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「競わない地方創生 人口急減の真実」久繁 哲之介

2016/03/05公開 更新
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競わない地方創生 ―人口急減の真実―


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー

 地方創生が、うまくいっていないらしい。地方自治体は、膨大なお金と時間を使って地方創生に力を入れています。実は、そうした施策が上手くいっている例は、あまりないのです。その理由は、いくらお金があってもシロウトがモノマネで計画したとして、実ビジネスで成功するのは難しいからです。


 つまりお役所仕事の延長では、永続的な商売はおぼつかないということです。「2位では、ダメなんですか?」と発言した政治家がいましたが、著者に言わせれば、2位以下は選ばれないからダメなのです。起業マインドとお役所思考は正反対なのですから、これはどうしようもないのです。


・「計画策定に、無駄な金と時間を浪費する」こと、「やたら大きな事業ばかりやりたがる」こと、「他者の真似ばかりする」こと、は役所3悪である(p42)


 そうした失敗が続くと、その矛先は地方自治体に向かいます。お役所仕事をしながら、膨大な財政赤字を出したうえで、一流企業と同じ給料をもらっているのが地方自治体なのです。地方敗れて、お役所あり。


 いずれ財政赤字が続けば、地方公務員の給与レベルも問題となってくるのでしょう。例えば、沖縄県は2006年に外部監査で「県職員の給料を半減せよ」と提言されました。これは2004年度の県内給与所得者の平均が約340万円なのに、県職員の平均給与は約722万円だったからです。


・ITエンジニアの67%は、月に20時間以上、自学している。地方公務員の62%が、自学を全くしない・・地方公務員の平均年収は728万円、ITエンジニアの平均年収は412万円(p148)


 著者の地方創生は、お役所に頼らずにマーケティングすること。補助金に頼らずに、オリジナルの商品を全国に売っていくのです。まさに王道だと思いました。補助金頼りのビジネスは、永続しないのです。東京にある箱物や工場(仕事)を、地方へ補助金の力で強引に移転させても、その過半は数年後に撤退しているのが現状なのです。


 久繁さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・「学歴志向が高い若者」が、大都市に流出する。彼らは出産・子育てより、自分の仕事・キャリアを大切にする。この結果、東京など大都市の出生率は低くなる(p225)


・女性管理職者数の数値目標を導入するとどうなるか?・・優秀ではない女性を管理職に登用することが目的化して、重要でない管理職ポストを新設しなければならない・・官僚的な体質の役所や大企業で既に起きている(p240)


・物語を売る店員は売れる・・「お土産話に、いかがですか」(p77)


・自社商品ロゴを付けて、他社に売ってもらう・・「雪塩」という食用の塩は・・・「雪塩ちんすこう」を発売する・・「ポテトチップス雪塩と胡椒」味を発売・・「雪塩ミルキーモンブラン」というスイーツ(p116)


競わない地方創生 ―人口急減の真実―
競わない地方創生 ―人口急減の真実―
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久繁 哲之介
時事通信社
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【私の評価】★★★☆☆(73点)


目次

第1章 人口減少対策をビジネスの基本から導く
第2章 弱者(地方都市、中小企業)の経営は、強者とは正反対
第3章 弱者は競争するな。自分が1番になれる軸を創る
第4章 1番になる最良の方法は、協働という「働き方」
第5章 学習しない高給な公務員が、地方を滅ぼす
第6章 顧客価値は顧客目線な遊び心から創造される
第7章 現象でなく原因を考えると、人口急減の理由が分かる



著者経歴

 久繁哲之介(ひさしげ てつのすけ)・・・地域再生プランナー。1962年生まれ。早稲田大学卒業後9年弱、IBM東京本社でマーケティングを担当しながら、休日の半分位は広島駅前の商店街で実家が営む老舗飲食店の経営補佐を行う。NPO情報ステーションなど若者と協働して、地域再生や商店再生を実践している


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