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「2028年 街から書店が消える日~本屋再生!識者30人からのメッセージ~」小島俊一

2024/08/06公開 更新
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「2028年 街から書店が消える日~本屋再生!識者30人からのメッセージ~」小島俊一


【私の評価】★★★★☆(85点)


要約と感想レビュー

書店は書籍を置くだけの場所

紙の書籍の売上高が低下しています。赤字で閉店する書店が多く、書店はピーク時の2万5000店から半分以下の1万1000店にまで減っているという。書籍が売れないので、普通の書店では、売り上げの半分が雑誌とコミックで、何とか経費をまかなっている状態だという。


本来、書籍販売は、再販売価格維持制度と、返品自由の委託制度で守られ、リスクの小さい商売でした。ところが保護すれば弱くなると言われるように、書店は書籍を置くだけの場所となり、出版社は粗製乱造で新刊を大量に作って、取次に押し込んで売上を作るようになってしまったというのです。


その結果、新刊は取次か出版社が配本数を決定して、書店に送られてくるので、小さい本屋さんには売れる新刊は配本されないのです。本当に書店は、本を置くだけの場所なのです。さらに、在庫のない本を取次に発注しても、数日から数週間後でないと書店に送られてこないという。


ネット書店のアマゾンでは、ほぼすべての書籍が購入可能で、翌日に本が届くのですから、リアル書店がアマゾンに勝っているのは、立ち読みが可能ということだけになってしまっているのです。


本の利益率は23~24%ぐらい、他の物販商材は平均35%ぐらい・・・支払いが苦しくなり、返品をする。返品をするのでお客様の欲しい商品が店頭にない(p80)

書籍以外のものを販売する

この本では工夫して利益を出している書店のインタビューが掲載されています。うまくいっている書店では、書籍だけではなく、文具やパンを売ったり、カフェを併設したりして、お客様に書籍以外のものを販売しているという。


また、著者と読者をつなげる場として、著者の自宅と読者をオンラインで対話してもらうサービスをしている書店もあるのです。本来、書店とは自分がよいと思った本を売るところであるべきなのでしょう。


出版社KADOKAWAでは、書店と直接取引して希望数を配本し、追加注文も翌日に希望数をKADOKAWAから直接送る取り組みをしているという。こうしたKADOKAWAの取り組みは、当たり前のように見えますが、現在は取次を経由すると追加注文に1~2週間もかかるというので、当たり前のことさえできないのが、現在の書籍業界の仕組みなのです。


ふたば書房・・著者と読者を繋げる情報発信としての場になるべき・・著者の自宅とオンラインで繋いで読者との対話の場面を作るネット配信サービス(p74)

出版社と書店が直接取引する

現在の動きとしては、紀伊國屋書店とTSUTAYAと日販が別会社を作り、出版社と書店が直接取引する仕組みを作ろうとしています。私もこうした動きには賛成で、最終的には、書籍の再販売価格維持制度と、返品自由の委託制度が悪の根源なので、海外の事例も参考にしつつ、自由化すべきだと思いました。


例えば、欧米のように、新刊は事前に書店からの受注に応じて作製数を決定して、返品なしにして、書籍を売り切るのです。書店は魅力的と思った本を自主仕入れして、返品せずに売り切る。出版社は書店に魅力的と思ってもらえるような本を編集するというのが、本来あるべき姿なのだと思うのです。


書店の仕入れ正味を下げるために・・書籍の完全受注制での新刊作製数決定です。欧米ではかなりの国で導入されている(p30)

著者と読者をつなげる

仕組みを変えるのは大変だと思いますが、保護すれば衰退するわけで、普通のルールに戻すしか道はないのではないでしょうか。書店には、自分がお勧めする本や著者を紹介してもらいたいものです。著者は、書店が企画する著者講演会を推奨しています。有名作家なら5000円、有名でなければ3000円程度で、著者と読者をつなげるのです。


私も自分のよいと思った本をメルマガで紹介していきたいと思います。小島さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・Amazonは多くの本で新刊の事前予約ができるのに、本屋ではなぜできないのでしょうかね?(p108)


・現状の書店チェーン本部は、出版社からの営業で新刊仕入れ数を決める時に本の面白さよりもリベートを重視した仕入れになっている(p149)


・付録付き雑誌は、本誌と付録が別梱包で書店に送られてきて、それを書店員が無償で付録組みして販売しています(p29)


・コンビニ・・年間では28.8回転している・・書店の商品回転率・・年間3回転しかしない・・2回転に近づきつつある(p22)


▼引用は、この本からです
「2028年 街から書店が消える日~本屋再生!識者30人からのメッセージ~」小島俊一
小島俊一 、プレジデント社


【私の評価】★★★★☆(85点)


目次

第1部 本屋をめぐる厳しい現状
第2部 注目の個性派書店から見える希望
第3部 出版界の三大課題は正味・物流・教育
第4部 提言―生き残る本屋の道
特別寄稿 有隣堂 松信健太郎 「本は大切です。だから守ってください」は通用しない



著者経歴

小島俊一(こじま しゅんいち)・・・1957年福岡県生まれ、明治大学政治経済学部卒。(株)トーハン入社後、2005年石川県「王様の本」へ出向し、書店現場での経験を積む。その後トーハン執行役員近畿支社長、同九州支社長を経て、2013年に四国・松山の(株)明屋書店代表取締役就任、現在に至る。中小企業診断士・産業カウンセラーの資格を持ち「良いコミュニケーションが人生を豊かにする」をテーマに、コーチングやNLPの手法を用いた「魔法質問セミナー」を開催中。中小企業再生をライフワークとしている。週刊ダイヤモンド誌で全国300万社対象の2016年「地方『元気』企業ランキング」で明屋書店を日本一に導く。


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