「工学部ヒラノ教授」今野 浩

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工学部ヒラノ教授

【私の評価】★★★☆☆(76点)


■東京工業大学、中央大学で工学部教授を
 経験した今野教授の大学の実態解説です。


 基本的に工学部は、マジメなのでしょう。


 頼まれたら断らないから、
 授業、実験、試験に学内の雑用もある。
 それ以外の時間で、自分の研究をやるのです。


 雑用の中で成果を出すためには、
 雑用を少なくするか、
 人に手伝ってもらうしかないのです。


・私立大学の場合は、1人の教官が面倒を見る学生数は
 国立の約3倍、講義負担も2倍以上である。国際水準の
 研究者を目指す者にとって重要な事は、研究時間が
 確保されていることである。週に6コマの講義を受け持ち、
 10人以上の卒研生の面倒を見ていたら、研究に割くことが
 できる時間は週末だけになってしまう(p21)


■大学運営では、1991年の大綱化で一般教育
 (人文、社会、自然、外国語、保健体育)が
 廃止されたこと。


 そして大学院重点化による
 博士の大量生産が大変換であったようです。


 「人間科学」とか「国際コミュニケーション」とか
 変な学科が増えたなあ・・・と思っていましたが、
 そのような背景があったのですね。


 学生のためというよりも、
 文部省の理想と大学の現実との
 連立方程式だったのでしょう。


・大綱化による教養教育の空洞化。大学院重点化による
 学部教育の軽視と、オーバードクターの大発生。・・・
 このような政策を推し進めた文部省と、それを受け入れた
 大学は、将来ある若者にひどいことをしたものである(p93)


■大学の教授とは、民間企業からはわかりにくい
 世界に住んでいると思います。


 ただ、給料は安くても研究が好きだったり、
 学生を教えるのが好きであれば、
 面白い仕事なのかもしれません。


 今野さん、
 良い本をありがとうございました。


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■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・[工学部の教え]
 第1条 決められた時間に遅れないこと(納期を守ること)
 第2条 一流の専門家になって、仲間たちの信頼を・・・
 第3条 専門以外のことには、軽々に口出ししないこと
 第4条 仲間から頼まれたことは・・・断らないこと
 第5条 他人の話は最後まで聞くこと
 第6条 学生や仲間をけなさないこと
 第7条 拙速を旨とすべきこと(p98)


・日本の工学部では、たとえ新設でなくても、100%研究・
 教育に専念できるのは(思いやりのある教授のもとで)
 助手として過ごす数年間だけで、助教授に昇進した途端に
 大量の雑用が降ってくる(p32)


・技官と違って助手は教官(研究者)だから、その人の研究に
 直結しない仕事を無理にやらせることはできない。一方、
 修士・博士論文を書かなくてはならない学生は、タダで何でも
 やってくれる有難い人である(p91)


・講座制の大学では、教授は一国一城の主であって、
 講座の中では絶対的権力を持っている。
 人事は教授の専管事項であり、
 助教授は教授から相談を受けることはあっても、
 最終判断を下すのは教授である。(p35)


・文部省は・・・1991年に「大学院重点化」構想をぶち上げ・・・
 大学院の学生定員を大増員した・・
 2万人の博士浪人が発生したのは、この政策のおかげである(p93)


・「国際A級大学」を目指した筑波大学の計算機科学科
 (情報学類)が、ありきたりな学科になってしまったのは、
 良くも悪くも"民主的な"組織だったためである。
 (ヘボ)船頭が多かったため、船が山に登ってしまった(p33)


・博士号も研究業績もない文部省の天下り教授は、
 いずれどこかに転出すると見られていたが、
 文部省は一度手に入れた権益を放すはずがない。
 この人が転出すれば、また別のノンキャリ官僚を
 押し込んで来るだろう(p36)


・「すごいですね。科研費を取る秘訣を教えて頂けませんか」・・
 すでにやってしまった研究を、あたかもこれからやるように
 書けばいいんだよ。結果が分かっていれば、どうとでも書けるよね(p68)


・工学部平(ヒラ)教授が年に2~3回海外出張するのは、
 自分の存在をアピールするため、超一流の研究者の
 アドバイスを受けるため、そして一流研究者の
 アイディアを盗むためである(p79)


・「研究活動」なるものを研究している「研究研究家」
 (Researcher on research)によれば、2つの研究テーマを
 持っているときに、研究者の生産性が最も高まるということだが、
 ヒラノ教授の場合にもその法則が当てはまった(p83)


・100%完璧を期すと100時間かかるが、98%なら50時間で
 済むような場合には、まず98%を目指し、
 余った時間で残り2%に取り組むことだ(p100)


工学部ヒラノ教授
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【私の評価】★★★☆☆(76点)


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■目次

1 工学部大教授と秘書
2 大教授と秘書:海外編
3 荒野の教育・雑務マシーン
4 大岡山教授と六本木秘書
5 2人目の秘書
6 吸い上げられた秘書ポスト
7 機々械々な人たち
8 看板教授と進駐軍事務官
9 3人目と4人目の秘書
10 "利益相反"本部長
11 ギネス・コンビ
12 名誉教授というゾンビ


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