もう騙されないぞ「学者のウソ」掛谷英紀
2021/02/16公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
ウソもどうどうと言えば本当になる
この本では権威ある学者・政治家やメディアのもっともらしい主張の中から、ウソの事例を示した一冊です。緑のダム構想、ダイオキシン報道、ゆとり教育など本質が正確に把握されないまま進められた政策は多いのです。
例えば、戦争反対、防衛費1%厳守といった「反戦番組」も多いのですが、内容はどうかといえば反米、反日を拡散するための内容で、「反戦」という看板を利用しているものも少なくありません。そういう番組に限って、中国や北朝鮮の軍拡行為や挑発行為に対して、反対の主張をすることはほとんどないのです。
世の中には100%の正解はない、と言われますが、公共の法則を使ってウソや詭弁で政策を誘導しようとするのはいかがなものかと感じます。
「緑のダム構想」・・・遊水地推進と、公共事業の負担増や土地収用強化への反対の間にある対立関係・・・実際、長野県の場合も、田中知事はダム建設の代替案として遊水地確保を打ち出したが、結局計画は頓挫した(p42)
朝日新聞はスポンサーに配慮していた
面白いのは1999年~2005年と古いデータですが、新聞報道の公平性を分析した結果でしょう。企業による脱税の新聞記事の数とその企業が新聞のスポンサーであるかそうではないかで差があるのか分析したものです。なんと朝日新聞は統計的な有意差があり、読売新聞は有意差がなかったという。つまり、朝日新聞はしっかりスポンサーに忖度していたということです。
報道の自由や言論の自由などと主張している朝日新聞ですが、中国共産党にしっかり忖度して、チベット侵略、ウイグル族など少数民族への弾圧について批判することはないのです。他の日本のマスコミも同じようなもので、言論の自由を認めず、ネット検閲を行っている中国共産党政府の姿勢に対して、厳しい批判を加えるマスコミは少ないのです。
スポンサーへの配慮の度合いを定量的に評価・・・新聞記事検索サービスを利用し、「脱税」「申告漏れ」「所得隠し」のいずれかが本文中に含まれる朝夕刊記事・・・朝日新聞について・・スポンサー企業の方が全体的に記事と取扱量が少なくなっている・・・スポンサーへの配慮が記事にまで影響を及ぼしている・・・読売新聞にはスポンサー・非スポンサー間で有意な差は見られなかった(p139)
左翼の嘘がばれた
「左翼のウソ」と定義しているのは、左翼の活動家が大虐殺を伴った文化大革命や北朝鮮を「地上の楽園」と礼賛し、「北朝鮮は拉致をしていない」とウソばかり言ってきたことです。左翼の活動家は、日本の右傾化の原因をメディアの「右傾化」に求めますが、著者は右傾化が進んでいる理由は、左翼の活動家のウソの実績であるとしています。
著者はフェイクニュース対策として「言論責任保証」という仕組みを提案しています。これは公共の場で発言する場合、預託金を協会にプールして、その主張が正しかったのか時間をかけて検証するというもの。その発言が正しければ多くの預託金を分配し、発言が間違っていれば預託金は分配しない。こうした仕組みを含めて、過去のメディア報道を評価する仕組みがほしいと感じました。
掛谷さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・香山リカ氏は、著書『いまどきの「常識」』(岩波新書)において、ゆとり教育がだめというのなら、それ以前の詰め込み教育に戻れというのかと迫る論法で、ゆとり教育の正当性を主張している。これは二分法と呼ばれる詭弁の常套手段である(p28)
・テレビ・新瓶などの大手マスコミは、最後の巨大既得権益として君臨している・・・テレビにおける電波利権、新聞における再販制度、過剰な著作権保護(p128)
・メディアの無責任体質は今に始まったことではない。古くは、第二次大戦中の軍国主義礼賛報道・・・・北朝鮮礼賛報道・・・このような報道や言論を行ったジャーナリストや学者たちは、現在に至るまで一切の責任をとらされることはなく、また自発的に責任をとる姿勢も見られていない(p234)
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
第1章 学者のウソ
第2章 本来の学問
第3章 学歴エリート社会の罠
第4章 ウソを見破る手立て
著者経歴
掛谷英紀(かけや ひでき)・・・1970年大阪府生まれ。1993年東京大学理学部生物化学科卒業。1998年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(工学)号取得。通信総合研究所(現・情報通信研究機構)研究員を経て、現在筑波大学システム情報工学研究科講師。専門は映像メディア工学。技術者倫理教育にも従事
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