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「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」浅川 芳裕

2010/04/07公開 更新
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日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)


【私の評価】★★★★★(96点)


要約と感想レビュー

■国内農業保護政策を進める農水省に対し、
 日本の農業は保護なしでやっていける。


 むしろ、保護政策により、真面目な農家が
 困っている
と主張する一冊です。


 つまり、食料安全保障という名のもとに
 農林水産省の減反政策、農業の保護政策は
 日本のためになっていないという。


・長年、生産調整をさせられた挙げ句、残った面積で昨年は資料米、来年からは米粉を作らないといけなくなった。これでは注文をもらっている業者へのコメが足りない。(p58)


■まず、農水省は「日本は食料自給率が低い」と
 主張していますが、それは農水省が低くなるように
 自給率を計算しただけであり、
 実は、日本は輸入依存度が最も低いという
 データもあるのです。


 自給率を低く見せるカラクリは、
 価格ではなくカロリーベースにする。
 分子に兼業農家の生産を含まない。
 輸入飼料分は国産としない。
 分母に廃棄分、食べ残し分も含める、と
 色々工夫しているようです。


 環境省と一緒で農林水産省も
 問題がなくなれば存在意義がなくなるので
 国のためというより省のためなのでしょう。


・なぜ、生産額ベースの自給率は、国の政策目標であるにもかかわらず他国と比較しないのだろうか・・・日本の66%は主要先進国の中で三位である。さらには、農業生産額に占める国内販売シェアは一位。輸入依存度が最も低いことを表している。(p34)


■国際的には、農業はすでに
 産業化されていることがわかります。


 つまり、農業とは、自動車のように
 安い原料を輸入して、農産物という商品を
 生産して販売しているのです。


 それに対して、現在の日本の農水省は、
 農業保護という方針の下で、小麦、トウモロコシ、
 バターなど輸入原料に高い関税をかけて、
 国内メーカーの国際競争力を削いでいるのです。


 特にバターの輸入管理はいつの時代のことなのか、
 いろいろなしがらみがあるのでしょうが
 日本人として残念なことです。


農水省の天下り団体「農畜産振興機構」のバター輸入独占業務・・・たとえば、国際価格500円のバターを一キログラム輸入したとしよう。まず、500円に関税29.8%相当の149円+179円が課せられる。そこに輸入差益806円を足すと1634円に化ける。輸入価格の三倍以上だ。流通・小売マージンを乗せれば2000円を優に超える(p100)


■昔、自動車産業を保護するために、
 外国自動車の輸入制限、国内自動車会社を増やさない
 という政策を経産省が行おうとしましたが、
 これが実施されていたら今のホンダは存在しないのです。


 「保護は、産業を弱体化させる」というのは、
 だれでも知っている真理であると思います。
 では、なぜ農水省の人は、農業を
 弱体化させたいのでしょうか。


 本質は農業はどうでもよくて
 省と農協さえ存在していれば
 問題ないということなのでしょう。


・自給率の名の下に国内保護政策を強化しても、農業は弱体化し、いい思いをするのは農水省と関連団体だけだといっていい(p45)


■実は、農水省に働く人にとっても、
 この現状は悲しいことなのかもしれません。


 農協との関係もありますし、
 先人がやっていたことを続けていただけ。


 天下り先をなくさないようにやってきたことが、
 日本の農業を弱体化させているのですから。


 泥棒が警察に捕まった時、
 「捕まってホッとした」と言うことがあると
 言いますが、農水省の人も
 「この本が出てホッとした」と感じているかも
 しれません。


 浅川さん、よい本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・国内の農業生産額はおよそ八兆円。これは世界五位、先進国に限れば米国に次ぐ二位である。(p4)


・自給率が示す数字と一般的な感覚がかけ離れているのは、農水省が意図的に自給率を低く見せて、国民に食に対する危機感を抱かせようとしているからである(p6)


・食料自給率に潜むカラクリ・・・分子の国産供給カロリーには、全国に200万戸以上もある農産物をほとんど販売していない自給的な農家や副業的な農家、土地持ち非農家が生産する、大量のコメや野菜は含まれていない・・・海外から輸入したエサを食べていた家畜は除外される(p30)


・輸入トウモロコシは一キログラム約30円。対する国産の飼料米は、コストだけで六倍超の200円弱もし、その差額が補助金で埋められる。(p63)


・飼料米を作る農家は作りたくて作っているわけではない・・・プロの畜産農家はその背景を知っているから、突然エサが手に入らなくなるリスクを負ってまで、国産の飼料米に切り換えるわけがない(p65)



【私の評価】★★★★★(96点)



著者経歴

 浅川 芳裕(あさかわ よしひろ)・・・1974年生まれ。月刊「農業経営者」副編集長。若者向け農業雑誌「Agrizm」発行人、ジャガイモ専門誌「ポテカル」編集長。2000年同社に入社。


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