「あなたの中の異常心理」岡田 尊司
2012/04/19公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
スティーブ・ジョブズの伝記を読んで、人を馬鹿にしながら生きてきた変人だな、と感じましたが、大きな成果を残した人で精神的におかしい人はかなりいるようです。
たとえば、ドフトエスキーは、強情で好戦的。夏目漱石は、ひがみ根性が強く、「すべての人は私をバカにしている」と思っていた。バートランド・ラッセルは、人妻に手を出すことを自慢していた。詩人バイロンは、娼婦や農夫の妻、元尼僧といった頭のわるい人を愛人とした。
これらの人には、子どもの頃のコンプレックスや、親からの愛情不足が観察されるのです。他人を支配し、軽蔑することで自分が傷つくのを防ごうとしていたと分析できるのです。これは養子に出されたスティーブ・ジョブズにも、当てはまりそうですね。
・ノーベル文学賞の受賞者でもあるバートランド・ラッセルは、華々しい公的生活とは裏腹に、私生活は乱脈を極め・・・次から次に知人の妻に手を付けていった・・このタイプの人は優れた能力と自信に満ち、世間的には華やかな存在であるが、身近に接すると共感性に欠け、他人の痛みにはまったく無頓着であることを思い知らされる。(p125)
そして、あぶないのは、完璧主義です。人間は完璧ではないのに、完璧を求める人は、それはあるときは成果を出す力となりますが、うまくいかなくなれば、自分を否定することになってしまいます。自ら命を絶った三島由紀夫、川端康成、ヘミングウェイなどが代表例となります。
こうした完璧主義が、自分に向かわずに、他人に向かうと、すべてを他人のせいにして、軽蔑する態度に出るのでしょう。完璧主義とは、だれもがある程度は持っている特質ですので怖いですね。岡田さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・完璧主義というものは、人を成功へと押し上げる原動力にもなるが、ひとたび歯車が逆回りを始めると、同じ完全を求める気持ちが、不完全な自分を死へと追い詰める殺人装置になりかねない(p50)
・ノーベル賞を受賞したヘミングウェイや川端康成が、なぜ自殺しなければならなかったのか。そこには、彼らの激しいまでの完璧主義が関係している。不完全になった人生に、もはや耐えられないのである。さらにその根底には、二人とも親の愛情に恵まれなかったという心の傷を抱えていた(p252)
・人はストレスを受けた状態では、自分を守るために、もっと弱い立場の者を支配することで自己愛や自己効力感を保ち、心のバランスをとろうとする。それも身近にみられる異常心理への入口である。(p119)
・覗き行為や盗撮で、教師や警察官といった公的な仕事を担う人が捕まるという事件が後を絶たない。タレントや学者でも逮捕者が出ている・・・バタイユによれば、そこにエロティシズムが生まれるのは、「禁止」が存在するがゆえなのである(p79)
・何かを強制すると、後で必ず反動が来る・・好きになってはいけないと身構えることで、逆に好きになってしまう・・・不登校の子どもに学校に行くように迫ると、もっと行けなくなり、登校をせき立てる親に対して暴力をふるうようになる(p144)
・ありのままを受け止める・・・「悪い考えにとらわれないように」と言えば言うほど、とらわれてしまうことも多い。(p147)
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第一章 本当は怖い完璧主義
第二章 あなたに潜む悪の快感
第三章 「敵」を作り出す心のメカニズム
第四章 正反対の気持ちがあなたを翻弄する
第五章 あなたの中のもう一人のあなた
第六章 人形しか愛せない
第七章 罪悪感と自己否定の奈落
著者経歴
岡田尊司(おかだ たかし)・・・1960年、香川県生まれ。精神科医。医学博士。作家。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務。山形大学客員教授。臨床医として現代人の心の危機に向かい合う。
読んでいただきありがとうございました!
この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングに投票する
メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」 50,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。 >>バックナンバー |
配信には『まぐまぐ』を使用しております。 |
お気に入りに追加|本のソムリエ公式サイト|
コメントする