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「負けない相続」依田渓一

2023/02/21公開 更新
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「負けない相続」依田渓一


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー


認識のズレが遺産相続で揉める

親が共同名義の土地を持っているので、相続対策を勉強しているなかで読んだ一冊です。三つの遺産相続紛争の事例について、小説形式で仮想体験できるところが素晴らしい。遺産相続紛争というと骨肉の争いというイメージがありますが、こうして読んでみると、兄弟であるからこそ本音で、「これぐらい配慮してくれてもいいじゃないか」という甘えが、相互不信を生み、妥当な線での合意を難しくしていることがわかります。


例えば、長男夫婦が親の介護をしていたら,介護していた分だけ遺産を多くもらいたいと主張したい気持ちはわかります。一方、次男や長女としては,介護したからといって差をつけることに納得できないこともあるでしょう。そうした認識のズレがあるときに、遺産相続で揉めることになるのです。こうした兄弟間の遺産相続紛争では、金額がたった数百万円の相続でも揉めることがあるという。


報われない介護・・・ただ黙々とお父様を介護するのではなく、率直に話し合って事前に相続対策をしてもらうとよかった(p42)

専門家である弁護士に相談

興味深いのは、生命保険金や葬儀費用は遺産分割の対象外で、保険金はそのままもらえるし、葬儀費用は喪主が負担するという原則です。また、相続手続き前に親族が勝手に現金や宝石・絵画を持ち出してしまうと,持ち出した証拠を示すことが難しく、多くの場合,泣き寝入りになるという。


こうした、遺産相続においては判例などに基づく基本的な考え方が存在するわけで、相続について専門家に相談する必要があることがわかります。この本では遺産相続紛争を弁護士を介して、家庭裁判所の調停で解決していますが、揉めてしまったら,専門家である弁護士に相談しないと交渉において不利な立場になってしまうのです。


そもそも相続は必ずやってくるものであり,事前に準備しておけば、時間もあるし、ある程度冷静になって、落ち着くべきところに落ち着く可能性が高まります。つまり,事前の準備が大切であり,事前の準備がないと、大きな揉めごとになったり,後悔することになるのです。


現金・宝石・絵画を持ち出されると泣き寝入りになる可能性大(p143)

小説形式で説明

相続関係の本はQ&A形式が多いなかで、調停に焦点を当てて小説形式で説明してくれるので、貴重な本だと思いました。3つのストーリーを仮想体験することで、事前に相続対策を考えておくことの大切さ,揉めたときの弁護士の必要性がよくわかりました。直接両親と相続について話すのは気が引けますが、後で苦労するよりも、早めに準備しておくことで残された人たちが助かるのです。


また,シロウト同士で相続を決めてしまうと声の大きい人の意見が通ってしまい,相続後の不満から人間関係を崩壊させる可能性があります。遺産をどう分割するのか、納税資金をどう出すか、節税になるのかなどの基本を自分で学んだうえで、ベテランの専門家に相談したいものです。依田(よだ)さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・段階的進行モデル=遺産分割調停におけるルール・・相続人の範囲→遺産の範囲→遺産の評価→特別受益・寄与分→遺産の分割方法の確定(p14)


・生命保険金は遺産分割の対象外・・・特定の相続人を優遇したい場合には生命保険を上手く活用(p152)


・葬儀費用は原則として遺産分割の対象外(p153)


▼引用は、この本からです
「負けない相続」依田渓一
依田 渓一、中央経済社


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次


第1編 物語編
 第1章 闘う勇気がある限り
 第2章 『三本の矢』とはいうけれど
 第3章 遅咲きのスミレ
第2編 解説編
 第4章 相続紛争の全体像
 第5章 「第1章 闘う勇気がある限り」を読み解く
 第6章 「第2章『三本の矢』とはいうけれど」を読み解く
 第7章 「第3章 遅咲きのスミレ」読み解く
 第8章 相続紛争で負けないための戦略



著者経歴


依田 渓一(よだ けいいち)・・・三宅坂総合法律事務所 パートナー弁護士。東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。第二東京弁護士会所属。相続・事業承継・不動産分野を中心業務とする。モットーは、「相談してよかった」と思っていただけるよう、期待の先を行くきめ細かな対応と情熱で、依頼者の正当な権利行使に向けて全力を尽くすこと。


相続関係書籍

「負けない相続」依田渓一
「磯野家の相続[令和版] 」長谷川 裕雅
「相続の落とし穴!共有名義不動産 想い出がきれいなうちにトラブル解決」松原 昌洙


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