「商店街再生の罠:売りたいモノから、顧客がしたいコトへ」久繁 哲之介
2014/07/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
地域再生プランナーとして、シャッター商店街とお役所を見てきた著者の率直な感想です。そこには、やる気のない商店街と、やる気のない公務員がいました。商店街は、面倒くさいことはしたくないが、補助金が欲しい。公務員は、自分では商店街を使わないのに、商店街を元気にする企画を考えている。これでは成果が出るはずもないのです。
例えば、商店主が自治体に次の支援を要求したとしても、20%の意欲ある商店主で取組を始めてしまい、個店に意欲・工夫がないまま、いきなり「商店街の個店が平等に結果・利益を得られるような取組」だけを実施してしまうのです。一方の自治体は、予算を獲得したいだけだったり、役所の実績づくりをしたいだけなのです。
・公務員が机上で作文した論理的には美しい計画書が、全く実現しない理由・・・自分が利用したくないものを、市民が利用するはずがない・・だから、成功事例の表面的な模倣しか頭に浮かばない(p132)
現状を要約すると、公務員は評判になっている事業を視察して、同じような事業を計画し、予算を取ってくる。商店街はそれに乗っかり、他県で成功した観光客向けの施設ができる。しかし、周囲の商店街はあいかわらずシャッターが下りている。
そもそも、観光客向けの事業ですから、地元の顧客は戻らないのです。計画した公務員も商店街も、その結果どうなるか真剣に考えているわけではなく、考えるだけの経験や能力があるわけでもなく、成果に責任を持っているわけでもないのです。
・大分県豊後高田市の「昭和の町」・・・昭和ロマン蔵の周辺と、食べ歩きができる商品を扱う店には、観光客が少しは居るのですが、そこから離れた場所は「シャッター商店街」(p21)
シャッター商店街の原因は、事業用宅地の相続税が安いためという結論が印象的でした。つまり、事業用宅地(店舗兼住宅)を事業継承する場合の相続税は、事業用宅地400m2までが評価額を20%に減額して優遇されているからなのです。
そして、著者がお勧めするのは、まず自分で現場を見て、考えること。施設ではなく、人のつながりで人を集客すること。仮に「人の繋がり、コミュニティの強さ」を活かした顧客づくりができるのなら、それを支えるために補助金があってもいいという考え方です。
こんな補助金や公共事業はいらない!という著者の叫びが聞こえるような一冊でした。久繁 さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・東京都江東区の亀戸香取勝運商店街・・・レトロ化の事業総額は約2億6000万円、うち8割(2億1000万円)が補助金・・1店あたりの補助金額は約750万円になります・・日曜日が定休日の店は約4割・・よその観光地で成功したと言われる事例の表面だけを安易に模倣したのでしょう(p47)
・多くの自治体職員や議員は、「ググる」程度の事前準備すらしないで公費で視察に何回も行きます。そして、視察に行っては「ググれば調べられる程度の表層的な質問」をして、現地案内人から「非常識な人(能力と意欲のない人)」と呆れられている(p146)
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【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
第1章 レトロ商店街の罠
第2章 キャラクター商店街の罠
第3章 B級グルメ商店街の罠
第4章 商店街を利用しない公務員
第5章 意欲が低い商店主
第6章 再生戦略1 「シェア」で、雇用・起業を創出
第7章 再生戦略2 「地域経済循環率」を高めて、第一次産業と共生
第8章 再生戦略3 趣味を媒介に「地域コミュニティ」を育成
著者経歴
久繁哲之介(ひさしげ てつのすけ)・・・地域再生プランナー。1962年生まれ。早稲田大学卒業後9年弱、IBM東京本社でマーケティングを担当しながら、休日の半分位は広島駅前の商店街で実家が営む老舗飲食店の経営補佐を行う。NPO情報ステーションなど若者と協働して、地域再生や商店再生を実践している
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