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「あなたを変える行動経済学:よりよい意思決定・行動をめざして」大竹 文雄

2022/12/14公開 更新
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「あなたを変える行動経済学:よりよい意思決定・行動をめざして」大竹 文雄


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

 この本の前半は、意思決定するときによくある錯覚、間違いとして、サンクコスト、先延ばしの心理、利得より損失を大きく感じることについて説明しています。


 まず、1つ目のサンクコストとは、すでに支払ってしまったお金のことで、取り戻すことができないので、判断材料にしてはいけないという理屈です。例えば、売れ残った商品はもったいないので倉庫に保管しておくより、アウトレットモールのようなところで極安にしてでも売ったほうがいいとなります。


 2つ目の先延ばしの心理は、期限まで着手を先延ばししてしまうというものです。ですから、大きなプロジェクトでは工程を細かく分割して期限を数多く作り、先延ばしを減らすことが効果的なのです。


 3つ目の利得より損失を大きく感じることは、「メンバー登録すると1%分のポイントがもらえます」という表現より、「メンバー登録しないと1%分のポイントがもらえません」という表現のほうが登録率が上がるというような事例が紹介されています。


 見せ方で人の感じるところが違うというのが、不思議であり面白いところなのでしょう。 


・損をする場面では、確実に損をすることを嫌い、たとえ大きく損をする可能性があっても、損をしない可能性が含まれる選択肢を魅力的に感じる(p58)


 後半の人間の錯覚というか心理学を使った誘導が紹介されています。とくに「ナッジ」といわれるちょっとした工夫で良い結果を誘導する事例が面白いのです。例えば、食堂などで、果物を目の高さに置いてより取りやすいようにして健康的な食事に誘導するナッジ。


 また、2交代の看護師のユニフォームを日勤は赤、夜勤は緑にしたら、看護師たちの残業時間が大幅に減ったというのです。赤の中に一人だけ緑がいたら残業しずらくなるし、頼みずらくなる。千葉市役所では育児休業を取得しない場合に上司が理由を聞き取る制度を取り入れたところ、12.6%だった男性職員の育児休暇取得率が65.7%に急上昇したという。


 最後に、日本の臓器提供同意率は13%ですが、99%のオーストリア、ベルギー、フランス、ハンガリーなどではドナーになりたくない人だけがサインするようになっています。臓器提供がデフォルトになっているのです。このように正しく制度設計すれば、人を動かすことができると実感しました。あとはやるか、やらないかだけなのです。


・「ナッジ」(nudge)は、英語で「注意を引くために肘で人を軽く押す」という意味です(p160)


 大学の先生だけあって、研究成果をもとにすべて数字による定量的な事例・成果を説明してくれるところが素晴らしい。こうした心理学的なテクニックは営業や組織運営で活用されています。良い事例はこうした本を読んで、どんどん活用してほしいものです。


 事例が多かったので★4としました。大竹さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・アンカリング・・値段の高い高級品が入口に飾ってあり、店内に入って、それより安い値段があるのを見ると、なんとなく安いように見えてしまいます(p151)


・患者が予約カードに次回の診察の日時を記入することを看護師に確認してもらうようにすると、18%無断キャンセルが減りました(p133)


・ピア効果・・・水泳チームに速い選手が移籍した場合、チーム全員のタイムが速くなる(p207)


・計画をさせたグループでは・・・実際に就職した人も26%多くなりました・・行動計画の作成(p216)


・自分の前ではなく、自分からは見えない後ろのレジにいる人がレジ打ちの達人であるということを知っていたほうが、人は頑張る(p205)


▼引用は、この本からです
「あなたを変える行動経済学:よりよい意思決定・行動をめざして」大竹 文雄
大竹 文雄、東京書籍


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

序章 直観が邪魔をする
第1章 「もったいない」を考える
第2章 損失は避けたい
第3章 先延ばしの心理
第4章 暗黙の選択の利用
第5章 みんながしています
第6章 ナッジとは何か?
第7章 仕事や勉強の中の行動経済学



著者経歴

 大竹文雄(おおたけ ふみお)・・・大阪大学CiDER特任教授・経済学研究科(兼)。1961年生まれ。京都府宇治市出身。京都大学経済学部卒。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。博士(経済学)(大阪大学、1996年)。専門は労働経済学、行動経済学。2008年日本学士院賞。大阪大学理事・副学長、日本経済学会会長などを歴任。現在、大阪大学感染症総合教育研究拠点・特任教授(常勤)。


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