「幸福学の先生に、聞きづらいことぜんぶ聞く」前野 隆司

【私の評価】★★★★☆（84点）

要約と感想レビュー

「幸福学」では何を教えている？

著者は慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科で「幸福学」を教えています。「幸福学」では何を教えているのでしょうか。まず、幸せのカギは4つあるという。「やってみよう！」「ありがとう！」「なんとかなる！」「ありのままに！」です。特に重要なのが「ありのままに！」であり、自己開示することで人は幸せになるというのです。

例えば、雑談しているときに、自分の失敗談を話した時に急に相手との距離が近くなることがあります。それを意図的に行うのです。もちろん初めて会った人にいきなりぶっちゃけるのは空気を読めない人ですが、できるだけ自分の気持ちを出すようにすると良いのです。慣れないうちは、感謝の気持ちを抱くだけでも十分だという。

・「何を話そうかと考えていたんですが、ぜんぜん思いつかないんです」とか・・ネガティブなことでもさらけ出すようになると、場の雰囲気がなごんで、人との距離が一気に縮まる（ｐ51）

幸せな人の特徴

また、長期的に幸せな人の特徴は、自分と他人を比べないということです。逆に言えば、自分と他人を比べて、優越感で満足している人は、幸せが持続しないという。例えば、自分と他人の財産を比べる人は、高級ブランド品を買って短期的には幸せかもしれません。しかしその幸せは買ったときだけなのです。会社内で同期の中で一番早く出世してワクワクしている人も、いずれは会社から定年退職することになるのです。その時に、ワクワクは続いているのでしょうか。

著者のお勧めは、自分と他人を比べなくても幸せになれる「モノより体験」です。例えば、旅行してみる。どうせ買うなら小さな個人商店で、オーナーと対話しながら買ってみる。お金を使うなら、自分が応援したい組織に寄付してもよいでしょう。幸せになれるポイントは百人百様であり、何が効果的かは一人ひとり違うのです。同じように幸せになれないポイントも人それぞれであり、どんな助言が役に立つかは、一人ひとり違うのです。

・他人との比較とは関係なく満足が得られる財は、「非地位財」と呼びます・・「モノより体験」です（ｐ135）

安心感を持てる人脈で幸せに近づく

そもそも、日本人は「心配性遺伝子」を持つ人が65％（アメリカ人は19％）と心配しすぎる傾向があるという。そうした日本人に先生のお勧めは、ブータン人のように、頼り合える人を50人作ることです。気兼ねなく自己開示できて、困っていたら助けてほしいとお願いできる人を作るのです。

だから個人的な幸せを、他人との幸せに変換するとよいという。例えば、仕事で大きな成果をあげたら、「みんなのおかげです。ありがとうございます」と言って人脈拡大に使うのです。著者は、「短期的な幸せ」を「長期的な幸せ」に変換すると表現しています。人間は社会的動物といわれますので、そうした安心感を持てる人脈を持てれば幸せに近づくように感じました。前野先生、良い本をありがとうございました。

この本で私が共感した名言

・自分のいいところを見つけて、できれば紙に書き出してみてください。そして、できれば1日5分、自分をほめる時間をつくってください（ｐ88）

・「ちょっと好き」なことを10個、書き出してみて、そのなかでもいちばん好きなことをコツコツやってみる（田口一成）（ｐ154）

・物事をゲーム感覚でとらえる（ｐ211）

▼引用は、この本からです

前野 隆司、大和書房

【私の評価】★★★★☆（84点）

目次

１　幸福学？それ、学問っていえるんですか？
２　恋愛？要はステータスの高さでしょ？
３　お金？あるだけいいに決まってません？
４　友人？少ないですが、それがなにか？
５　先生、ぼくにもっとできること、ありますか？

著者経歴

前野 隆司（まえの　たかし）・・・1962年山口生まれ。広島育ち。84年東工大卒。86年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント（SDM）研究科教授。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。

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