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「自宅で最後を迎える準備のすべて」大軒 愛美

2021/08/18公開 更新
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「自宅で最後を迎える準備のすべて」大軒 愛美


【私の評価】★★★★★(91点)


要約と感想レビュー

「自宅死」のススメ

終活の本かな、と思って読みはじめたら、看取り士による在宅医療を活用した「自宅死」のススメでした。看取り士とは、自然で幸せな最期を迎えることができるように、患者に寄り添いサポートする仕事です。


日本では、戦後は8割が自宅死でしたが、現在は1割が自宅死となっています。その一方で、病院死は1割から7割に増えています。これは核家族化によって自宅で世話をする家族がいなくなったことと、病院の営業努力によって、病院が老人ホーム化したためでしょう。


しかし実際には、病院は病気を治療する場ですので、病院の実態は、患者に寄り添った場所ではないのです。日本の病院死が8割程度である一方で、フランスは5割台、アメリカは4割程度、オランダは3割以下ということをよく考えなくてはならないのでしょう。


・病院で亡くなられた時のこと・・・耐えられない痛みを訴えた時のみ与えられる鎮痛薬、意味のない検査の繰り返し、食欲を無視した朝昼夕の規定通りの配膳(p40)


完治の見込みがなくなったら在宅医療

では、在宅医療に切り替えるとしても病気末期での在宅医療となると、誰でもはじめてのことで本当に大丈夫かと不安になるはずです。この本では、訪問診療と介護保険のサービスを組み合わせることで対処できることを説明してくれます。余命数ヶ月とわかった時点で在宅医療に切り替えることができれば、自宅でいつもの生活を送ることができ、好きなお酒を飲むこともできるし、食べ慣れた味の食事を家族と共にし、散歩も自由にできるのです。


日本人の3割は「がん」で亡くなりますが、「がん」は抗がん剤の副作用で具合が悪くなるのであって、緩和ケアで痛みをコントロールできれば、死のギリギリまで普通の生活ができるのです。日本では完治する見込みがないのに、「がんと闘いましょう」と治療を続ける場合があるようですが、完治の見込みがないのに、副作用に苦しむ意味があるのでしょうか。


この本では、完治の見込みがなくなった段階で、在宅医療に切り替えて、住み慣れた自宅で、家族の作った食事を食べ、最後の時間を家族と一緒に過ごすことを提案しています。余命が伝えられたら、もう治る可能性は低いということであり、自宅に帰る決断をするタイミングなのです。


・医師からすると何も治療しないことはがん細胞を成長させること・・・患者さんの心情を察して、かわいそうだから、と緩和目的で抗がん剤を行うケースもあります(p37)


医療費の6割が65歳以上に使われている

日本は平均寿命世界一ですが、その実態は病院で多数の寝たきりの老人が孤独の中で死を待っています。そして医療費の6割が65歳以上の高齢者に使われているのは、高齢者の扱いを病院に過度に依存していることが原因でしょう。病院に1ヶ月入院した場合、差額ベッドが12万円とすると自己負担は26万円かかります。一方、在宅医療なら自己負担は5万円で済むとしています。


最近は、無用な延命治療を拒否する人も増えてきたようです。これからの時代は、患者に寄り添わない病院死から、患者が自由で安らかに死を迎えられる自宅死を考えるべきだと感じました。大軒さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・病院は「病気を治療する場」・・・「穏やかな最期を迎えるためにどうしたらいいか」ということには、重きが置かれていないのです(p58)


・在宅医療でも、病院と同等の痛み止めのケアを受けることができます(p84)


・人工呼吸器・・一度付けたら、再び自発呼吸ができるようになる以外、外すことができない・・・家族の願いで良かれと思い医師が外した結果、殺人罪の罪に当たり医師が逮捕された事例がある(p44)


▼引用は、この本からです
「自宅で最後を迎える準備のすべて」大軒 愛美
大軒 愛美、自由国民社


【私の評価】★★★★★(91点)


目次

第1章 病院は治療する場所 なぜ病院で最期を迎えることは良くないのか
第2章 自宅こそ幸せな最期を過ごす場所 その日を迎える前に知っておきたいこと
第3章 自宅死の準備の仕方 納得して選べば後悔しない
第4章 自宅に帰ったあとの日々 自由で幸せな時間が過ごせる
第5章 旅立つ準備について 最期の兆候を知り悔いのない看取りを



著者経歴

大軒愛美(おおのき まなみ)・・・正看護師、心理カウンセラー、看取り士。名古屋の看護学校を卒業後し、都内の総合病院に就職。その後、個人病院、東京医科大学病院、順天堂大学医学部付属順天堂医院、獨協医科大学埼玉医療センターにて勤務。2020年4月自主志願してコロナウィルス病棟に勤務。看護歴は16年になり、現在は誰もが「より良い最期」を迎えられるように終末期医療に力を注いでいる。


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