「2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ!」ジャック・アタリ
2017/09/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(71点)
要約と感想レビュー
ソ連の崩壊、金融危機、テロの脅威を予測したといわれる、フランス人アタリ氏の一冊です。アタリ氏の考え方は、最悪を想定して、それに準備しておくこと。起こりそうなことは起こるのです。頭の良い人は、準備しておくのですね。
例えば、国の借金が増大しています。また、債務の一部を中央銀行が引き受けており、その割合はアメリカが16%、イギリスが24%、日本が22%だという。巨額の公的債務により、破綻した国もありますので、日本を含めて、どこかの国で借金の利子を支払えなくなる可能性があるとしています。仮に先進国がデフォルトすれば、世界中にその金融的な影響が波及する可能性があります。その場合にどうするのか、事前に頭の体操をしておく必要があるのでしょう。
・最悪の事態を予測することこそが、最悪を回避する最善の手段なのだ(p3)
2017年の本なので、予測が当たっているのは、戦争がロボットやドローンを利用したものになるということです。著者の予想どおり、兵士がドローンやロボットを遠隔操作して戦争する時代となっています。
予測が当たっているかどうか微妙なのは、EUの問題でしょう。英国のブレグジットが2016年に決定され、ヨーロッパの若年層の長期失業率がギリシャが60%、スペインが50%、イタリアが40%(2013年)だったことを引用し、単一市場としてのEUが失敗する可能性があることを指摘しています。また、中国が北朝鮮を支援するなかで、北朝鮮がアメリカに対して本格的な核攻撃を開始するかもしれないとしています。これは不気味ですね。
当たっていないところとしては、人類はこれまで以上にノマドになり、途上国から途上国への移民が急増するという指摘です。確かに人類がノマドとなって往来が増えましたが、そのために感染症のパンデミックが発生してしまったのです。ロシアや中国との西欧諸国の対立もあり、ノマドとなるのか、ブロック経済となるのか、不透明と言えるのでしょう。
この本のように最悪を想定しても、その想定のほとんどは起こりません。しかし、保険をかけておくことで、本当の最悪の状況だけは避けることができるのでしょう。戦争が起きるかもしれない。財政破綻するかもしれない。それでも保険をかけることはできるのです。アタリさん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・21世紀は陰鬱な時代になるだろう。マネーでしか価値を判断しないような社会では、今後、ほとんどすべてのものが売買の対象になる(p13)
・世界では企業の租税回避によって、国の税収は年間2400億ドル失われているという。これは世界の法人税収の4~10%に相当する(p75)
・学校や法律の教科書など、いたるところに、利他主義、寛容な精神、誠実さを養うための学習を取り入れろ(p197)
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【私の評価】★★★☆☆(71点)
目次
第一章 憤懣が世界を覆い尽くす
第二章 解説
第三章 九九%が激怒する
第四章 明るい未来
著者経歴
ジャック・アタリ(Jacques Attali)・・・1943年アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業、1981年フランソワ・ミッテラン仏大統領顧問、1991年欧州復興銀行の初代総裁などの要職を歴任。政治・経済・文化に精通し、ソ連の崩壊、金融危機、テロの脅威、ドナルド・トランプ米大統領の誕生などを的中させた。
未来予測関係書籍
「ひろゆきのシン・未来予測」西村博之
「2040年の未来予測」成毛 眞
「2030年ジャック・アタリの未来予測」ジャック・アタリ
「新・100年予測―ヨーロッパ炎上」ジョージ・フリードマン
「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」河合 雅司
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