「資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言」中谷 巌
2011/03/03|

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【私の評価】★★☆☆☆(65点)
■アメリカの金融資本主義の現状を分析し、
これまでアメリカの真似一辺倒できた
日本に方向修正を求める一冊です。
特に、アメリカ型金融については、
サブプライム問題などを頂点に、
非常に問題があるとしています。
そして、アメリカ型資本主義は、
貧富の差を大きくする。
日本社会には、実はなじまない
仕組みのかもしれない、
ということです。
・日本はごく一部のエリートが、無知蒙昧な民を支配し、
導くことで発展してきた国ではない。むしろ、
庶民がそれぞれの分野で努力を重ねることで
発展してきた国なのである。(p313)
■著者の提案は、
アメリカがすべて正しいわけではない。
日本の良いところも発信していくべきであり、
自ら日本の良いところを捨てる必要はない、
ということです。
たぶんそうしたことは
大企業の経営者は
わかっているのでしょう。
ただ、そうした理想と会社の経営の現実との、
折り合いをどうつけるか、
ということが課題だと思います。
中谷さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・ゴールドマン・サックスの2007年年次報告によれば、
同社従業員の世界平均年俸は金融危機直前、
何と7000万円にも達したという。・・・
しかし、他方では、健康保険に入れないで、
病気になっても医者にかかれないアメリカ人が
5000万人近くに上がり・・・(p16)
・ジェファーソンが書いたと言われる独立宣言では
「すべての人間は平等に造られている」とし、
人間には「生命、自由、幸福の追求」の権利があるとした。
だが、そこで「人間」とされているのは、
キリスト教徒の白人たちだけであり、ネイティブ・アメリカンも
黒人奴隷もそこには含まれていなかったのである(p189)
・「損して得取れ」・・・「安かろう、悪かろう」で短期的な
利益を目指すのではなく、多少、損は承知でも「信用第一、
品質第一」で行くというストラテジーを貫き通したがゆえに、
「メイド・イン・ジャパン」製品は多少高くても安心できる」
という消費者の評価を勝ち得たわけである。(p318)
・日本のような社会では長期的な信頼関係を築いたほうが
トータルとして利益を最大化できる可能性が高く、
逆に目先の利益のために自分本位に行動すると、
社会での評判を落ちしてしまう(p261)
「資本主義はなぜ自壊したのか」中谷 巌、集英社
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【私の評価】★★☆☆☆(65点)
■著者紹介・・・中谷 巌(なかたに いわお)
1942年生まれ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長。
日産自動車勤務後、ハーバード大学留学。
ハーバード大学研究員、大阪大学教授を経て
一橋大学教授。
ソニー取締役など歴任。
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いつも印象深いメルマガで
毎日拝読させてもらっているのですが、
今回のこの中谷巌先生のご本が
辛口評価だったのには驚きました。
私は読んでいないのでなんともいえませんが、
東大では中谷先生の『マクロ経済学』が
教科書に使われていたので。
アカデミズムでは評価されている
学者だと思います。
ただ、確かに中谷先生は、
その教科書でも、ITバブルのことを
(そのころはバブルだとあまり
認識されていませんでしたが)
新しい経済体制=ニューエコノミックなどと
頓珍漢なことを仰っていましたが。
どちらにせよ、このメルマガのおかげで
この本を要チェックしたいと思いました。