人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」伊藤 公一朗

2018/03/30公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

 シカゴ大学助教授の伊藤さんが教えるビッグデータの解析方法です。伊藤さんはいきなり、世の中は怪しいデータ分析結果で溢れていると断言しています。


 正しいデータ分析を行うには、同じ環境が前提であり一部条件が違うものを比較することが必須です。例えば、ネット広告ではABテストといってランダムに表示した広告A、Bを比較して、良い方を選択しています。


・最良の解決方法は、ランダム化比較試験と呼ばれる方法です(p66)


 面白いデータ分析の例としては、日本車の重量に応じた燃費規制です。この規制は車両の重量に応じて規制値である「最大の燃費」が決まるのですが、階段状になっているのが特徴です。そのため、あとちょっとで燃費規制をクリアできるときに燃費を良くするのか、重量を重くするのかメーカーは悩むことになります。


 燃費改善にはコストがかかりますので、重量をちょっと増やせば規制をクリアできるとすれば、メーカーはそうするのでしょう。そして重量が増えたことによる安全性が悪化したコストだけでも、年間1000億円だというのです。規制のメリットとデメリットを比較すれば、適切な規制に変更できるのではないか、ということです。


・(日本の)車両重量に基づく燃費規制政策・・その結果、市場における約10%の車に対して、平均的に110kgの重量増加が起こった・・安全性に関する社会的費用の損失だけでも、日本の自動車市場全体で年間約1000億円の社会的損失になっている(p165)


 ネットの時代とは、事象を数字で測定できる時代なのだと思いました。もっと興味深いデータ分析結果が出てくるのを期待しましょう。伊藤 さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・税込価格を表示すると、税抜き価格を表示した場合に比較して平均的に8%売り上げが下がる(p216)


・ウーバーの行っている価格変更ルール・・価格が1.2倍から1.3倍へと上がると、消費率はおよそ0.58から0.565へと落ちる(p228)


・介入の波及効果・・たとえ自分自身が介入を受けなくとも、介入を受けて説明会に行こうと考えた同僚に感化されて(もしくは誘われて)説明会へ足を運んだのでは、という解釈です(p256)


データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)
データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)
posted with Amazonアソシエイト at 18.03.29
伊藤 公一朗
光文社 (2017-04-18)
売り上げランキング: 1,500


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1章 なぜデータから因果関係を導くのは難しいのか
第2章 現実の世界で「実際に実験をしてしまう」――ランダム化比較試験(RCT)
第3章 「境界線」を賢く使うRDデザイン
第4章 「階段状の変化」を賢く使う集積分析
第5章 「複数期間のデータ」を生かすパネル・データ分析
第6章 実践編:データ分析をビジネスや政策形成に生かすためには?
第7章 上級編:データ分析の不完全性や限界を知る
第8章 さらに学びたい方のために:参考図書の紹介



著者経歴

 伊藤公一朗(いとう こういちろう)・・・経済学者。シカゴ大学公共政策大学院ハリススクール助教授。1982年宮城県生まれ。京都大学経済学部卒、カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了(Ph.D.)。スタンフォード大学経済政策研究所研究員、ボストン大学ビジネススクール助教授を経て、2015年より現職。全米経済研究所(NBER)研究員、経済産業研究所(RIETI)研究員を兼務。専門は環境エネルギー経済学、産業組織論、応用計量経済学。シカゴ大学では、環境政策・エネルギー政策の実証研究を行う傍ら、データ分析の理論と応用について大学院生向けの講義を行う


データ分析関連書籍

FACTFULNESS」ハンス・ロスリング
日産で学んだ 世界で活躍するためのデータ分析の教科書」柏木 吉基
「データ分析の力 因果関係に迫る思考法」伊藤 公一朗
「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法」中室牧子


この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
blogranking.png

人気ブログランキングへ


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ第3位
にほんブログ村

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本



同じカテゴリーの書籍: