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「消された一家―北九州・連続監禁殺人事件」豊田 正義

2019/01/23公開 更新
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消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)


【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

 明るい人柄と巧みな話術で人を騙し、金をその家族から引き出し、虐待によって家族全員を奴隷にする。恐怖感から家族を支配し、家族同士を殺し合わせ、7人が殺され、解体された。こんな事件が九州で実際にあったのです。


 内縁の妻は、松永から電気ショックや暴力で虐待されながらも逆らえず、殺人の共犯となってしまいます。内縁の妻の父母もなぜか松永の言いなりとなり、お互いに殺し合い、死体を遺棄したというのです。内縁の夫からひどい暴力を受けた被害者であるはずの女性が、最終的に加害者となって殺人などの凶悪犯罪を犯したのです。なぜ彼女は逃げなかったのでしょうか。


・男の名は、松永 太。妻の名は、緒方純子。二人は、福岡県久留米市内の高校の同級生だった。卒業後に交際を始めて内縁の夫婦となり、詐欺事件を起こして指名手配されてからは、・・逃亡生活を送っていた(p4)


 主犯の松永太(まつなが ふとし)は、『宮崎』と名乗り、関係ない人には、物腰やわらかで、愛想が良く話術もうまく、女っぽい感じで人を引きつける雰囲気を持っていたという。しかし、いったん自分の手の内に取り込むと暴力を振るう。弱みを見つけると「証明書」を書かせ、それをネタに脅す。命令し、気に食わないと電気ショックを与えていたという。こうした方法で自分に関わった人間を支配し、詐欺行為をさせ、最後には家族同士で殺し合いをさせたのです。


 興味深いのは、松永の人を動かす手法でしょう。実際、暴力を振るうことはあったようです。殴り蹴り、髪の毛をつかんで引きずり回す。そして暴力を振るった後に「絶対にもうやらない」などと言うのは、ホストやヒモに似ています。ただ、多くの場合は、遠まわしな物言いをして『これはお金を作ってこいと言っているんだな』と、相手を誘導して、最終的な決断はかならず本人に下させるように配慮していたというのです。自分から強要したような証拠を残さず、責任を取らないようにしていたのです。例えば、逃亡しようと提案するときも、「自分らが捕まって犯罪者の子供になるくらいなら逃げたほうがいい」などと「子供のため」という理由で誘導しています。松永は逮捕された後も弁護士を介して「子供のために黙秘しろ」というメッセージを女性に届けていたというのです。


・バットで叩かれたか、もしくは腹に膝蹴りを受けたことで、純子は膵臓を痛め、のたうちまわって苦しんだ末に入院したときには、担当医が純子の身体に多数のあざがあることを不審に思って警察に通報し・・任意同行を求め・・しかし数時間後、松永はなに喰わぬ顔で戻ってきた(p76)


 自分には考えられませんが、学校でいじめがなくならず、職場でパワハラがなくならないのも同じ構造なのかもしれないと思いました。さすがに直接暴力や電気ショックは使いませんが、集団の言葉や態度で相手を精神的に追い詰め、自殺させる。犯罪として立件させないという点では、この本の犯人よりも狡猾なのかもしれません。豊田さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・松永が用意したアパートに住み始めた彼女は、その直後から松永の暴力の標的となり、三人の子供の教育費などを理由に親や前夫へ金を無心するよう強要され、1180万円を松永に貢いだ。ついにその女性は、大分県の別府湾に飛び込み自殺をしてしまう(p84)


・松永は『あいつは口を割りそうなので、処分せんといかん』と緒方に言っていました・・『口を割る』とは、緒方の家族が殺されたという秘密をばらすことだと思いました。『処分する』とは、『殺す』という意味だと思いました。私は『死体を解体するのを手伝わされる。嫌だ、嫌だ』と思いました(p236)


消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)
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豊田 正義
新潮社
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【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

第1章 十七歳の少女
第2章 松永太と緒方純子
第3章 一人目
第4章 緒方一家
第5章 二人、三人、四人目
第6章 五人、六人、七人目
第7章 松永太の話
第8章 消される二人



著者紹介

 豊田正義(とよた まさよし)・・・1966(昭和41)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、フリーのノンフィクションライターとなる。犯罪事件から家族の問題まで取材対象は幅広く、人物評伝も手がけている


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