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「見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか」

2021/02/27公開 更新
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「見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか」


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

中国共産党の長い手は、あらゆる国に伸びています。2009年から15年の間にアメリカで行われたすべての経済スパイ事件に関する調査では、告発された者の52%が中国系であったという。2019年には、欧州対外行動局がブリュッセルに約250人の中国スパイがいるとして、外交官や軍人たちに、首都の特定の飲食店を避けるよう促しているのです。


特に注目すべきのは、中国が各国のVIPに資金提供して、中国側に取り込んでいることでしょう。例えば、2013年6月にバイデン・米国大統領の息子ハンターは、「中国銀行」を筆頭株主とした「BHRパートナーズ」というファンドを中国で開設しています。ハンターの持つ株式は約2千万ドルの価値があるという。オーストラリアでは、ファーウェイの役員会の会長に、元海軍少将のジョン・ロードが就任しています。大丈夫なのでしょうか。


その逆で中国での商売をうまくやるために、中国人に賄賂を渡している会社がたくさんあります。例えば、JPモルガンは中国で太子党を雇っていたことが発覚し、これをアメリカ証券取引委員会は「組織的な贈収賄」と認定しています。2015年には、ブリッジウォーターの創業者であるレイ・ダリオは、中国の債務危機が臨界点に達しているので、できるだけ早く売却すべきであるとクライアントに内密に助言していましたが、助言がリークされると、「中国の長期的な見通しは良好である」と主張して、2017年に中国で最初の外資系資産運用会社を設立させています。


中国は最近、中国に逆らう国に貿易を禁止するなどして制裁しています。例えば、2018年、カナダでファーウェイ幹部の孟晩舟が逮捕されると、中国はカナダ産の大豆、キャノーラ、そして豚肉などの輸入を禁止しました。このように、中国は飴と鞭を使って、世界をコントロールしようとしているのです。


2017年の「国家情報法」では、すべての中国市民と組織が「国家情報工作」に協力し、あらゆる指示に従うことを義務づけています。中国の統一戦線工作部は、世界各地で「華僑サービスセンター」(華助中心)を設立し、各国にいる反体制派や批判的な中国人の活動を監視しているという。同じように2004年から海外の大学に孔子学院を設立して、中国共産党のプロパガンダを行い、さらに現地の中国人を監視し、コントロールしているというのです。


中国共産党の工作活動を羅列していて、読んでいて疲れました。ハミルトンさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・「党」と「人民」を区別することは、中国と西洋諸国の間の争いが「文明の衝突」ではないことを理解するためにも不可欠である(p16)


・「有用な馬鹿者」(レーニンに由来する言葉で、革命に熱狂する素朴な外国人を表現したもの)(p123)


・中国企業は現在、欧州9か国の空港、港湾、風力発電所を所有している・・欧州最大のロッテルダム港、アントワープ港、ゼーブルージュ港の全部、またはその一部も中国によって所有されている(p159)


・法輪功にはとくに政治的な意図はなかったが、・・1999年に江沢民首相は猛烈な取り締まりを開始した・・(法輪功の)信者たちは中国にいる家族を処罰したり殺害すると脅迫電話を受けた(p175)


▼引用は、この本からです
「見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか」


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

中国共産党の野望の全体図
レーニン主義政党、世界へ
政治エリートの中心:北米
政治エリートの中心:ヨーロッパ
地方・周辺部の政治エリート
党と企業の複合体
華僑の動員
スパイの実態
メディア:またの名を中国共産党
文化を戦場にする
シンクタンクと知識人たち
思想の管理:欧米の学術界への中国共産党の影響力
グローバル・ガバナンスの再構築



著者経歴

クライブ・ハミルトン(Clive Hamilton)・・・オーストラリアの作家・批評家。著作に『目に見えぬ侵略:中国のオーストラリア支配計画』(Silent Invasion: China's Influence in Australia)『成長への固執』(Growth Fetish)、『反論への抑圧』(Silencing Dissent:サラ・マディソンとの共著)、そして『我々は何を求めているのか:オーストラリアにおけるデモの歴史』(What Do We Want: The Story of Protest in Australia)などがある。14年間にわたって自身の創設したオーストラリア研究所の所長を務め、キャンベラのチャールズ・スタート大学で公共倫理学部の教授を務めている。


マレイケ・オールバーグ(Mareike Ohlberg)・・・ベルリンを拠点に、中国のデジタル政策と中国共産党の世界的な影響力を研究。コロンビア大学で東アジア研究の修士号、ハイデルベルク大学で中国研究の博士号を取得。2016年から2020年まで、メルカトル中国研究所リサーチアソシエイト。ヨーロッパにおける中国の動向を、政府や政策立案者に紹介する仕事に従事。同研究所の画期的な報告書『権威主義の前進:ヨーロッパにおける中国の政治的影響力の増大に対応する』(Authoritarian Advance: Responding to China's growing political influence in Europe)の共著者。


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