「スタートアップ―起業の実践論 ~ベンチャーキャピタリストが紐解く 成功の原則」伊藤 紀行
2023/06/20公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
ベンチャーキャピタルとは
将来有望なベンチャー企業に出資するベンチャーキャピタルで働く著者が教える起業での注意点です。著者のベンチャーキャピタルでは、毎月100社を超えるベンチャー企業と面談し、有望な投資先を選別するという。ベンチャーで大きく成長する確率は、100に1社、1000に1社といわれるなかで、出資先の20%が上場しているのは、選別眼がすごいと感じました。
紹介されているベンチャー企業のサービスは、確かにこれは成功しそうだなと思わせてくれるのです。例えば、弁護士を比較して選べる弁護士.comやオムツのサブスクサービス「手ぶら登園」、産地直送サイトの「食べチョク」など、どれを見ても魅力的なサービスです。もちろんサービスやビジネスモデルが良ければ成功するわけではないし、経営者の資質や、ブレークするまで資金繰りが続くのか、人材を集めることができるのかなど上場までのハードルは高いのです。
・産地直送サイトの「食べチョク」・・秋元氏のTwitterのフィードは、生産者の声で溢れている(p235)
ベンチャー起業の突き当たる壁
起業においては、各段階で壁があることがわかります。まず、アイデア段階では、自分がやりたいことだけではなく、そこに自分の得意なことも考えていく必要があります。得意なことは続くのです。
また、良いアイデアは出尽くしている場合が多いので、非合理に見える真実を発見できるのかという壁もあります。例えば、スキルマーケット業界では500円で自分のスキルを売るというサービスがありますが、常識で考えれば500円という価格設定は安すぎるといえるのでしょう。
さらに組織が大きくなってくれば、どこにリソースを集中するのか決めなければなりません。一点集中で、ゲリラ的に戦うのが、ランチェスター戦略なのです。また、リソースとしての人材を採用する壁もあります。成功することによって、新たな壁が出てくるのです。
・1時間かかるような作業をたったの500円で売るのは合理的じゃない(p75)
仕事の仕組み
上場も見据えるようなレベルになってくると、それなりの人材を集める必要も出てきます。また、スタッフが辞めても回る組織と、仕事の仕組み作りも必要になってきます。つまり、定期異動があっても仕事が回るように、全ての業務についてマニュアルがあり、仕事の記録が残り、資料も共有フォルダーに保存されるということです。
事例が多く、ベンチャー起業支援とはワクワクする仕事なんだなと感じさせてくれる一冊でした。伊藤 さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・なぜビジョンが重要なのか・・さまざまな困難が待ち受ける中で、「なぜこの事業をやるのか」の意思がないと心が折れてしまう(p242)
・"ベーシック人員"と"チャレンジ人員"を分けて考えてみる(p320)
・採用の心得・・「あの人はさすがに口説けないだろう」・・そういうレベルの人に対しても経営陣が自らどんどんアプローチする(p282)
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
Stage:1 課題発見~事業の核となる、アイデアを見つける~
Stage:2 仮説検証~アイデアを磨き、事業に昇華する~
Stage:3 資金調達~どういうポイントを押さえ、誰から調達するのか~
Stage:4 マーケティングと集客~戦略に沿った施策とブランディング~
Stage:5 起業の原体験とビジョン~ミッション/バリュー/ビジョンが会社の体幹をつくる~
Stage:6 採用と組織づくり~非連続な成長のための戦略とメンバー配置~
Stage:7 事業成長の機会とリスク~成長実現のために頭に入れておきたい主要論点~
Stage:8 IPOを実現するために~上場のプロセスと事業拡張~
著者経歴
伊藤 紀行(いとう のりゆき)・・・早稲田大学政治経済学部卒業、グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA, 英語)修了。株式会社ドリームインキュベータからDIMENSIONファンドMBOに参画、国内のスタートアップへの投資・分析、上場に向けた経営支援等に従事。主な出資支援先はカバー、スローガン、BABY JOB、バイオフィリア、RiceWine、SISI、他 全十数社。ビジネススクールにて、「ベンチャー戦略プラン二ング」「ビジネス・アナリティクス」等も担当。
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