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「ウクライナ危機の実相と日露関係」東アジア共同体研究所

2022/12/04公開 更新
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「ウクライナ危機の実相と日露関係」


【私の評価】★★★☆☆(70点)


要約と感想レビュー

 高野孟というジャーナリストはどういう人なんだろうと手にした一冊です。2014年のロシアのクリミア侵攻後に作成されたこの本のテーマは、ウクライナです。確かにウクライナのロシア寄りのヤヌコビッチ政権は2014年、暴力的な反政府デモによって崩壊し、ヤヌコビッチはロシアに亡命しています。反政府運動にアメリカやイギリスの諜報組織が支援していたと考えられています。


 高野氏はプーチンのクリミア侵攻後の主張を引用し、欧米的な価値観に立った一方的な論調が流布されて、日本のメディアが何の疑いもなくそれを受け売りしてきたと断定し、「ロシア=悪者」論に疑問を呈しています。つまり、高野氏はクリミアがロシアの勢力圏であることは明白であり、ロシアのクリミア侵攻はアメリカやイギリスのウクライナをNATOやEUに加盟させようとする工作活動への対抗策として当たり前であるとしているのです。


 ウクライナの民主化勢力に対して、西側の諜報機関とジョージ・ソロスなどの西側の金融資本勢力が援助しているのは事実なのでしょう。そうした活動は、ロシアや中国などの専制国家を刺激するので、やめたほうがよい、というのがこの書籍の参加者の一致した考え方なのです。


・ジョージ・ソロスもソロス財団を作って、特に中央アジアの"民主化"にものすごい金を突っ込みました・・・市場経済を広めていけばいくほど、金融資本にとっては稼ぎ場が出てくる(高野)(p69)


 この本に参加している日本人とロシア人は、東アジア共同体を作ろうと提案しています。中露韓日で東アジア共同体を作り、領土問題を棚上げにして経済的な一体化を目指すものです。それを日本で主張するのが鳩山友紀夫であり、ロシア側参加者であり、中国の要人も東アジア共同体というコンセプトには同意していると鳩山友紀夫氏は説明しているのです。


 その提案に対抗するのは、安倍首相の価値観外交です。安倍首相の価値観外交について、鳩山友紀夫氏は中国包囲網をやろうとして、日本が逆に包囲されるだろうと批判しています。確かに日本は、中国、北朝鮮、ロシアに包囲されているかもしれませんが、中国や韓国やロシアのような自由のない国には住みたくないという日本人が多いのではないでしょうか。東アジア共同体ができれば、鳩山友紀夫氏や高野孟氏は日本自治区の支配者になれるので、自由がなくてもかまわないのでしょうか。


 東アジア共同体として、アジアスーパーグリッドという構想を紹介しています。ロシアも含む大陸と日本の電力系統を接続して、アジア全体で電力の需要と供給のバランスを取るというものです。ロシアにエネルギーの半分を依存しているドイツがどうなったのか考えれば、アジアスーパーグリッドは難しい選択肢といえるのでしょう。


・価値観外交・・中国包囲網をやろうとして、日本が逆に包囲されるんですよ(鳩山)(p48)


 高野孟氏は、ソチ冬季五輪の開幕式で日本を除く主要国の首脳が揃ってボイコットしたことについて、プーチンに屈辱を味わわせ、「ウクライナに手を出したら承知しないぞ!」という脅迫的なメッセージを叩きつけたと表現しています。あまりにもロシア側の立場に立ちすぎているように感じました。


この本で私が共感した名言

・プーチン大統領の周辺には、欧米の力は相対的に弱まっているので、インドや中国と組めば何とかなるという強硬策を主張しているグループもあります(下斗米)(p21)


・東アジア共同体研究所・・・共同体の中で、基本的に領土問題は意味がなくなる・・紛争を解決できる可能性は高い(サルキソフ)(p47)


・東アジア共同体という発想を進めることによって、例えば日中間あるいは日韓間、日露間の領土問題をだいぶ小さくしていくことが十分可能(鳩山)(p103)


▼引用は、この本からです
「ウクライナ危機の実相と日露関係」


【私の評価】★★★☆☆(70点)


目次

第1章 緊迫するウクライナ情勢と日本
第2章 ウクライナ危機から東アジアは何を学ぶか
第3章 クリミアの現地で見たウクライナ内戦
第4章 プーチン=悪者論で済ませていいのか?―ウクライナ/クリミア争乱の深層
第5章 日露関係の未来を占う



著者経歴

 鳩山友紀夫(由紀夫)(はとやま ゆきお) ・・・1947年生まれ。第93代内閣総理大臣。一般財団法人東アジア共同体研究所理事長、アジアインフラ投資銀行国際諮問委員会委員。


 下斗米伸夫(しもとまい のぶお) ・・・1948年生まれ。法政大学名誉教授。専攻は、比較政治、ロシア・CIS政治、ソ連政治史。「旧ソ連・ロシア研究の第一人者」


 コンスタンチン・サルキソフ・・・全ロシア日本研究会名誉会長、山梨学院大学名誉教授。ロシア科学アカデミー東洋学研究所(ロシア)特別顧問・所長。1942年、旧ソ連邦アルメニア共和国生まれ。66年にサンクトペテルブルク国立大学東洋学部日本学科を卒業。


 木村三浩(きむら みつひろ) ・・・一水会代表。「月刊レコンキスタ」発行人。元統一戦線義勇軍議長。慶應義塾大学戦没者追悼実行委員会委員。一般社団法人世界愛国者交流協会代表理事。愛国者インターナショナル世界大会(準)実行委員。


 アナトリー・コーシキン・・・1946年生まれ。モスクワ東洋大学教授。軍事外国語大学(モスクワ)卒業、ソ連国防省軍事史研究所大学院修士課程修了。全ソ労評機関紙「トルード」東京支局長、ロシア国防省軍事史研究所上級研究員を経て、ロシア東洋大学教授、大阪経済法科大学アジア太平洋センター客員教授、歴史学博士


 高野孟(たかの はじめ)・・・1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時にニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。08年に"THE JOURNAL"に改名し、半農半ジャーナリストとしてインサイダーを主コンテンツとする週刊メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を発信中


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