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「続・100年予測」ジョージ・フリードマン

2015/10/26公開 更新
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続・100年予測 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 「100年予測」続編として、2014年から今後10年を予測する一冊です。まず、驚くのは、ヨーロッパでは、復活したロシアとドイツが接近するであろうと予測していることです。EUのドイツがロシアの天然ガスを輸入することで近づいているのは確かなのです。


 ただし、ドイツとロシアがいくら接近したとしても、戦争が起こらないということにはなりません。第一次世界大戦前には、イギリスとヨーロッパの経済の相互依存度が非常に高いことから、戦争は起こり得ないと考える人が多かったのですが、実際には二度の世界大戦が起きています。


 ロシア・ドイツ接近に対しアメリカが採るべき戦略は、気づかれないようにロシアとヨーロッパの接近を防ぐこと。そのために、イギリス、トルコを含むヨーロッパ諸国と二国間関係を拡大し、結びつきを強化するのです。


・ドイツが大量に必要とする天然ガスをロシアはふんだんにもっており、ドイツはロシアが必要とする技術と専門知識には事欠かない・・両国がほかのどの国と結んでいる関係と少なくとも同じくらい重要で、活力に満ちた関係になるだろう(p236)


 日本周辺について、日本と中国が焦点となります。中国については、基本的に脆弱な国であると分析しています。つまり、自由解放すれば不安定となり、安定化させるためには鎖国と統制が必要となり、経済成長は望めない国なのです。


 日本については、これだけの経済規模の国は、いつか必ず利益を自衛する軍事力を持つようになることを予想しています。アメリカのとるべき戦略は、日本のアメリカへの依存状態をできるかぎり長く引き延ばすこととしています。


 中国の経済は衰退していく一方で、自己主張しはじめる日本をなだめながら、韓国、オーストラリア等の周辺諸国と強力関係を構築しておくとしています。アメリカの各地域に強国を作らないように勢力を均衡させ、戦わせ、疲弊させるという戦略だと理解しました。ただ、思ったより中国が強く出てきているのが、予想外なのかもしれません。それとも、本当に中国は弱い国であり、自滅する運命にあるのでしょうか。


・日本が、輸入頼みゆえの本質的な不安と、アメリカの予測不能性に追いつめられて、今後はアメリカへの依存と露出を軽減しようとするのは間違いない。日本と同様中国も、アメリカと距離を置くことができない。中国がアメリカに依存しているのは、原材料の輸送というよりは、中国製品の輸出先としてである(p256)


 国際社会では口先だけでは普遍的権利を追求することはできない。力が伴わなくてはならないと主張しています。道徳的に正しくても、アメリカが滅亡されれば、道徳の意味はなくなるのです。そして、アメリカ海軍を強化し、宇宙部隊がこれをサポートすることを提案しています。今の時代は、偵察衛星が対艦ミサイルを誘導するためです。


 マキャヴェッリの本を読んでいるように感じました。フリードマンさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

テロリズムは、弱さから生まれる。それは敵の心理をゆさぶり、テロリストをじっさいより強力に見せようとする行動なのだ。テロリストは、重大な脅威ではないが、そのように扱われることをめざしている。(p118)


・徹底的に先住民を強制退去させたアメリカ人が、パレスチナの土地を奪い在来民族を虐げたといって、イスラエルを道徳的に糾弾するのは難しい(p141)


・好かれ尊敬されることは―好かれることを最終目標と誤解しないかぎり―それなりの価値がある。アフリカに莫大な援助を与えることは、アメリカの評価を高めるのに役立つ・・(p139)


▼引用は下記からです。
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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

序章 アメリカの均衡をとり戻す
第1章 意図せざる帝国
第2章 共和国、帝国、そしてマキャヴェリ流の大統領
第3章 金融危機とよみがえった国家
第4章 勢力均衡を探る
第5章 テロの罠
第6章 方針の見直し―イスラエルの場合
第7章 戦略転換―アメリカ、イラン、そして中東
第8章 ロシアの復活
第9章 ヨーロッパ―歴史への帰還
第10章 西太平洋に向き合う
第11章 安泰なアメリカ大陸
第12章 アフリカ―放っておくべき場所
第13章 技術と人口の不均衡
第14章 帝国、共和国、そしてこれからの10年



著者経歴

 ジョージ・フリードマン(George Friedman )・・・1949年、ハンガリー生まれ。ニューヨーク市立大学卒業後、コーネル大学で政治学の博士号を取得。ルイジアナ州立大学地政学研究センター所長などを経て、1996年に世界的インテリジェンス企業ストラトフォーを創設、チェアマンを務める。同社は、政治、経済、安全保障にかかわる独自の情報を、アメリカほか各国の政府機関、世界中の一流企業に提供し、「影のCIA」の異名をもつ。


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