「未来を大きく変えるドラッカーの問い Drucker for Survival ドラッカー・フォー・サバイバル」井坂 康志

【私の評価】★★★★★（92点）

要約と感想レビュー

本質を問う質問

ドラッカーは最高の経営学者であり、コンサルタントであり、未来学者として多くの経営者が参考にしています。ドラッカーは経営者に対し、「あなたの会社は何のために存在しているのか」と問いかけています。例えば、「自分を使って何ができるのか」「ここしばらくで最もうまくいったものは何ですか？」「さしたる努力もなしに、あがった成果は何ですか？」などです。

こうした本質を問う質問を見ていると、ドラッカーは書籍によって、経営者へのエグゼクティブコーチングをしているようなものなのです。ちなみにドラッカーは、会社とは人と社会のため、つまり、世のため人のために存在すると定義しています。企業の戦略とは、顧客から何が見えているかがすべてと定義しているのです。

「良い会社」の条件は何か。・・・「何のために存在しているか？」との問いを中心にもつ点です（ｐ59）

ドラッカーは価値観を優先

ドラッカーの素晴らしいところは、会社への問いと同じように、知識労働者である会社員にも問いを発しているところです。あなたは何者なのか、あなたの強みは何なのか、その強みをどう生かすのか、定年後の40年をどう生きるのか？具体的には、「あなたは会社で敬意を払われていますか？」「仕事のために勉強したいと社員が言ったら会社は応援してくれますか？」なども興味深いものです。

面白いのは、自分の得意なことと価値観が合わない場合にはどうすれば良いのか、ドラッカー自身も悩み抜いていることです。20代のドラッカーは投資銀行で成果を出し、高給を得ていましたが、金を稼ぐだけの仕事に意義を感じることができず退職し、アメリカの大学に転職しています。自分の強みと価値観が合わないとき、ドラッカーは価値観を優先して、人生をリセットしているのです。

知識労働者・・・自分は何者か？自分が属するところはどこか？強みを生かす貢献は何か？・・第二の人生はどこにあるか？（ｐ221）

あなたの強みを生かす第二の人生はどこにあるのか？

特に50代ともなれば、世の中は見えているし、自分の強みもわかっているはずです。そうしたときに、「あなたの強みを生かす第二の人生はどこにあるのか？」と問われると、すぐに答えられるでしょうか。ドラッカーのお勧めは、フィードバック分析として「できたこと」「できなかったこと」を照合し、「できたこと」にフォーカスして強化していく方法です。

「コンサルティング・ファーム」という単語は、ドラッカーが作ったことにも驚きました。ドラッカーはマッキンゼーの創始者マービン・バウワーと二人は政府機関に勤務しているとき、バウワーからマッキンゼーを何と呼んだらいいのかと聞かれ、「コンサルティング・ファーム」と答えたというのです。

ドラッカーの本が、なぜ今も読み続けられているのかがわかりました。それは読んでいる人に、問い、考えさせるからです。井坂さん、良い本をありがとうございました。

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この本で私が共感した名言

・弱みに目が行くものをリーダーにしてはいけない（ｐ172）

・小さく始める・・・ドラッカーのイノベーションは、「地道な仕事」・・・変化を見つけることは、日々の堅実な行動の積み重ね（ｐ97）

・徹底した成果主義・・・チームや人の成果を保持し、強みを伸ばすことに集中しなければなりません（ｐ150）

▼引用は、この本からです

【私の評価】★★★★★（92点）

目次

第１部　今、ドラッカーから学ぶこと
第２部　マネジメントの樹を育てる
　第１章 事業は一本の樹　
　第２章 マネジャーとは誰か
　第３章　リーダーシップの考え方
　第４章　戦略の考え方
　第５章　知識とは何か
　第６章　フィードバック分析
第３部 ドラッカーに学ぶ生き方と働き方の作法

著者経歴

井坂 康志（いさか　やすし）・・・ドラッカー学会理事、商学博士。2005年5月、ドラッカーに対してクレアモントにて外国人編集者として最後の独占インタビューを行ったドラッカー研究の第一人者。1972年埼玉県加須市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。現在、ものつくり大学特別客員教授、ドラッカー学会理事・事務局長、早稲田大学法学部非常勤講師。

ドラッカー関係書籍

「未来を大きく変えるドラッカーの問い Drucker for Survival ドラッカー・フォー・サバイバル」井坂 康志
「ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント」藤田 勝利
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」岩崎 夏海

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