「トラックドライバーにも言わせて」橋本 愛喜
2024/05/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
トラックドライバー不足の理由
トラックドライバー不足とニュースでやっていましたが、その理由がわかる一冊です。まず、給料が安い。年間所得額は大型トラックドライバーは454万円、中小型トラックドライバーは415万円くらいだという。
そして長距離ドライバーともなれば、1週間家に帰れないこともあるのです。病気になっても通院しにくいので、歯のないドライバーもいるという。さらにトラックの運転だけでなく荷物の積み下ろしも仕事の一部です。場合によっては手で30キロの紙袋を12トン気温40度超えの日に積み下ろしした例が紹介されています。
先輩ドライバーに前歯がない・・「手指の変形」「高血圧」「眼精疲労」「ぢ」「肩こり」・・「寝不足」「"旨い"食事」「水分不足」に「喫煙」。不規則な労働環境と不摂生な生活習慣(p127)
ドライバーは運送業ではなく待機業
また、運送業ではなく待機業というジョークがあるくらい、理不尽に待たされることがあるという。日本の工場ではジャスト・イン・タイムということで、「時間どおり」に到着することを求められます。ところが、時間通りに到着しても荷下ろしさせてくれなかったり、他のトラックの作業が終わるまで待たせたりするというのです。
国土交通省も、2017年に「待機時間料」を規定していますが、現場では支払いもなく、荷待ち時間短縮の改善努力すらなされない現場が多いという。渋滞していようが、スピード出すな。ただし、途中休みも取れ。でも遅れるな。早く着いても近くで待つなと言われるのがトラックドライバーなのです。
「路上駐車するな」と言われる一方で、「なんで時間どおりに来ないんだ」とクレームが入る日々(p4)
大型トラックは時速90キロ制限
もちろんトラックドバイバーのために4時間走ったら30分休憩とか、運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内などの労働基準が決められています。しかし現場では、たとえ時間や駐車場所がなくても、どこかで休憩を「取らなければならない」ので、逆にストレスが増えるのも事実なのです。
お客様のところに間に合わないかもしれないと思いながら、休みも取らないと法律違反になってしまう!とか、休みを取りたいのにトラック用の駐車場に普通自動車が停まっていて休めない!などということが起こるのです。
私は初めて知りましたが、大型トラックには、高速道路での事故防止のため、2003年から時速90キロのスピードリミッターが装着されているという。どおりで、トラックの追い越しがノロノロなわけです。
本来はトラックドライバーを守るための規則ではあるのだが・・たとえ時間や駐車場所がなくとも、どこかで休憩を「取らなければならなく」なり、むしろ精神的疲労(p77)
トラックは過失なくても過失致死傷罪
それ以外にも、トラックの脇をバイクがすり抜けようとして接触・転倒して死亡した場合、接触されたトラックドライバーが過失致死で逮捕されることがあるという理不尽さを紹介しています。さらに、そのトラックドライバーの実名をマスコミが報道することもあり、暴走ドライバーが人を轢き殺しても逮捕されないことがあるのに、この差はなんだろうと著者は問題提起しているのです。
なぜトラックドライバーが不足しているのかが、わかりました。ただ、トラックドライバーにも良い面もあるわけで、そのプラスとマイナスのバランスで決まるのでしょう。現場の声がリアルで楽しめました。橋本さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・駐車違反にハラハラしながら重い荷物を両手に抱えて走り、指定時間帯通りドアベルを鳴らすも反応がない(p4)
・「お客様」の敷地内。エンジンを切っての待機は、夏は「サウナ」で冬は「冷蔵庫」。場所によっては積み込みまでに半日待たされることもザラだ(p117)
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1章 トラックに乗ると分かること
第2章 態度が悪いのには理由がある
第3章 トラックドライバーの人権問題
第4章 高い運転席だから見えるあれこれ
第5章 物流よ、変われ
著者経歴
橋本愛喜(はしもと あいき)・・・大阪府生まれ。元工場経営者、日本語教師。現フリーライター。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異等、幅広いテーマを執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。
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