「専守防衛─日本を支配する幻想」清谷 信一
2012/12/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
2010年9月、尖閣諸島で中国漁船衝突事件が発生しました。この本はその前の2010年3月に、外国による離島への侵略を予想しているのです。竹島と同じことが、他の島でもおきる可能性があるということなのでしょう。
著者が考えるシナリオは、機関銃やRPG-7などで武装した海外の「民間人有志」が、日本の離島領土に上陸して、領土宣言を行い、「民間人保護」の名目で、警察や準軍隊組織が上陸して、なし崩し的に占領するパターンです。
・仮に中国がチベットを侵略したように台湾進攻を行ったとしよう。その場合、専守防衛を堅持するのであれば、中国の侵略がいかに非道なものであっても介入はできない(p79)
日本における平和主義者の主張は、核兵器を持たない、武器を持たない、軍隊を持たないというものです。一見、正しいように見えます。しかし、日本以外の人がそれを聞いたら、笑うでしょう。危険地帯で安全を確保するためには、できるだけ無防備であるのがいい、ということと同じだからです。
そのため軍隊ではない自衛隊は、専守防衛の名のもとに実質的な攻撃を受けて国民に被害が出てからでないと反撃できないことになっています。これは軍事的には、負けるための制約となっているのです。うがった見方をすれば、他国の協力者による情報工作が成功しているということなのでしょう。
・防衛力については、近隣諸国に脅威を与えないために、必要最小限とする方針に変わりはない。これは一見もっとも「平和的」に見えるが、実は戦争を誘発する可能性が高い選択だ・・・敵は勝てると思って戦争を仕掛けてくる(p76)
見える人には、次に起こることは見えているのでしょう。事がおこってから対応するのではなく、事前に対応していただきたいものですね。
清谷さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・近年、チベットから亡命しようとする非武装の人間を中国の国境警備隊が後ろから打ち殺す映像が暴露され世界中に流れたが、これがこの国の本性である(p104)
・英国は現在、ミサイル原潜四隻(発射機合計64基)と米国製のトライデントSLBM(射程約12000キロ)約200発の戦略核兵器を保有している。これらは2014年に更新時期を迎え、その更新には250億ポンド(約五兆5000億円)以上かかると予想されている(p150)
・国連安保理常任理事国はすべて核保有国である・・・核兵器と空母がステイタス・シンボルである・・このような意識は、現代の日本人には理解できないだろうが、世界には日本人を理解できないメンタリティの人の方が多い(p144)
・普通の軍隊にある情報という兵科が自衛隊にはない。陸自には数年後に情報科が設けられることにはなっているが。この一点からもいかに自衛隊が情報を軽視しているかわかるだろう(p86)
▼引用は下記の書籍からです。
祥伝社
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【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
第一章 専守防衛と「平和憲法」
第二章 シビリアン・コントロールのない国
第三章 日本の防衛は隙だらけ
第四章 冷戦は終わっていない!
第五章 日米同盟は信用できるか
第六章 水際の防衛
著者経歴
清谷信一(キヨタニシンイチ)・・・1962年生まれ。ジャーナリスト。広告業界を経て、1990年に一年間ロンドン遊学後、ライターとなる。軍事のみならずサブカルチャー、国際関係など硬軟併せたサブジェクトも扱う。
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