「農協の大罪」山下 一仁
2009/06/12公開 更新本のソムリエ [PR]
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■多くの本を読んできましたが、
農協を良く言う本を
読んだことがありませんでした。
農業へ参入しようとする人のジャマをする。
自分で農産物を売ろうとすると妨害する。
農業の指導ではなく、借金をさせようとする。
この本でその理由がわかりました
・農協を通さずに直接スーパーなどに出荷しようとしたら、
農協はこれらの農家の農協口座を閉じ、
プロパンガスの供給を止め、
共同利用の用水の使用を禁じ、
文字通り『村八分』にした。
こうした例は全国に無数にある(p88)
■著者が指摘する農協の大罪は、
農協は農業を発展させることを
目的としていないということです。
農協の目的は、米の価格を税金で高く維持し、
農家に高い肥料や飼料を売り、
農家から資金を集めて、投資し、
利益を上げることなのです。
したがって、米の価格を高くするために、
お金を払って減反もするし、
外国からの安い米が入らないようにするわけです。
・「高米価」「兼業」「農地転用による巨額のキャピタルゲイン」
という三種の神器により、米兼業農家の所得(792万円)は
勤労者所得(646万円)を大きく上回るまでになったが・・・
企業的農家の育成は妨げられ、
農業は衰退した。(p64)
■日本の農業のGDP(国内総生産)は4.7兆円ですが、
この金額は農業保護に使っている金額と
ほぼ同じだそうです。
つまり、農業関係者は税金をもらうだけで、
付加価値をほとんど生んでいない
ということなのです。
・農家戸数は285万戸、農協職員だけで31万人、
農協の組合員は約500万人、准組合員は約440万人もいる。
GDPに占める農業の割合は1%にすぎないのに、
日本の成人人口の1割が農協の職員、組合員、
准組合員ということになる。(p25)
■農業もここまできたか、という感じですが、
外国から食料が来なくなったらどうするかについては、
自分で考えなくてはならないのでしょう。
庭で野菜でも作ってみます。
本の評価としては、★4つとしました。
─────────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・最初に農水省の課長補佐になったときの
小さな出来事をいまだに思い出す。
上司に「君は農協が農家や農業のために
仕事をしていると思っているのか」と一喝された・・・
農協による農協のための支配にうんざりしている
農水省の同僚諸氏も多いのではないかと
思っている(p204)
・元農協幹部が独自の農協を北海道で設立し、
韓国から国内の3分の2の価格で肥料を輸入している。
現在でも、JAの飼料価格は市場価格の
4割高だったとか、農家が飼料や肥料を
海外から輸入したら5分の1ですんだ
という話もある(p86)
・同じように高い農産物価格で農家を保護した
EU(欧州連合)は、作りたいだけ作らせて、
できた過剰生産物に補助金をつけて
国際市場へ輸出した。
自給したうえで輸出するのだから、
EUの食料自給率が100%を
超えるのは当然である(p44)
▼引用は、この本からです。
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農協・農林族議員・農水省のトライアングル構造を切り口鋭く批判する
老衰する農業
お見事!
行政で農政担当者のバイブルになりうる本
【私の評価】★★★★☆(81点)
■著者経歴・・・山下 一仁(やました かずひと)
1955年生まれ。77年農林省入省。
農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、
地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。
08年農林水産省退職。経済産業研究所、東京財団の研究員となる。
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