人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「偉人しくじり図鑑」河合 敦

2022/01/19公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「偉人しくじり図鑑」河合 敦


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

 日本の歴史中から失敗事例を紹介し、そのしくじり具合を味わう一冊です。


 歴史には成功者の歴史もあれば、失敗者の歴史もあります。ちょっとした判断ミスが身の破滅になることもあえれば、あと一歩で勝てるかもしれないのに、自分から逃げて負けてしまう例もあります。


 例えば、徳川慶喜(よしのぶ)は鳥羽伏見の戦いで自ら前線に出馬すると発言しながら、その日の夜に大阪城から江戸へ逃亡し、徳川幕府の消滅を決定的なものとしてしまいました。また、近衛文麿は中国での不拡大方針を唱えていたにもかかわらず、ドイツ駐中大使トラウトマンが調停していた日中和平案を蹴って、戦争継続を宣言してしまうのです。


・近衛文麿・・・国民政府を対手(あいて)とせず・・・対手としないということは否認するというより抹殺するということです(p94)


 興味深いのは、やはりこうした「失言型」でしょう。実際にその人の口から出たのですから、そう言わせる何か背景があったのか。それとも、判断ミスだったのか。参謀にスパイがいたのではないか。そうした背景を調べながら、こうした記録が本当かどうか考えてみるのが面白いのです。


 例えば、関東大震災後に銀行は決済が難しくなって、支払猶予や日銀による銀行の不良手形割引きなどによりこの危機を乗り切ろうとしていました。そうした中で、大蔵大臣片岡直温が国会答弁で「東京渡辺銀行が破綻しました」と発言してしまったのです。実際に東京渡辺銀行は大蔵省に支援をお願いしていたようですが、営業しており、明らかな間違い、失言でした。この発言により取り付け騒ぎがおこり金融恐慌となってしまったのです。


・片岡直温(なおはる)・・・とうとう東京渡辺銀行が破綻いたしました(p86)


 テレビの「しくじり先生」のようなイメージで作られた本でした。確かに、歴史の面白さは、失敗事例にあるのかもしれません。もし、あのとき軽口を発していなかったら・・・。もし、あのとき自重していれば・・・しくじり先生の地位が高いほど、その歴史に与える影響は計り知れないものとなるのです。


 「口は災いのもと」「綸言汗の如し(りんげんあせのごとし)」「一度口から出た言葉は戻らない」ということわざがあるように、発言には気をつけたいものです。河合さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・いちばん多い「しくじり」が、軽い気持ちで発した失言だ(p2)


・崇峻(すしゅ)天皇・・・本人のいないところだったのに悪口で暗殺されてしまった天皇(p56)


・織田信雄・・・凡将であったこと、それが皮肉にも、命脈を保つ最大の要因となったのではなかろうか(p36)


・北条時宗・・・文永の役を乗り切った後も国防を強化し、元からの死者をことごとく処刑・・・やがて鎌倉幕府崩壊の一因となる(p170)


▼引用は、この本からです
「偉人しくじり図鑑」河合 敦
河 敦、秀和システム


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

第1章 うっかり型......四条天皇、足利尊氏、織田信雄、薄田兼相、田中新兵衛
第2章 失言型......崇峻天皇、淳仁天皇、源範頼、片岡直温、近衛文麿
第3章 油断型......大内義隆、陶晴賢、伊東甲子太郎、近藤勇、大久保利通
第4章 短気型......藤原伊周、平清盛、北条時宗、龍造寺隆信、平賀源内
第5章 身の破滅型......伴善男、福島正紀、井上正甫、佐久間恪二郎、徳川慶喜



著者経歴

 河合 敦(かわい あつし)・・・歴史研究家・歴史作家・多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。1965年、東京都生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。歴史書籍の執筆、監修のほか、講演やテレビ出演も精力的にこなす。


ランキング

この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

ブログランキングにほんブログ村


メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』]
3万人が読んでいる定番書評メルマガです。
>>バックナンバー
登録無料
 

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメントする


同じカテゴリーの書籍: