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「出発点―1979~1996 」宮崎 駿

2008/11/29公開 更新
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出発点―1979~1996


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

 テレビアニメの「アルプスの少女ハイジ」から『ルパン三世「カリオストロの城」』『天空の城ラピュタ』『紅の豚』『もののけ姫』など数多くの名作アニメを作り上げた宮崎 駿 監督のエッセイ集です。この本を読んでわかることは、宮崎 駿 監督は一貫して、良いアニメを作ろうとしてきたということ。良いアニメは、必然的に時間もかかるし、手間もかかる。


 しかし、実際の仕事の環境はそれを許しません。予算も人も時間も限られているのです。それでも、宮崎 駿監督は、金がなければ、安給料でやるし、時間がなければ寝ないでやるのです。一種の狂気ともいえるものでしょう。多くの普通のアニメーターからすれば、良い作品を作るのは正義としても、毎日残業続きで、給料が月10万円では生活できない。宮崎監督には付いていけないと思うのも仕方がないのかもしれません。


・現場にシワ寄せをかけまいと作った人はだれひとりとして尊敬されないです。クソミソです。作っているときに"鬼め"といわれている人のほうが、終わったときに、みんな自分の仕事に対して納得するんですね。(p329)


 宮崎駿がそうした狂気のように精密なアニメを創り続けるのは、根底には「子どもたちが楽しめるアニメを作りたい」という思いがあるからです。そして、そうしたやりがいのある仕事であれば、周囲の人や仲間がそれについてきてくれるし、そういう仕事でなければならないという信念を感じました。


 実際、そうした思いから、宮崎駿監督自ら、朝から晩まで机に向かって書いている背中をメンバーに見せて、チームをひっぱっているのです。去る人は去れ。私についてきてくれる人が少しだけいればいい。私には究極に職人の世界のように感じられました。


子どもたちが本当に心から喜べるようなフィルムを作りたい。そういう根本的な自分たちに立場というのは、絶対忘れちゃいけないと思うんです。それを忘れたときに、このスタジオは滅びるだろうと思う(p123)


 やりたいことをやる!という宮崎監督の迫力を感じました。これは、良い車を作りたい!という本田宗一郎にも似た感覚でした。


 ときどき、こうした人が生まれるのが日本人の素晴らしさであり、日本の素晴らしさを表現した 宮崎アニメは日本の宝だと思いました。


 宮崎駿の考えが少しわかったような気持ちになりました。ある意味、狂っています。もう少し宮崎駿を調査します。ということで、本の評価としては、★4つとします。


この本で私が共感した名言

・子供時代の五分間の体験というのは大人の一年間の体験より優るんですよ・・・その時期にどれほど社会全体が知恵を絞って子供たちがいかにのびのびと生きられるようにするか(p15)


・あらゆる「職業人」は、自分の仕事がやりがいのある仕事だったら一生懸命やるものだと思いますよ。・・・ただ、会社のために、全部滅私奉公せよというのは大嫌いです(p517)


・絵コンテをそのまま受けとらないことだ。本当にその絵コンテでよいのだろうか、面白いだろうか・・と考える。批評はだれにでもできるのだ・・・すぐ代案を提出すること、職業だとしたら代案がなければ発言権はない(p64)


・真面目に見ている時にCMが入ってくると、いい加減にしてくれという気持ちになります。"この時間は我が社が提供していますが、CMは流さないでこのまま放送を続けます"という企業はないものですかね?(p208)


▼引用は、この本からです。


【私の評価】★★★★☆(88点)



著者経歴

 宮崎駿(みやざき はやお)・・・アニメーション映画監督。1941年、東京生まれ。学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。『太陽の王子 ホルスの大冒険』の場面設計・原画等を手掛け、その後Aプロダクションに移籍。1973年に高畑勲らとズイヨー映像へ。日本アニメーション、テレコムを経て、1985年にスタジオジブリ設立。雑誌『アニメージュ』に連載した自作漫画をもとに、1984年に『風の谷のナウシカ』を発表。


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