「100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図」ジョージ フリードマン
2015/10/09公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
ロシアと米国との冷戦
チェスや将棋はそれなりのレベル同士であれば、選択肢はごく限られたものになります。フリードマンさんは、国家の選択肢も同じようにごく限られたものになるのだと説明しています。国家の置かれた位置、経済、国民性を分析するのが地政学であり、そこから未来が見えてくるのです。
まず、アメリカは戦争を続けています。アメリカは軍事力に恐怖によって世界を支配しているのです。ローマ帝国が国の防衛を目指し、軍事力を強くしていくうちに帝国になったように、アメリカも軍事力を強化していく中で帝国となったのです。
フリードマンさんの予測する未来は、2010年代の中国分裂と2020年代のロシアの崩壊です。(2022年の時点で中国は分裂しておらず、予測は外れています)中国は、経済が不調となった段階で、政府が弱体化し、分裂する。また、ロシアも米国と冷戦に近い状態となり、ソ連崩壊と同じ道をたどると予想しています。
ロシアは軍事力を回復しなくてはならない。金持ちで弱いというのは、国家として非常にまずい状態だ。・・富を守り、自らを取り巻く国際環境を規定するだけの力を持たなくてはならない(p161)
勢力を伸ばすのは日本とトルコ
そうした情勢の中で、勢力を伸ばしてくるのが、日本とトルコというのです。そして、2040年代には米国の同盟国として勢力を伸ばした日本とトルコがアメリカと対立するようになるというのです。
私には日本とアメリカの対立は想像できませんが、トルコとアメリカはクルド人の扱いで対立しています。トルコも対立は望みませんが、トルコ内のクルド人が独立するという恐怖に駆られてやむなくアメリカと対立しているわけです。アメリカにとってはささやかな要求が、トルコにとっては自らの存続を脅かす要求に感じられてしまうというのです。
2020年代のロシアの崩壊と中国の分裂・・その機会を利用して、勢力を伸ばしていくのが、アメリカと同盟を組んだ、日本、トルコ、ポーランドである(p232)
ロシアとのウクライナの対立
2009年出版された本ですが、中国の経済の後退と治安の混乱という予想は残念ながらはずれています。しかし、ロシアとのウクライナでの戦いは予想どおりとなっています。
もう少し、様子を観察していきたいと思います。フリードマンさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・中国は本質的に不安定なのだ。外の世界に対して国境を開放するたびに、沿岸部は豊かになるが、内陸部に住む大半の国民は貧困のままに置かれる。このことが緊張、対立、そして不安定をもたらす(p17)
・アメリカとて、日本ともトルコとも戦争をするつもりはない。アメリカの狙いは、ただ両国を締め付けて活力を損ない、アメリカの要求に従順させることにある(p257)
・アメリカは学びつつあった。焦って戦いに突入すれば、確かに衝動はいくらか満たされる。だが戦いが起こらないようにーあるいは他国同士で戦わせるようにー状況をとりしきることの方が、実は解決策としてははるかに優れているのだ(p321)
▼引用は下記の書籍からです。
早川書房
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【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
アメリカの時代とは何か
アメリカの時代の幕開け
地震―アメリカの対テロ戦争
人口、コンピュータ、そして文化戦争
新しい断層線
2020年の中国―張り子の虎
2020年のロシア―再戦
アメリカの力と2030年の危機
新世界の勃興
2040年代―戦争への序曲
戦争準備
世界戦争―あるシナリオ
2060年代―黄金の10年間
2080年―アメリカ、メキシコ、そして世界の中心を目指す闘い
著者経歴
ジョージ・フリードマン(George Friedman )・・・1949年、ハンガリー生まれ。ニューヨーク市立大学卒業後、コーネル大学で政治学の博士号を取得。ルイジアナ州立大学地政学研究センター所長などを経て、1996年に世界的インテリジェンス企業ストラトフォーを創設、チェアマンを務める。同社は、政治、経済、安全保障にかかわる独自の情報を、アメリカほか各国の政府機関、世界中の一流企業に提供し、「影のCIA」の異名をもつ。
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