【書評】「農!黄金のスモールビジネス―すごい経営 余裕の黒字!」杉山 経昌
2012/10/29公開 更新

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【私の評価】★★★★★(96点)
要約と感想レビュー
ぶっとびのスモール農業
企業経営の常識を農業に適用した杉山さんの一冊です。杉山さんのお勧めは、農業でのスモールビジネスです。
つまり、自分のできる範囲で、より価値のある製品を付加価値をつけて売るということ。著者の場合は「ぶどう」を農協を通さず、観光農園としての直売と「道の駅」で販売しています。
ただし、現地宮崎では農協の「全量共販」、つまり全部農協を通して販売しないと村八分にされるという。一個でも隠れて市場で販売したら全部締め出されます。著者は日本はまだ安土桃山時代ではないか?と表現しています。
私の場合、直売や「道の駅」での販売依存が高い。そこでは、農産物を「外観」ではなく「心」で売ることができる。(p29)
何を栽培して売ればいいのか
では、何を栽培して売ればいいのでしょうか?売る商品を選ぶには、労働あたりの収益性を基準とします。つまり、働いた1時間あたり、どれだけの利益を上げることができるのかということ。必然的に、米は脱落し、杉山さんはぶどうを栽培しているのです。
著者の「農業経営管理基準」では時間あたりの収益性が「2000円/時間」以上、労働需要を「30時間/週・人・年平均」以下とすることです。だから、ぶどうを売る場合にも、直売を基本としています。
売り方は、ぶどう狩りに来たお客さまの行動を観察します。ぶどう狩りに来たお客さまは、よいものはプレゼント用に購入。見た目が悪いものは自分用。ジャムやシャーベットの作り方をレシピをつけて教えてあげると、売り物にならないぶどうも加工用ぶどうとして買ってくれる。まったくムダがないのです。
観光農園は楽しい!・・・データを収集していた。
・どのような媒体で私の観光農園の存在を知ったか?
・なぜほかの観光農園に行かずに私のところを選択したか?
・一人当たり何キログラム狩るか?・・(p123)
農協を通していては、儲からない
結論としては、農協を通していては、儲からないということです。ただし、農協を通さなければ、農協八分にされます。しかし、それでも、自分で自分の商品を付加価値をつけて売ることが、利益につながるのでしょう。
著者は「農協への共販」というのは、100円ショップの品物をみんなでつくろうという論理と表現しています。経営論から言えば、安売りしてはいけない!のです。いまの価格の五割増しで売ってみよう!というのが著者の考えなのです。
これは農業というよりも、経営書だと思いました。古い業界にこそチャンスがあるということなのかもしれません。杉山さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・その昔、金柑を持ち込んだら「仕方がない、売ってやるよ」と言われたことがある。「ありがとうございます。がんばって高く売らせていただきます」でしょう!・・JAという組織の文化の問題なのである(p67)
・稼働率が低く、価格が高くて壊れやすい機械がやたらたくさん必要で、それが日本のコメ作りを成り立たなくしているのだ(p48)
・私の場合は78ページのような「経営戦略」を立てた・・・戦略1 売り上げ目標は小さく 戦術 利益率の目標を高く(p79)
・自分たちの食べていける最小限度の面積で栽培し、丁寧に収穫して、丁寧に販売する。そうすることで、作業にもムリがないし、すべての作物にちゃんと目が行き届く(p82)
・新規就農希望者にまず最初に聞く質問は、「パートナーが賛成してくれますか?」・・・二つ目に聞く質問は「パソコンは使えますか?」(p132)
【私の評価】★★★★★(96点)
目次
1 まずは価値観の転換からはじまる
2 スギヤマ式スモールビジネスのコツ
3 人生で大切なことは農で学んだ
著者経歴
杉山 経昌(すぎやま つねまさ)・・・1938年(昭和13年)、東京都に生まれる。5歳のときに疎開して千葉県で成長し、千葉大学文理学部化学科を卒業。通信機器メーカー(研究・開発)12年と日本モトローラ半導体事業(営業)16年、本部営業統括本部長を経験したのち、宮崎県綾町で農業を始める。果樹100アール、畑30アールの「専業」農家。
農業関連書籍
「農協の闇(くらやみ)」窪田 新之助
「バターが買えない不都合な真実」山下 一仁
「農家はもっと減っていい 農業の「常識」はウソだらけ」久松 達央
「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」浅川 芳裕
「農!黄金のスモールビジネス―すごい経営 余裕の黒字!」杉山 経昌
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