「文明崩壊(上)」ジャレド・ダイアモンド
2020/06/17公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
■本書上巻では、中米のマヤ文明、
イースター島、グリーンランドへの
ヴァイキング(ノルウェー人)の
入植などが紹介されています。
日本の本なら
それぞれが一冊の本に
なるくらいのボリュームで
いっぱいいっぱいでした。
マヤ文明やイースター島については
記録が少なく推測の部分が多いので、
ある程度記録のあるグリーンランドの
歴史が楽しめました。
・干物の輸出は、1300年以降、アイスランド経済再建の鍵となったが、ヨーロッパからもっと遠距離にあるグリーンランドでは、ヨーロッパへの航路が海氷によって阻まれることが多く、干物を輸出することができなかった(p408)
■グリーンランドにノルウェー人が
到達したのは西暦980年ごろと
されています。
当時は中世温暖期と呼ばれ、
現在のグリーンランドと同程度か
あるいはわずかに暖かかったという。
1300年ごろから小氷河期と呼ばれる
寒冷期に入り、15世紀頭には
グリーンランドは歴史から消えるのです。
著者は、グリーンランドのノルウェー人
絶滅の理由は、寒冷化という変化に対し、
ヨーロッパ文化に固執し、
家畜を飼いつづけ、教会を維持し、
イヌイットの知恵を活用しなかった
ためではないか、と推測しています。
なぜなら、イヌイットは
小氷河期を生き抜いているからです。
・ノルウェー人たちが気候の比較的穏やかな時期にグリーンランドに入植したのは、幸運であり、不運でもあった。寒冷期に入ると家畜の数を維持するのがむずかしくなることなど予測しようがなかった。20世紀に入ってから、デンマーク人がヒツジとウシをグリーンランドに再導入したが、やはり失敗を免れず、ヒツジの頭数が多すぎて土壌侵食を引き起こし、ウシについては早々に飼育をあきらめた。現代グリーンランドは経済的に自立しておらず、デンマークからの対外援助と欧州連合からの漁業権料に大きく依存している(p548)
■本書を読んでわかるのは、
人間が増えていくなかで
必然的に自然を破壊するということ。
自然破壊のスピードと
自然の回復力が問題であり、
破壊が早ければそこは
砂漠になってしまう。
人間が死滅しないためには、
自然の再生力の範囲で
自然を活用していくこと
なのでしょう。
ダイアモンドさん、
良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・人間が入植するたび、大型動物の絶滅という波が起こった。・・・環境資源の濫用という罠からは、どんな人間も逃れられない(p31)
・乾燥した気候のもとでは、伐採された土地の樹木の再生率が低すぎて、伐採する率に追いつかない可能性が高い(p206)
・例えば、イースター島の住民たちは、島に残った最後の一本の木を切り倒すとき、どういう言葉を吐いたのだろう?(p55)
・過去の社会の多くは、食料不足が発生した際、気候の違う地域の余剰食糧を取り寄せるという"有事救済"の仕組みを持っていなかった・・・過去の社会では気候変動のリスクが大きかったと言うことができるだろう(p37)
・"黒人狩り"が1805年頃から始まり、1862年から1863年に最盛期を迎えた。イースター島史上最も苦難に満ちたこの時代には、20隻余りのペルー船がおよそ1500人(生存者の半数)の島民を連れ去り、競売にかけて、ペルーの鉱山における鳥糞石の採掘を始め、さまざまな雑役を強制した(p226)
・1549年から1578年に至る大半の歳月をユカタン半島で過ごした司教、ディエゴ・デ・ランダ・・・は、一方で史上屈指の悪しき文化破壊行為に打って出て、"異教信仰"粉砕の名分のもとに、マヤ文字で書かれた書物をすべて燃やしてしまった。その結果、マヤ文字の書物はわずか4点しか現存していない(p319)
・農民たちは、どのような階層社会でも、自分たちの必要ぶんだけでなく、ほかの消費者たちの必要も満たすだけの食料を供給しなければならない・・・効率性の高い農業が行われている現在のアメリカ合衆国では、農民は全人口のわずか2%を占めるのみで、農民ひとりが平均して125人のほかの人間に食糧を供給している(p328)
・メソアメリカ社会には金属器がなく、また、滑車などの装置も、車輪もなく、帆船もなく、荷役や耕耘(こううん)に使える大型の家畜もいなかった。あの壮大なマヤの神殿は、すべて石器と人力だけで建てられたのだ(p332)
・アイスランドはヨーロッパで最も生態学上の被害が大きかった国・・人間が居住を始めて以来、もともとこの島にあった樹木と植生のほとんどは破壊され、土壌の約半分が浸食によって海中に流入した・・・いくつかの広い区域が、今では生気を欠いた茶色い荒地となっている(p394)
・1500年以降、ようやくヨーロッパ人の入植者たちが北米大陸にふたたび到達した・・・銃や鉄器を装備した補給船団を毎年送り出して後押しした・・・イギリスやフランスがマサチューセッツ州、ヴァージニア州、カナダに築いた植民地では、最初の一年が経たないうちに、入植者の約半数が飢えと病気で命を落としている(p421)
▼引用は、この本からです
ジャレド・ダイアモンド、草思社
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1部 現代のモンタナ
第1章 モンタナの大空の下
第2部 過去の社会
第2章 イースターに黄昏が訪れるとき
第3章 最後に生き残った人々(ピトケアン島とヘンダーソン島)
第4章 古の人々(アナサジ族とその隣人たち)
第5章 マヤの崩壊
第6章 ヴァイキングの序曲と遁走曲
第7章 ノルウェー領グリーンランドの開花
第8章 ノルウェー領グリーンランドの終焉
著者経歴
ジャレド・ダイアモンド・・・1937年生まれ。アメリカの生物学者、ノンフィクション作家。ハーバード大学で生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修め、カルフォルニア大学ロサンゼルス校医学部生理学教授を経て、現在は同校地理学教授。
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