【書評】「農協の大罪「農政トライアングル」が招く日本の食糧不安」山下 一仁
2009/06/12公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
農協の目的は利益を上げること
多くの本を読んできましたが、農協を良く言う本を読んだことがありませんでした。農業へ参入しようとする人のジャマをする。自分で農産物を売ろうとすると妨害する。農業の指導ではなく、借金をさせようとする。本当なのでしょうか。
例えば、農協を通さずに直接スーパーなどに出荷しようとしたら、農協は農家の農協口座を閉じ、プロパンガスの供給を止め、共同利用の用水の使用を禁じるというのです。つまり『村八分』にするのでえすが、全国にそうした事例が無数にあるという。
著者が指摘する農協の大罪は、農協は農業を発展させることを目的としていないということです。農協の目的は、米の価格を税金で高く維持し、農家に高い肥料や飼料を売り、農家から資金を集めて、投資し、利益を上げることなのです。
したがって、米の価格を高くするために、お金を払って減反もするし、外国からの安い米が入らないようにするわけです。
最初に農水省の課長補佐になったときの小さな出来事をいまだに思い出す。上司に「君は農協が農家や農業のために仕事をしていると思っているのか」と一喝された・・・農協による農協のための支配にうんざりしている農水省の同僚諸氏も多いのではないかと思っている(p204)
農業は成長しなかった
「高米価」「兼業」「農地転用による巨額のキャピタルゲイン」により、米兼業農家の所得(792万円)は勤労者所得(646万円)を大きく上回るまでになりました。その一方で、高い付加価値を生むであろう企業的農家の育成は妨げられ、農業は成長しなかったのです。
日本の農業のGDP(国内総生産)は4.7兆円ですが、この金額は農業保護に使っている金額とほぼ同じだそうです。つまり、農業関係者は税金をもらうだけで、付加価値をほとんど生んでいないということなのです。
農家戸数は285万戸、農協職員だけで31万人、農協の組合員は約500万人、准組合員は約440万人もいる。GDPに占める農業の割合は1%にすぎないのに、日本の成人人口の1割が農協の職員、組合員、准組合員ということになる。(p25)
もし外国から食料が来なくなったら
農水省の人も農協に匙を投げているわけですから、農業もここまできたか、という感じです。
もし、外国から食料が来なくなったらどうするかについては、自分で考えなくてはならないのでしょう。庭で野菜でも作ってみます。本の評価としては、★4つとしました。
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この本で私が共感した名言
・元農協幹部が独自の農協を北海道で設立し、韓国から国内の3分の2の価格で肥料を輸入している。現在でも、JAの飼料価格は市場価格の4割高だったとか、農家が飼料や肥料を海外から輸入したら5分の1ですんだという話もある(p86)
・同じように高い農産物価格で農家を保護したEU(欧州連合)は、作りたいだけ作らせて、できた過剰生産物に補助金をつけて国際市場へ輸出した。自給したうえで輸出するのだから、EUの食料自給率が100%を超えるのは当然である(p44)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1章 「汚染米横流し事件」の背景
第2章 保護なしでは「GDPゼロ%」の日本農業
第3章 誰が日本の農業を衰退させたのか?
第4章 農協の台頭と「大罪」
第5章 農政トライアングルとは何か?
第6章 農協、農林族議員、農水省の「壁」
第7章 揺らぐ農協
第8章 農政が脅かす「食料安全保障」
終章 強い農業を築くためにするべきこと
著者経歴
山下 一仁(やました かずひと)・・・1955年生まれ。77年農林省入省。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。経済産業研究所、東京財団の研究員となる。
農協関連書籍
「農協のフィクサー」千本木 啓文
「農協の闇(くらやみ)」窪田 新之助
「農協の大罪「農政トライアングル」が招く日本の食糧不安」山下 一仁
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