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「日本がウクライナになる日」河東 哲夫

2023/02/18公開 更新
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「日本がウクライナになる日」河東 哲夫


【私の評価】★★★★☆(89点)


要約と感想レビュー


ロシアのミサイルや空母を製造していたウクライナ

ロシア大使館公使、ウズベキスタン・タジキスタン大使を歴任した著者に、ウクライナのロシア侵攻の背景について教えてもらいましょう。そもそもウクライナはソ連邦の中で、軍需産業の中心地でした。ロシアの長距離核ミサイルや空母を製造していたのは、ウクライナの会社だったのです。ロシアは単独で生きていくことが難しく、「植民地」としてのウクライナを失うわけにはいかなかったのでしょう。


今回のロシアの侵攻で、ベラルーシはロシア軍の出撃基地となっています。仮にロシアがウクライナを掌握してしまえば、後は「バルト三国」を取ることによって、飛び地カリーニングラードをロシア本土に再びつなげることができるのです。それがわかっているから、東欧諸国とNATOはウクライナでロシアが簡単に勝てないようにウクライナを軍事支援しているのです。


プーチンは2021年7月・・論文を発表し、ロシア人とウクライナ人はもともと同根・・・スラブ民族の団結はロシアの使命だと主張した(p22)

日本の核武装を議論

タイトルの「日本がウクライナになる日」が来ないようにするためには、著者が強調するのは、まず、日米同盟を大切にすることです。北欧諸国やソ連から独立した国々が、NATO加盟を目指すのはロシアの侵攻に備えるためです。強い軍事同盟がなければ、ウクライナのようになってしまうかもしれないという恐怖に突き動かされているのです。逆に言えば、日米同盟は北朝鮮、中国、ロシアにとって邪魔な存在です。日米同盟を破壊するために、日本国内の工作員を使って、沖縄基地問題やアメリカ人兵士の不祥事をあおったり、沖縄独立運動を支援し続けているのでしょう。


そして二つ目は北朝鮮、中国、そしてロシアの核ミサイルを抑止するために、日本自身の核武装が必要なのかどうか議論することです。ちなみにドイツには米軍の小型核兵器(戦術核兵器)を20ほど配備しており、敵がドイツに責めてきたら、核兵器で敵を殲滅することになっています。西欧人は合理的なのです。


日本では、「同盟」という言葉の意味、重みが理解されていない・・戦後の日本は、日米同盟が持つ抑止力で守られてきた(p107)

沖縄は日本が不法に占拠した領土

プーチンはスラブ民族だから統合の"権利"があると主張しています。ロシアはアメリカと同格であり「アメリカもやっている」のに、自分が侵略して何が悪いのかという考え方をしているのだという。このような考え方が通用するなら、中国はアメリカと同格であり、中国が台湾を併合して何が悪いのかということにもなりかねません。中国のマスコミが「沖縄は日本が不法に占拠した領土」あるという情報発信をしていることは偶然ではないのです。


ロシア・ウクライナ戦争について、これまで読んだ本の中で最もわかりやすい一冊となっていました。河東(かわとう)さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・ロシアは自分がそうだからなのか、ものごとは裏で政治的にすべて決まると思い込んでいる(p80)


・シロビキ勢力は、「プーチンを神輿にかついでいたのでは自分たちもやられる」と思ったとたん、彼を放り出して別の神輿を担ぐだろう(p92)


・ロシア人・・根底には、中東のバザール商人のぶったくり、ビザンチン帝国の専制主義、モンゴルが叩き込みロシアの貴族が受け継いだむき出しの力の支配(p69)


・中国は陝西(せんせい)省の工業団地に特別の工場まで作って、ウクライナの軍需工場技術者を家族ぐるみで誘致している。それは千人単位の規模だ(p112)


▼引用は、この本からです
「日本がウクライナになる日」河東 哲夫
河東 哲夫、CCCメディアハウス


【私の評価】★★★★☆(89点)


目次


第1章 戦争で見えたこと―プーチン独裁が引き起こす誤算
第2章 どうしてこんな戦争に?―ウクライナとは、何があったのか
第3章 プーチンの決断―なぜウクライナを襲ったのか
第4章 ロシアは頭じゃわからない―改革不能の経済と社会
第5章 戦争で世界はどうなる?―国際関係のバランスが変わる時
第6章 日本をウクライナにしないために―これからの日本の安全保障体制



著者経歴


河東 哲夫(かわとう あきお)・・・外交評論家/作家。1947 年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業後、1970 年、外務省入省。ソ連・ロシアには4度駐在し、12 年間を過ごしてきた。東欧課長、ボストン総領事、在ロシア大使館公使、在ウズベキスタン・タジキスタン大使を歴任。ハーバード大学、モスクワ大学に留学。2004年、外務省退官。日本政策投資銀行設備投資研究所上席主任研究員を経て、評論活動を始める。東京大学客員教授、早稲田大学客員教授、東京財団上席研究員など歴任。


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