「ホスピスという希望: 緩和ケアでがんと共に生きる」佐藤 健

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ホスピスという希望: 緩和ケアでがんと共に生きる (新潮文庫)

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■がん治療の専門家でありながら、
 ホスピス・緩和ケアの拡大を
 図っている佐藤さんの一冊です。


 がん治療では、いわゆる
 マニュアルどおりの治療が
 行われることが多いと言います。


 マニュアルが悪いというわけではなく、
 患者が高齢だったり、末期で
 効果が期待できないとしても
 抗がん剤治療を行ってしまう。


 それが患者のためだ、と
 思い込んでいるのです。


 さらには、
 痛みがあるのに、痛みを取らない、
 家に帰りたいのに、返さない、
 最後にやりたいこともさせない
 ということもあるらしい。


・どんなに効果が低いとわかっても、
 その治療を勧めなければ、
 死を認めたことになり、
 勧めることこそが本当の医師の使命だと
 本気で信じ込んで、融通の利かない状態に
 なっている医師もいます。
 こういった医師の多くは教科書の治療法、
 マニュアルどおりの治療法しか
 学んでおらず・・(p114)


■こうした状況は、多くの誤解、
 無知が原因であるといいます。


 まず、抗がん剤は一部のものを除いて
 苦痛を伴うにもかかわらず、
 それほど効果がないということ。


 抗がん剤を使わなければ、
 "がん"は普通の生活ができないほど
 痛みの出る病気ではないこと。


 仮に痛みが出ても、モルヒネ等を
 適切に使えば、痛みのない末期を
 過ごせることです。


 こうしたことが、一般人だけでなく
 医師のなかでも
 認知されていないとすれば、
 驚きです。


・がん治療を専門としている医師は、
 抗がん剤の治療でがんが治るものではないことを
 知っています。抗がん剤は効果があれば
 腫瘍が小さくなるということで・・
 たとえ効いても延命につながらないことも
 あります(p112)


■がん治療とは、体だけでなく
 心の治療が大事だと
 思いました。


 治るがんもありますが、
 がんとは基本的に老化です。


 老化ですから、急に症状が
 出るわけではなく、
 抗がん剤を使わなければ
 死の期限はあるとしても
 ある程度普通に生きられる。


 そうした人の心を支えるためにも、
 痛みを緩和する治療と
 医師・家族とのコミュニケーションが
 大事なのでしょう。


 がん治療についてこれまで読んだ中で
 最高の一冊でした。


 佐藤さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・抗がん剤治療・・発表されている
 奏効率というのは20~50%程度です。
 「奏効率20%」はその薬が効いて
 「がんが小さくなる確率」が20%であって、
 決して「治る確率」ではありません。
 治る確率は0%に近いと言えます(p128)


・80~90代の人には、おそらく、
 がんと共存して生きている人がたくさんいる・・
 だからといって別に症状がなければ
 無理に辛い検査をして、
 がんを見つける必要もありません。・・
 無理な「病気探しの旅」をする
 必要はないということです(p158)


・WHO(世界保健機関)が「がんの痛みからの解放」
 という有名なパンフレットで、モルヒネを使用して、
 すべてのがん患者さんを痛みから救おうと
 呼びかけて三十年近くも経ちます(p20)


・ホスピス・緩和ケアについて
 勉強してきて言えることは・・
 一般のがん医療が末期がん患者さんの苦悩に対して
 何もしていないのだ。何もしてこなかったのだ。
 何もできていないのだ」という、
 痛切な反省と後悔です(p138)


・お母さんのがんは進行していますが・・
 残された時間を、いかに大切に生きるかが重要です
 それには痛みをとることが大切です。
 痛みさえとれれば普通の生活ができますよ(p37)


・家族の中に、病気なんだからおとなしく
 養生していてくれれば、少しでも
 長生きできるのではないかという思いが強いと、
 病院での入院期間が延び、患者さんの
 早く家に帰りたいという思い、
 あるいは既に死について悟っているのであれば、
 最後の時までにこれだけはやっておかなければ、
 という気持ちを妨害することになってしまいます(p249)


・腹水は抜いてもまた溜まります
 (実は点滴によってさらに貯まるのです)・・
 腹水を抜いて消耗すると、点滴をし、
 また抜くという悪循環(p143)


・がんにかかったら、治る、治らない
 ということに執着するのではなく、
 必要な治療は受け、結果はどうであれ、
 悪いことばかり考えないことです・・
 一日一日を大切に生きるという姿勢を
 持つことだと思います(p154)


・告知をしていない場合、
 患者さんと家族の会話は少なくなります。
 互いに気を使いすぎてどうしても悲しい思いを
 吐き出せなくなります(p252)


・やがて私は、患者さんが「死にたい」
 と言うようでは良いケアができていない、
 と考えるのではなく、「死にたい」という
 言葉を口に出すことで、私たちに
 心を開いてくれたと捉えてもいいのではないか
 と考えるようになりました(p195)


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■目次

第1章 素晴らしい患者さんたちとの出会い
 ―輝く人生からの贈り物
第2章 我慢する前にホスピスを訪ねてください
 ―私たちはいつもそばで支え続けます
終章 ホスピスのある街を増やそう


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