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「確率思考 不確かな未来から利益を生みだす」アニー・デューク

2022/05/02公開 更新
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「確率思考 不確かな未来から利益を生みだす」アニー・デューク


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 著者は20年間プロのポーカープレイヤーとして何度もポーカー大会で優勝、チャンピオンとなり600万ドル(8億円)以上稼いだという。著者がこの本で教えてくれるのは、合理的に結果から学び、意思決定プロセスからできるかぎり感情を排除することです。著者が気づいたのは、ポーカーと人生の意思決定が似ているということ。どんなカードが配られるのかという不確実性。結果でお金が手に入るかどうか決まるというリスク。重要な情報がすべて手元にない状況の中で、決断しなくてはならないのです。


 人間には、良い結果は自分のおかげで、悪い結果は運が悪かったと考える本能があります。ポーカーで勝ったら自分に才能があるのではないかと誤解し、ポーカーで負けたら運が悪かったと自分を納得させてしまうのです。冷静に考えれば、ポーカーで勝ったのは偶然であり、負けたのは自分の戦略が間違っていたということもあるはずです。ただ、その場で正確に自分の状況を把握できる人は、ほとんどいないということです。


・良い結果は自分のおかげで、悪い結果については運が作用したから自分のせいではない・・・「自己奉仕バイアス」と呼ばれる(p112)


 ですから、プロの著者であってもポーカーで限度額まで負けたら、その場から去ることをルール化しているとのこと。その場から離れて冷静に考える時間が必要なのです。失敗があなたを不安にさせること、失敗したときに運のせいにしたりする人間の認知バイアスへの対抗策なのです。


 著者がおススメするのは、意思決定によって得られた結果を、合理的に自分の「選択の良否」と「運の良否」に分類するということです。それは成功したら自分の能力が高く、失敗したら運が悪いと思いがちな人間の特性との戦いなのです。実際、プロの世界では、うまくいったとしても自分の足りないところを改善しようと考える人は多いし、失敗しても堂々と戦略を維持する人がいます。どんなに良い決断をしても、失敗に終わることがあることを知り、結果を受け入れるのです。自分の能力と運をうまく切り分けることができるのか、どうかということなのです。


・あらかじめ「損失限度額」を決めておく・・・負けている最中の私にはその原因が不運なのか自分のプレーなのか合理的に判断できない(p166)


 だたし、すべての人にこうした視点を強制する必要はないと著者は考えています。なぜなら、すべての人が真実を追及しようとは思っていないからです。例えば、人生に挫折し苦労している人。「俺は、なんて運がないんだ」と嘆いている人に、いきなり「問題はあなた自身ではありませんか?」と言ったとして、受け入れる人はどれだけいるでしょうか。


 受け入れるためには、その人との人間関係もあるし、その人が受け入れるだけの心理状況になっていなければ難しいでしょう。冷静に考えれば、環境を変えることは難しく、自分を変えることは容易なのです。しかし、それを受け入れるということは「自分がバカである」ことを認めることになってしまうから難しいのです。


 この本に、一流の人に感じる共通の匂いを感じました。ポーカーという世界で実績を出してきた著者に、運は受け流し、正しい戦略を行い続けようという規律を感じるのです。デュークさん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・意思決定は未来に対する賭けであり、一度の結果の良し悪しで決定が「正しかった」か「間違っていた」かを判断することはできない(p43)


・「後付け」・・・経験豊かなプレイヤーたちは私に後付けの危険性を教え、短期的にゲームの結果が悪くて戦略を変えたくなっても、その衝動に打ち勝たなくてはならないと警告してくれた(p12)


・認知の罠・・・本当は相関関係しかないのに因果関係があると思い込んだり、自分が望むストーリーの根拠となるデータだけを選び出したりする(p18)


・6:4や7:3の確率で勝てる状況でも負けることがあると、私は身を持って知っている(p43)


・ある人が自分の考えは絶対に正しいと言い、別の人が「正しいとは思いますが、80%の自信です」と言えば、どちらを信じようと思うだろうか?・・・己を知っていて思慮深い人は信頼できる(p91)


・スロットマシンはカジノのなかで最も勝てないゲームだが、それにもかかわらずいつも席が埋まっている(p110)


・幸福の大部分は人と比較する本能から生まれるのである(p129)


▼引用は、この本からです
「確率思考 不確かな未来から利益を生みだす」アニー・デューク


【私の評価】★★★★★(90点)


目次

はじめに――本書がポーカー攻略本ではない理由
第1章 人生はチェスではなく、ポーカーだ
第2章 じゃあ、賭けてみる?
第3章 賭けから学ぶ――どんな結果も上手に処理する
第4章 仲間をつくる
第5章 反対意見を味方に
第6章 心のタイムトラベル



著者経歴

 アニー・デューク(Annie Duke)・・・ワールドシリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)やNBCナショナル・ヘッズアップ・チャンピオンシップなど世界最高峰の大会で優勝した経験を持つ、数少ない女性ポーカープレーヤー。現役引退後は、ポーカーの競技経験と大学・大学院で学んだ心理学の知見を活かして、意思決定のコンサルタントとして活躍。非営利団体「How I Decide」を主宰し、青少年の考える技術を向上させる慈善事業にも従事している。コロンビア大学で英文学と心理学専攻、ペンシルベニア大学で認知心理学の修士号を取得。


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