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「神様のカルテ」夏川 草介

2011/08/30公開 更新
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神様のカルテ (小学館文庫)


【私の評価】★★☆☆☆(67点)


要約と感想レビュー

田舎の病院の問題とは

医師不足の地方都市で、夏目漱石好きの救急医が、患者の死と向き合うドラマです。妻は山岳写真家。アパートには男爵と学士殿。熊のような同僚と、有能だけど口の悪い看護婦とキャストが多彩です。


ウケ狙いの設定に、テレビのドラマ用に作られた小説のように感じました。やはり田舎の病院で問題となるのは、医師不足と終末医療です。ドラマなら徹夜の仕事は画になりますが、現実なら笑えません。


慢性的医者不足のこの町では、外科でも内科でも耳鼻科でも皮膚科でも、ひとりの「救急医」が診療を行う。(p13)

人生最後の時間をどうするのか

大学病院に戻るのか、それともこのまま医師不足の田舎の病院で24時間休まず働くのか、主人公にとっては大きな選択となります。


また、高齢化した社会では、意識もない老人をただ生かすためだけの医療も問題です。主人公は、もう助からない患者と向き合い、人生最後の時間をどうするのか考えるのです。よりよい最後の時を作り出していくのが、医師ではないかと主人公は悩むのです。


看護婦まで徹夜で働くようになったら、そんな職場、気持ち悪くてやっておれん。だいたい私は、医者も数を増やして二交代制で働くという未来を熱望している人間だ(p107)

テレビドラマとしてみたい

こういった利用の問題を考えてもらうためのドラマなのだと思いました。テレビドラマなら、純粋に楽しめるかもしれません。夏川さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・生活習慣病である2型糖尿病は甘く見ているととんでもないことになる恐ろしい病気である・・・日本人の透析の原因疾患の第一位、失明の原因疾患の第二位を堂々と占めている(p31)


・「夜明け前」・・・・「明けない夜はない。止まない雨はない。そういうことなのだ、学士殿」(p164)


・モンブランの頂上からはもっとすごい数の星が見えるんです。まるで自分まで星のひとつになって飛んでいけそうなくらい(p90)


神様のカルテ (小学館文庫)
夏川 草介
小学館 (2011-06-07)
売り上げランキング: 50


【私の評価】★★☆☆☆(67点)


著者経歴

夏川草介(なつかわ そうすけ)・・・1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書は2010年本屋大賞第2位となり、映画化された。他の著書に、世界数十ヵ国で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師である著書が自らの経験をもとに綴り大きな話題となったドキュメント小説『臨床の砦』など。


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