モザンビークの子どもの死亡率は、私が働いていた1980年には、およそ26%と推計された。35年たった今では、その数字は8%まで下がっていた。子どもの死亡率を26%から8%に下げるのに、スウェーデンでは1860年から1920年までの60年間かかった(p114)


■私も驚愕したのは西欧諸国の若者たちが、
 地球環境や自然保護を狂信的に
 信じているということです。


 学生は人口爆発のためにエネルギーが
 大量消費され、そのことが環境を悪化させ、
 地球温暖化と野生動物を圧迫していると
 主張します。


 著者はそうした動物の保護を最優先にするのは
 間違いであり、まず人間が良い生活ができる
 ようにすることで、結果的に動物たちを
 守ることができるようになると反論しても
 取り合わない学生が多いのです。


 著者の失望は、若者の中には
 何百万人も死んでいく子どもよりも
 何百年も続いている地域文化よりも
 自然や動物の方を大切にするべきだと
 信じている者が多いことなのでした。


・彼らは人口爆発により環境が悪化したと習った。学生たちの中には貧しい国で毎年亡くなっていく何百万人の子どもたちよりも、亡くなっていく動物たちの方を気にかける人もいた・・・「人間?でも害になっているのは、人間でしょう!」彼らは一体何を勉強してきたんだろう?(p205)


■西欧諸国のシーシェパードのような
 狂信的な環境団体を支援する理由、
 思考ロジックをやっと理解することが
 できました。


 自然を守るためには
 (未開の地である発展途上国の)住民は
 どうなってもよいと
 考えているのです。


 しかし、その一方でデータと事実によって
 そうした狂信的な考え方を訂正しよう
 とする著者のような人もいる。


 そうした議論が行われることが
 西欧の強さであると感じました。


 ロスリングさん、
 良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・私たちは基本的に西洋諸国対(「原住民」が生きる)非西洋諸国という構図でとらえた世界像を植え付けられる。あたかも世界の大半の住民が、未開の文化の原住民であるかのように(p28)


・スウェーデンで堕胎が合法化されたのは、1975年、インドの3年遅れである点は注目に値する(p40)


・その進歩とは、母方の祖母が小学校に4年しか行けなかったのに、そのわずか3世代後の私が教授の職を得られたことだ(p32)


・学生たちは皆、ヨーロッパの国はアジアの発展途上国に比べ、子どもの死亡率が低いと考えた。ところが1999年にすでに、韓国の子どもの死亡率はポーランドの半分以下であったり、スリランカはトルコの半分以下、マレーシアの子どもの死亡率はロシアの半分以下だった(p203)


・完全に都市化した社会での満ち足りた暮らしへと変化するまでには、売春、スラム、搾取、人権侵害など目も当てられないような醜いフェーズを経る場合が多い。しかし同時にそのフェーズには、それらを打破する、経済成長、就学率の上昇、健康状態の改善、一家族の人数の減少、個人の権力の拡大などの力も潜んでいる(p49)


・私のメンターで使節団の医師をずっとしてきたインゲゲルド・ルースからこう言われた。「極度の貧困状態にある人を相手に仕事をする時、決して完璧を目指すな。それを目指すと、他のことに使えるであろう時間と資源を無駄にする羽目になる」(p83)


・私は東ベルリンを散策した。これは思想が左に寄りがちだった私にとって、よい薬になった。東ドイツへの初めての短期訪問で、共産主義を嫌わずにはいられなくなったのだ(p34)


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▼引用は、この本からです

ハンス・ロスリング、ファニー・ヘルエスタム、青土社


【私の評価】★★★★☆(85点)


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目次

第一章 読み書きができなかった世代の孫が教授職になるまで
第二章 世界を発見する
第三章 ナカラへ
第四章 医師から研究者へ
第五章 研究者から教授になる
第六章 教室からダボスへ
第七章 エボラ
エピローグ 人生の講義


著者紹介

ロスリング・ハンス・・・1948年、スウェーデン生まれ。医師、公衆衛生学者。世界保健機関とユニセフの顧問を務め、スウェーデンの国境なき医師団とギャップマインダー財団を共同設立。2017年、68歳で逝去


ヘルエスタム・ファニー・・・1983年、スウェーデン生まれ。ジャーナリスト、作家


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