「裁判官の爆笑お言葉集」長嶺 超輝
2007/06/18公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
お笑いというタイトルにひかれて購入しましたが、中味はいたって真面目でした。世の中にはいろいろな不条理な事件がたくさんあり、その不条理を裁判という形で決着をつけるのは、難しいことです。その難しいことを、裁判官は毎日、決断しているのです。
だいたい裁判というものは刑期の相場が決まっていて、よほど悪質でない限り、一人殺しても死刑にはなりません。死刑の次は無期懲役ですが、無期懲役でも、10年で出所できるのが現実なのです。計画的に3人殺しても無期懲役となるケースもあるようです。なんともいたたまれない気分になってしまいます。
・被告人は被害者女性の不倫相手。被害女性は夫と娘の3人くらしでした。女性の側から別れ話を持ち出されて殺害を計画。深夜に一家のいる従業員寮へ侵入し、部屋にガソリンをまいて放火。火事に気づいて起きた夫婦を包丁で刺殺。眠っていた2歳の長女も焼け死・・・無期懲役(p23)
裁判官はただ判例に基づき、有罪・無罪、懲役を決めているだけであり、裁判官も裁判という仕組みのなかで悩んでいるのかもしれません。それでも事件は起こり、裁判官は淡々と仕事として判決文を書かなくてはならないのです。
そもそも裁判官の人事評価は、裁判の数で決まります。一つひとつに寄り添う裁判官よりも、早く裁判を進めたり、和解で解決してしまう人が評価されるわけです。効率的な人が偉くなるのは、本当なのでしょうか。
・裁判官の評価は「判決や和解を出した数の多さ」に集約されています。長々と30分も論説をするのだったら、その時間で薬物事件の1件も済ませたほうが出世に近づくというわけです。(p215)
世の中の不条理と、そのなかで仕事をしている裁判官の世界が垣間見れる一冊でした。なかなか見る機会がないので、★3つとします。
この本で私が共感した名言
・被告人は、横領金のうち約8億円を、チリ人妻のアニータ・アルバラドさんへ送っていた。・・・青森県住宅供給公社は、・・・数十億円の利益が出ていました。その利益を特殊な会計処理により隠していたことから、一部の職員がつまみ食いしても、しばらくバレないままになっていた(p213)
・わが国の刑事裁判(一審)での有罪率は、約99.92%(2005年)。被告人が無罪を主張している事件に限っても、毎年その97%前後に有罪判決が言い渡されています。(p172)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
第1章 死刑か無期か?―裁判長も迷ってる
第2章 あんた、いいかげんにしなさいよ―あまりに呆れた被告人たち
第3章 芸能人だって権力者だって―裁判官の前ではしおらしく
第4章 被告人は無罪―「有罪率99.9%」なんかに負けない
第5章 反省文を出しなさい!―下手な言い訳はすぐバレる
第6章 泣かせますね、裁判長―法廷は人生道場
第7章 ときには愛だって語ります―法廷の愛憎劇
第8章 責めて褒めて、褒めて落として―裁判官に学ぶ諭しのテク
第9章 物言えぬ被害者を代弁―認められ始めた「第3の当事者」
第10章 頼むから立ち直ってくれ―裁判官の切なる祈り
著者経歴
長嶺 超輝(ながみね まさき)・・・1975年生まれ。大学卒業後、弁護士を目指し、塾講師や家庭教師の指導をしながら司法試験を受験。7回不合格。現在、裁判傍聴のかたわら、ライターとして活動。裁判傍聴メルマガ「東京地裁つまみぐい」を発行。
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