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「官僚の本分」柳澤協二, 前川喜平

2021/05/09公開 更新
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「官僚の本分」柳澤協二、前川喜平


【私の評価】★★★☆☆(70点)


要約と感想レビュー

面従腹背の前川文部科学事務次官

私の働く業界の大先輩は「官僚は人間のクズである」と公言して後に謝罪しましたが、実は本当なのかもしれないと思いました。


この本では、出会い系バーで女性にお小遣いを渡していた前川文部科学事務次官が、仕事での「面従腹背」とそれまで官僚だけで人事を自由にできたことを告白しています。業界の人には常識かもしれませんが、安倍政権の前は官僚の人事は官僚自ら行っていたとは、ひどい組織だと思います。前川氏が自ら言うように「権力は腐敗します」。官僚も腐敗しているのでしょう。


文部科学省は利権が少ないほうですが、大学や教育関係に天下っている実体があるにもかかわらず、国土交通省や農水省や大蔵省に比べれば弱い省庁であり、他省の利権がうらやましいと告白しています。権力に執着する官僚、ここに極まれりというところでしょうか。
 

・国土交通省とか農水省ならば、たんまりと補助金を持っていて、議員の選挙区におカネを付けますよということができる・・・国税庁は、「先生の事務所はどうも脱税している疑いがありますよ」と迫ったり・・・文部省はどちらも持っていないのです(前川)(p35)


中国のミサイルには勝てない

柳澤氏は日本の軍隊のようになっていはいけない。軍事力増強しても中国のミサイルには勝てない。敵対するより仲良くやっていったほうがよい、という主張をしています。確かに現実的であり、昔のチベット、ウイグル、モンゴル自治区と同じ考え方だと思いました。


柳澤氏と前川氏の言うとおり中国と対立せず、香港や台湾のように中国と一体化されることが、日本のためになるのでしょう。柳澤協二さん, 前川喜平さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・文部科学事務次官だった時期も含め現職公務員の間、私は「面従腹背」はしていましたが「乱」は起こしませんでした。加計学園問題について公に発言したのは事務次官を辞めたあとのことです(前川)(p3)


・内閣人事局と人事検討会議という仕組みを通じて、事務次官、局長などの各府省の幹部職には、官邸の気に入った人物しか就くことができなくなり、官僚人事の政治任用化が進みました(前川)(p6)


▼引用は、この本からです
「官僚の本分」柳澤協二、前川喜平


【私の評価】★★★☆☆(70点)


目次

第一章 政治と現場の間にある官僚という仕事
第二章 安倍政権とそれを支える官僚のこと
第三章 自衛隊論と教育論の接点を論じる



著者経歴

柳澤協二(やなぎさわ きょうじ)・・・東京大学法学部卒。防衛庁に入庁し、同運用局長、防衛研究所所長などを経て、2004年から2009年まで内閣官房副長官補(安全保障担当)。現在、国際地政学研究所副理事長。


前川喜平(まえかわ きへい)・・・1955年、奈良県生まれ、東京大学法学部卒。禁止されていた天下り斡旋の違法行為による停職相当の懲戒処分を受けて文部科学事務次官を退職。貧困問題の調査のために出会い系バーで女性に小遣いを渡していた。


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